夢舞台で大活躍し、パラスポーツの魅力をより広く伝えたい!
埼玉県のアスリート、車いすテニスの田中愛美選手(長谷工コーポレーション所属)はグランドスラム(世界四大大会)にも出場するなど、ワールドクラスのアスリートです。2023年に中国で開催された杭州アジアパラ競技大会では女子ダブルスで金メダルを獲得し、24年に行なわれる4年に1度の夢舞台に向けて調整を続けています。
高校生で車いす生活に プレーヤーとして復活を決意
田中選手は車いすテニスの日本代表として、22年9月の全米オープンからグランドスラムに参加しています。
今でこそ海外を転戦するアスリートですが、小学生の頃はスポーツとは縁遠かったそうです。「図書室でずっと本を読んでいるか、コンピューター室で毎年出場するタイピングの大会のためにキーボードをたたいて練習をしているか、のどちらかでしたね」と笑います。
そのインドア派が、方針転換。「中学校入学前、制服の採寸のときに『あら、キユーピーちゃん体形ね』って言われたんです」。そこからスポーツに目を向け、“格好から入る”形となりましたが、テニスに打ち込むようになりました。
ところが、その日常が一変します。高校1年の冬、その日は雪が降っていました。自宅マンションの階段で足を滑らせて転落。すぐに手術を受けましたが、腰骨を折るとともに神経が傷ついて下肢にはまひが残りました。
リハビリ用に転院した病院を含め入院は4ヵ月におよびましたが、田中選手はリハビリを切り上げて入院生活を終えることを決断します。「友達と一緒に高校を卒業したい、部活も今いる仲間と引退まで活動したいという気持ちが強くありました」。車いすでの生活になりましたが、テニス部の顧問の先生に、「雑用でもいいから部活動をさせてほしい」と頼んだそうです。
しかし、その申し出は断られました。「先生が、『戻ってくるならプレーヤーとして戻ってきなさい』と言ってくださったんです。そのとき、車いすでテニスをはじめようと決意しました」
部活動では仲間と一緒に練習をして、帰宅途中にリハビリテーションセンターに寄り、トレーニングに励みました。
アジアパラ大会で優勝、5年前のリベンジを果たす
卒業後の進路については、心は決まっていました。日本で開催される、パラスポーツ世界最高峰の大会への出場です。企業にアスリート雇用してもらい、1年目は国内で実績を積み、2年目からは海外の大会に参戦。3年目には日本代表となり、目標だった世界大会にも出場を果たしました。
活躍は続きます。23年シーズン、田中選手が「一つのハイライトだった」と語ったのが、中国で開催された杭州アジアパラ競技大会です。女子ダブルスで上地(かみじ)結衣選手と組み、中国ペアをくだして優勝を飾りました。
「前回のインドネシア・ジャカルタ大会では、中国ペアに負けて準優勝だったんです。今回は中国ペアにリベンジできたのがとてもうれしかったですし、成長を感じました」
そして、シングルスでは「成績以上の手応えがあった」と語ります。
「結果を見ると、良いとはいい難いシーズンでしたが、プレー自体に悪かった印象はないんです。ガットを替え、下半期にかけて試行錯誤を重ねた結果、成績も上向きました。24年シーズンに入るときに用具面で不安が少なくなりました」
一方、課題も見つかりました。「マスターズの試合では、私よりランキングが上の選手ばかりで、競りはするけど大事なポイントで決めきれないという課題が見つかったので、そこを修正しなければと思っています」と、さらなる成長を誓います。
地元・所沢市の人たちに結果で感謝を伝えたい
田中選手が貢献したい地元は、高校時代の入院を機に家族で移り住んだ埼玉県所沢市です。市内には田中選手がお世話になっているリハビリセンターがあることもあり、パラスポーツが日常の風景になっているそうです。
「競技をはじめたときの練習拠点探しから、地元の人たちにいろいろな情報をいただいたり、一緒に探していただいたり、助けていただきました。定年退職されたテニス愛好家の方が、毎週一緒に練習してくださるとか。ずっと応援してもらって、ここまで来たと感じています」
地元の人たちの優しさやありがたみを知るからこそ、岩野耕作コーチから明治安田の「地元アスリート応援プログラム」を紹介してもらったときは、自分にぴったりなプログラムだと感じたそうです。
「グランドスラムに出場して、パラスポーツは楽しそうと思ってもらったり、頑張っているのが勇気になると言ってくれたりする人が増えたらうれしいです」。自分が結果を出すことで、日頃の感謝の思いを伝えていきたいと考えています。
23年は遠征で飛び回る中、明治安田川越支社の授賞式でスピーチをするなど、プレー以外の活動にも積極的に参加しました。
「日本にいる時間が極端に少なかったシーズンでしたが、試合結果を報告した際に拍手をいただけたり、『頑張って』のお声がけをいただけたりしたことが大きな力になりました」
周りの誰もが応援したくなってしまう田中選手は、もともと“応援される才能”があるのかもしれません。
いざ大舞台へ「メダルを持って帰ることが目標」
24年シーズンの目標は、もちろん4年に1度の夢舞台での大活躍です。
「出場することではなく、メダルを持って帰ることが私の目標です」と力強く語ります。
最高峰の舞台で最高のパフォーマンスを発揮するため準備を進めています。「会場はクレー(土のコート)で正直自分の得意な環境ではありませんが、前々年からどのようにして戦っていくか考えてプレーしてきました。23年1月に開催された全仏オープンと同じ会場ですが、そのときは少し意識しすぎて硬くなってしまいました。だからこそ本番は意識しすぎることなく、自然体で戦えると思います」
24年夏、田中選手は目標の舞台に出場し、女子ダブルスで世界の頂点に立ちました。決勝では強豪のオランダに競り勝ちました。この種目で日本勢が金メダルを獲得するのは初となる快挙でした。
自身の活躍を通して、地元そして日本全体でパラスポーツが応援されるように。大きな声援を糧に、世界を舞台にした挑戦は続きます。
(取材・制作:4years.)
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貢献したい地元:埼玉県所沢市
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