自身の活躍で、スポーツクライミングをもっと広めていきたい
愛知県のアスリート、スポーツクライミングの石井未来(みく)選手(滋賀県スポーツ協会所属)は、世界を舞台に活躍することを目標に日々努力を重ねています。練習拠点を滋賀に移したことをきっかけに、ボルダーだけでなくリード種目にも力を入れ活動。国内大会で安定した実績を重ねて代表復帰、さらには世界大会での上位入賞をめざします。
課題と向き合いながら楽しくトップをめざす!
小さな頃から体を動かすことが好きだったという石井選手がスポーツクライミングに出合ったのは、母親がきっかけでした。「最初にスポーツクライミングに興味を持ったのは母。家から車で15分くらいのところにジムがあることを教えてくれて、私だけでなく、父も兄も一緒に行ってみたんです」。そこですぐにスポーツクライミングに魅了された石井選手はジムに足しげく通うようになりました。
「登ったときの達成感と、毎回違う課題に挑めることに魅力を感じたんです。とはいえ、最初のうちはできないことだらけでした」。それでも熱心に通い続ける石井選手に、「せっかくなら大会に出てみたら?」とすすめてくれたのはジムの仲間。その後、山岳連盟の方に競技としてクライミングに取り組んでいる子どもたちが通っている場所の存在を教わり、高校入学と同時に通いはじめました。自分よりはるかに年下の子どもたちがするすると高い壁を登る姿に啞然(あぜん)。高校1年ではじめて国体の選考会に出場した際にも、「全く結果を出すことができず、自身の力のなさを痛感しました」と振り返ります。
それでも、「やめたい」と思うことはありませんでした。スポーツクライミングが心底好きで、「楽しい」という気持ちがあったからこそ、めきめきと上達。徐々に大会でも上位に入賞しはじめます。
2024年2月に開催されたボルダージャパンカップでは決勝の舞台に立ち6位に入賞しました。「ボルダージャパンカップで決勝に残ることが一つの目標だったので、達成できてほっとしました。準決勝の4課題目で自分だけが完登できたことが、大きな自信につながりました」
2拠点での練習活動でさらに深まった地元への思い
国内トップクラスにたどり着くまでの間、石井選手は何度もスランプを経験しています。特に高校2年で肩をけがして以降は思うような結果が出せなくなり、「なんでけがなんかしたんだろう」「けがの後遺症がなければもっといい結果を残せたのに」と、落ち込む日が続きました。しかも、治りかけた矢先に再度負傷するなど、状態が落ち着いてからも精神状態は不安定だったと振り返ります。
そんなとき、励みとなったのが、両親や指導やコンディショニングで関わってくれている人たちの存在でした。「必ず立ち直ると信じてサポートし続けてくれたことが、本当にありがたかった」と笑顔で明かします。
23年からは、滋賀と愛知の2拠点で練習を行なっています。リードの練習ができる大規模施設が愛知になかったため決断したことでしたが、この環境が彼女に大きな変化をもたらしました。
「2拠点での練習は移動が大変な面もあるのですが、新しい環境で新しい人と出会うことで自分が人間として成長できたと感じました。また、愛知から離れたからこそ、より一層地元への愛が深まりましたね」と石井選手。両親やジムの仲間たちだけでなく、愛知県東郷町の人たちの温かさを感じることもたくさんあります。「自然豊かな地域なので自宅前でトレーニングすることもあるんですけど、そうすると通りかかった方が『応援しているよ』など声をかけてくれるんです」と、顔をほころばせます。
また、20年に新型コロナウイルス感染症の影響でジムが一時閉鎖となり、屋外でランニングや縄跳びなどをしてトレーニングを継続していた際、改めて東郷町の自然のすばらしさを感じました。「東郷町は自然が豊かで、四季折々の表情を見せてくれます。そんな東郷町が大好きです」。大会の前や後に必ず訪れるという春日神社をはじめ、お気に入りのスポットもたくさんあります。40年前からイチジクを栽培している「石川農園」もそのひとつ。シーズンになると直売所に足しげく通い、新鮮な果実を堪能しています。
純粋に楽しむ子どもたちの姿がモチベーションに
明治安田「地元アスリート応援プログラム」の参加は3年目となりましたが、当初の参加動機であった「自分が活躍することで大好きな東郷町の魅力を知ってもらいたい」をかなえるために、自分に何ができるのかを考える機会が増えたといいます。
たとえば、一緒に運動することで体を動かす楽しさを知ってもらいたいといいますが、そのきっかけとなったのが、23年に愛知県東海市で開催された、明治安田主催のウォーキングイベントでした。「イベント開始前に、参加者にストレッチを教える機会をいただいたのですが、みなさんがいきいきと体を動かしている姿を目の当たりにして、自分が役に立てたことがうれしかったし、私自身もみなさんから元気をもらえました」
また、23年に開催された東郷町文化産業まつりでは、子ども向けのボルダリング体験ブースにも参加。「ボルダリングの人気がなかったらどうしようと思っていたのですが、時間ギリギリまで並んでくれるなど大盛況で、子どもたちが純粋に楽しんでいる姿を見られてうれしかったです」。自身も子どもの頃に行っていたという、思い出深いおまつりでの経験がモチベーションアップにつながっています。
ワールドカップで活躍して、日本代表への復帰を果たしたい
もちろん、より多くの人にスポーツクライミングの楽しさを知ってもらうために、自分自身がさらに活躍の幅を広げていくことも大きな目標です。
「23年度は、ボルダー、リードの両方の種目で日本代表の座を逃してしまいましたが、大会に参加したことで自分の伸びしろを確信できました。今後は9月チェコ・プラハ、10月韓国・ソウルで今シーズン最後のワールドカップが開催されるので、そこで良い成績を残したいです。一つでも上の順位を残せるように。過去の自分を超えていくことで、自ずと成績は着いてくると思います」と石井選手。一つひとつの大会で過去の自分を超えられるようにと、日夜努力を重ねています。
(取材・制作:4years.)