「考えるゴルフ」で未来を切り開く
愛知県のアスリート、女子ゴルフの内田心菜選手(岡崎城西高校3年)はデータ活用を重視する練習を重ねて頭角を現してきました。「シフトチェンジを実感した年でした」と振り返る2025年は、中部女子アマチュアゴルフ選手権や日本ジュニアゴルフ選手権で結果を残しました。確かな手応えを得る中で、「初日のティーショット」ではなく「最終日のウィニングショット」で観客を沸かせる選手をめざしています。
小学生ではバレーと「二刀流」
ゴルフをはじめたのは、小学1年の冬。父が知人からこども用クラブを譲り受けたことがきっかけになって、練習場に連れて行ってもらうようになったそうです。「飛ばすことが楽しくて、ゴルフって面白いなと思いました」
ただ、当初からゴルフ一本だったわけではありません。小学4年から6年まではバレーボールチームのキャプテンとしてアタッカーを務め、「ゴルフよりも夢中でした」。市内の大会で優勝し、「勝つために仲間と努力を重ねたことは、今でも心に残っています」。
ゴルフの魅力について「個人競技なのにライバル、ライバルしていなくて、同伴の競技者で高め合うというか、和気あいあいとした雰囲気がある」といいます。競いながら高め合う。個人競技のゴルフに向き合ううえでも、バレーの経験も土台になっているようです。
競技ゴルフへとかじを切ったのは、小学5年の終わり。自らの師と仰ぐ権藤紘太プロにアスリート目線での指導を受けるようになったことで競うゴルフの楽しさを知りました。予選を勝ち抜き、6年で初出場した全国小学生春季ゴルフ大会では、結果は中位。「自分より上手な子ばかりで、その差がはっきりわかりました」。負けず嫌いの性格で、実力差を痛感した悔しさが、次の成長への原動力となったそうです。
スイングフォームを変えてみても、なかなか結果が伴わなかったそうですが、中学3年の夏、全国中学校ゴルフ選手権で2位タイに入りました。ところが自身では「たまたま1回良かっただけという感覚でした」。「納得できなかった」という違和感が、さらなる「変化」を促したのです。
「振っている」から「振れている」へ
大きな転機となったのが、中学3年の冬から指導を受ける森岡賢コーチとの出会いです。「ゴルフは物理学」という考えで、「振っている」のではなく、「振れている」感覚を仕込まれました。支点、力点、作用点といった物理的な要素を理解し、自身の感覚とデータを照らし合わせながらスイングを構築していったのです。おかげで「ゴルフ観は百八十度変わりました」と話す。
成果が表れたのが、高校2年になってから。中部女子アマチュアゴルフ選手権で3位タイ、日本ジュニアゴルフ選手権(15~17歳の部)で9位タイでした。自身でも「シフトチェンジを実感した」そうで、結果と内容の両面で「自信を持って戦えた」と振り返ります。「特に女子アマはすごく手応えがあって、(全国で2位だった)中学のときとは全く違う感覚でした」
飛距離は平均250〜260ヤード。「飛ばす方だと思っています。ドライバーが一番好きですね」。もっとも、力任せではありません。「ショットもパットも、リズムとテンポを大事にしています」。ここでも意識するのは、練習で培ってきた「振っている」のではなく、「振れている」感覚です。
経験値と感性で磨く勝負力
高校1年春には、ブリヂストンレディスオープンではじめてプロツアーを経験しました。「アマチュアとは会場の雰囲気もコースコンディションも全然違って、正直苦しみました。でも、本当に楽しくて、夢のような時間でした」
プロのプレーを間近で見て、「同じコースなのに、別のコースに見えるくらい攻め方が違って。すごく感動しました」。最も感じたプロとの差は「アプローチや状況に対応する引き出しとコースマネジメントだ」と気付いたそうです。以降、「引き出し」を増やすことを意識するようになったといい、大きな収穫を手にしました。
メンタル面でも、工夫を重ねています。「悪い流れだと口角が下がってしまうので、意識して上げています。苦しいときほど、笑顔で、前向きに、です」。最近では栄養学も学びはじめました。「体と気持ち、どちらも整えることが大事だと思っています」
部長を務める高校ゴルフ部の部員は20人あまり。ゴルフ歴はさまざまで、レベルに応じた指導も求められます。「勉強と同じで、人に教えると自分の理解も深まる。教えるときにすごく考えるので、いい経験だと思っています」
自宅の横には祖父が作ってくれた練習場があります。ショットだけでなく、アプローチの練習もできるといい、近所のゴルフ好きがお茶などを飲みながら集うそうです。そんな和気あいあいの仲間に囲まれていると、知らず知らずのうちにパワーをもらっているそうです。試合で疲れたときのエネルギー補給の定番も近所のカフェの赤みそ仕立てのみそトンテキなのだそうです。
プレーで大切にしていることは「自信を持つこと。そして、ミスを引きずらないこと」。引き出しは増えてきましたが、「いつ、どう使うかを決め切れるかが課題です」と冷静に分析しています。次のステージに向けた課題も明確です。「頭を使ってコースと向き合うことです」。シンプルな言葉ですが、内田選手が積み重ねてきた理論と経験に裏打ちされた重みがあります。
(編集:4years.)