試練を乗り越え、キャプテンとして鯖江市を日本一の体操のまちに!
福井県のアスリート、体操の楠元妃真選手(鯖江高校3年)は、2022年の高校進学を機に、「体操のまち」福井県鯖江市へとやってきました。監督や先生をはじめ体操に熱心な街の方々、そして高い志を持って体操に取り組む仲間の選手たちに囲まれ実績を積み、さらなる大きな目標に向かっています。
体の不調による停滞という試練がもたらしたもの
「高校3年で迎えるフランスでの最高峰の戦い。鯖江高校初の出場選手になれるよう全力で頑張ります」と決意していた楠元選手。しかし、思わぬ大きな試練が待ち受けていました。
この1年間、「鉄欠乏性貧血」という自身の体の不調によって思うような練習ができない日々が続き、思わぬ停滞を余儀なくされます。そんな状況から懸命な治療と周囲のサポートによって徐々にコンディションと自信を取り戻し、最終決戦へと臨みました。しかし、大会への登竜門となる、24年4月の全日本体操個人総合選手権で本来の力を発揮しきれず、代表選考から外れることになりました。
「24年夏の国際大会に出場することを目標としていたので、悔しい思いはあります。しかし、それが全てではないので、気持ちを切り替えて次の試合に臨んでいきたい」鯖江高校体操部のキャプテンとして、さらには日本の女子体操界を担う逸材として、楠元選手は力強く語ります。
試練を通して失ったことばかりではありません。
「跳馬の『ユルチェンコ2回ひねり』が、試合でできなかった期間がありましたが、全日本個人総合では使うことができました」
楠元選手が高校1年の4月にこの技に初挑戦しました。難度を示すDスコアが高く、世界でも多くのトップ選手が実施している大技ですが、それが一時、できなかった時期があったといいます。しかし楠元選手は、「もう一度基本的なことから見直して、できるようになった」と振り返ります。
「女子体操部監督の田野辺満先生に一つひとつ丁寧に教えていただいたので、そういう面でももう1回頑張ろうと思えました」
最高の練習環境を与えてくれる街・鯖江
福井県鯖江市は「体操のまち」として、街全体で体操に力を入れています。その中心となる県立鯖江高校は、多くの日本代表選手を輩出している体操の名門校として知られています。大阪府河内長野市で生まれ育った楠元選手が地元の中学校からの進学先として選んだのは、中学生のときに合宿で鯖江市を訪れたことが契機となりました。
幼少期より体操をはじめ、中学生の頃には全国でも名を知られる存在となっていた楠元選手でしたが、そこで出会った田野辺先生の指導を通して、これまでできなかった技ができるようになったそうです。
「鯖江で練習したことで、体操がこれまで以上に大好きになったんです」。鯖江市は選手に最高の練習環境を与えてくれる街。そう確信したことで、おのずと志望校が決まっていきました。
「設備が整った体育館が2つあり、練習に専念できる環境があります。また、体操に熱心な方がたくさんいます。監督、先生、スポーツ協会の方々、同じ目標を持った選手たち。いろんな人に支えてもらっていることに日々感謝しています」
切磋琢磨の場所であると同時に、「のどかでリラックスできるところ」とも語るほど、第2の故郷ともいうべき街となっています。
23年度は、鯖江高校女子体操部の活動が新聞やテレビでたくさん取り上げられたそうです。地元紙のスポーツ賞では「大賞」を受賞しました。「これからも私が活躍することで地元に元気を届けたいです」と目を輝かせます。
美しい体操をするには日々の練習が不可欠
体操の魅力とは? その質問に楠元選手は「美しいところ」と即答します。特に、ひざやつま先まで意識できている選手の演技は美しく、「私も、見た人に“美しい”と思ってもらえる演技ができるようになることが大きな目標です」と話します。演技をする上で心掛けていることも、技の「難度」だけではないそうです。
「Dスコアを上げることは大切なことですけど、それ以前にEスコアも大切です。Dスコアを上げても、Eスコアが下がってしまっては意味がないので、今はどちらも取れるよう“スコア磨き”を心掛けています」
Dスコアとは技の難易度を示します。そしてEスコアとは演技の実施、美しさを示します。「平均台なら、ジャンプのときのつま先だったり開脚度など、技のきれいさになります。意識しないとできないことなので、日々の練習が大切だと思います」と楠元選手は説明します。
Eスコアは10.0ポイントからの減点方式。体操において、ノーミスで演技を終えることは、レベルが上がるほど重要なファクターになります。そのために必要なのが、「日々の練習」と楠元選手。23年の思うように練習ができなかった状況が、楠元選手にとってはいかに過酷であったかが分かります。それでも鯖江高校のキャプテンとしてEスコアに磨きをかけ、全国大会で優勝を取りにいきたいといいます。
再び団体4冠をめざし鯖江市に貢献したい
楠元選手は明治安田「地元アスリート応援プログラム」に参加して3年目になります。
「私がこのプログラムに参加して結果を出すことで、体操がとても魅力ある競技だということを一人でも多くの人に知ってもらいたいですし、さらには日本全国、そして世界中の人々に、『体操のまち鯖江』を知ってもらいたいと思っています」
24年の目標は、「まず全日本シニアでの個人総合と団体での優勝、そして全日本の権利をとることです」。9月に行なわれる全日本シニア体操競技選手権大会で個人も団体も上位に入れば、11月の全日本体操団体選手権と25年4月の全日本体操個人総合選手権の出場権を得られます。すなわち優勝は、再び団体4冠を勝ち取るための布石にもなるのです。
世界大会に向けた再出発については、「まず25年、26年の世界選手権やアジア大会の代表になることが目標です。その延長上に世界最高峰の舞台がある」と将来の飛躍を誓います。
高校の集大成となる24年度。キャプテンであるという重圧もある中で、なにより鯖江市のためにも「団体4冠を達成して(鯖江市に)貢献できたらいいな」と語ります。
楠元選手によると、体操の団体競技はチームのための演技を考える必要があることから、「団結がすごく大事」なのだそう。それだけに、優勝できたときの喜びも大きいのです。24年は楠元選手の個人のパフォーマンスだけではなく、チームをまとめるリーダーシップも問われるでしょう。しかし、試練を糧に成長した楠元選手なら、きっとチームを高みへと引き上げてくれるはずです。
(取材・制作:4years.)