駆け引き勝負は負けない!フィジカル強化でさらなる飛躍をめざす
神奈川県のアスリート、フェンシング(エペ)の小城颯人選手(慶應義塾大学4年)は、2026年、シニアランキングの維持をめざしつつ、海外選手との対戦や海外への遠征を増やし、「考えるフェンシング」を突き詰めていくことを掲げています。その先に待っている自身が憧れてやまない世界大会へのステージを見据えて。
剣を持った瞬間、「カッコイイ!」と感じて
「フェンシングは剣を持ったボクシングなんです。ボクシングって、ジャブとかフェイントを打って相手の行動を誘って、それに対して勝負をかける。そうした積み重ねの駆け引きが、フェンシングでは大事ですね」
小城選手はフェンシングの魅力を、実にわかりやすく説明してくれました。特に、小城選手のフィールドであるエペという種目には、戦略が大事なのだと。
フェンシングは小学1年からはじめました。近所のクラブに体験参加した瞬間、「ビビッ」と感じました。 最初はフルーレ専門でしたが、小学4年からエペに転向。体のどの部位を突いても得点になり、同時に突けば両者にポイントが加わります。転向から間もないころに出場した大会で3位になった喜びも重なり、それからはよりいっそう、夢中で取り組んできました。
ステージが上がるにつれて立ちはだかる「壁」も乗り越えてきました。一番苦しかったのが、高校3年のインターハイ予選です。
「自分が主将だったのですが、個人戦の予選で負けてしまったんです。団体戦はフルーレで出場しましたが、それも負けてしまい本大会に出場できませんでした。『自分のせいで負けた』という思いが強かったのですごく落ち込んだし、フェンシングをやめたい、と思うこともありました」
情熱を再び奮い立たせてくれたのは周囲の人たちです。
「ずっと気持ちが沈んでいたのですが、そのときに武田仁コーチから『まだまだ次がある。ここで切り替えて頑張ろう』と声をかけてもらいました。選手時代に全日本フェンシング選手権大会で優勝したこともあるすごい人から『次がある』と言われたことで、とても悔しかったんですが、この負けも良かったんだ、と思えるようになりました」
その後は全国大会での優勝や海外での大会参戦も経験。次代を担うジュニア(U-20)のひとりとして、期待に違わぬ活躍を示してきました。
そうした経験のなかで小城選手は、ジュニア時代の海外参戦経験を通じて、「フィジカルを上げていかないと、海外の強豪選手と同じ土俵にすら立てない」と感じていました。
「じゃんけんで表現すると、あいこだとフィジカルが強いほうが勝つ」と、海外参戦で感じたと言います。駆け引き勝負なら負けないと自負する小城選手にとって、フィジカル強化はひとつのテーマとなりました。
そのフィジカル強化に一役買ったのが、パーソナルトレーナーの増木克存さん。はじめた当初はなかなか身体が仕上がらず、不安に思うことがあったという小城選手に対し、増木さんは何度も「大丈夫」と励まし続け、練習のサポートに徹しました。
そんな弛まぬ努力が実ったのは26年に入ってから。「体重が以前よりも10キロ増えた」とうれしそうに語る小城選手はフィジカルの強化に成功。以前にも増してパワーや瞬発力を身に付たことで海外選手たちにも引けを取ることがなくなったと言います。それを感じたのがカザフスタンへの遠征でした。
「以前はあいこでは負けてしまうと思っていましたが、今回はあいこのときでも勝てるようになった。勝つための選択肢が広がったことで本来の自分のスタイルで戦うことができるようになり、戦略の幅が広がったと実感しました」と、今回の遠征に大きな手ごたえを感じていたようです。
体験イベントでフェンシング普及に努める
「地元の川崎は川崎の街が大好きな人が多い」と語ってくれた小城選手は、応援してくれる人たちの期待に応えたいと明治安田「地元アスリート応援プログラム」に応募しました。25年は支援する川崎支社が開催したフェンシング教室に参加。参加者の多くはフェンシング初体験となる子供たちだったと言いますが、小城選手にとっては大きな芽生えがありました。
「フェンシングを知らないという子たちばかりでしたが、いざやってみるとすごく興味を持ってくれて、目をキラキラ輝かせてくれた。まるで僕の小さいころを見ているかのようでした」
かねてからフェンシングの認知度向上を目標に掲げていた小城選手でしたが、この体験からそうした思いはさらに強まったと言います。
また、小城選手を支えているのがアルバイト先の「キッチンTiKi」。中でもマスター特製のハンバーグが大好物で試合前の勝負飯として食べることもあるのだとか。
駆け引きの強化で世界に通用するプレーヤーへ
フェンシングでは、年4回行なわれるランキングマッチで年間ランキングを決めますが、このランキング上位者が日本代表として、ワールドカップなどの海外主要大会に出場する権利を得ます。26年は「海外への挑戦権を得るためにシニアの試合で上位に入ること」を目標として挙げ、「具体的には7月に行なわれる佐賀フェンシングエペジャパンランキングマッチ、そして10月の全日本フェンシング選手権大会。この2大会は特に意識したい」と、小城選手は力強く語ってくれました。
そのために今季取組みたいと語ってくれたのが「駆け引き」。本来の自身の得意なところですが、そこの精度をもう一段アップさせることをもくろんでいます。
「理想としては相手の2手、3手先だけでなく、5手、6手……とその先も見られるようになりたい。そのうえで自分の提唱する『考えるフェンシング』で世界に通用するプレーヤーになりたい」
小城選手の挑戦は、まだはじまったばかり。これからどんな成果を上げるか今から楽しみです。
(編集:4years.)