集大成となる世界大会をめざす 地元への恩も忘れない
北海道のアスリート、スキー(クロスカントリー)の梅澤聡嗣(そうし)選手(明治大学3年)は、高校2年でインターハイ4位に輝いた期待のスキーヤーです。現在は明治大学で、実績十分の恩田祐一コーチから指導を受け、大学集大成となる世界大会をめざして練習に励んでいます。
夏は陸上、冬はクロスカントリーの“二刀流”
梅澤選手の地元である鷹栖町は北海道のほぼ中央、旭川市の隣に位置し人口は6500人ほど。町内にはクロスカントリースキーのコースがあり、町内で開催される「たかすオオカミの里北野クロスカントリー大会」は2025年で35回目を迎えます。梅澤選手は小学生になると地元のスポーツ少年団に入り、夏は陸上、冬はクロスカントリーという“二刀流”で育ちました。
鷹栖町では、クロスカントリースキーは競技人口が多い人気スポーツです。「大会の結果が新聞に載ると町の人が声をかけてくれてそれが誇らしかった。自分が頑張ることで町のみんなが喜んでくれることが大きなモチベーションです」
また鷹栖町は稲作や野菜作りなど農業が盛んな土地で、野生動物を見かけるのも日常の光景。梅澤選手も鹿が川岸を散歩しているのを目撃したり、キツネに追いかけられたりした経験を懐かしみます。「自然が豊かで空気もおいしい地元で走りたいと、ときどき、思ったりします」
名産の高級トマトジュース「オオカミの桃」は、鷹栖町の澄んだ空気と長い日照時間、そして盆地特有の昼夜の大きな気温差が生み出す甘みの強いトマトが原料。お取り寄せグルメの人気商品として全国にファンが多く、梅澤選手も子どもの頃から地元のスキー大会の賞品としてたびたびゲットし、「果物のように甘くて、すごく気に入っています」と太鼓判を押します。
高2のインターハイでは10kmクラシカル4位に
梅澤選手の強みは、スタート直後やレース中に、一気にトップスピードに入れる爆発力です。「小4から中3までやっていた野球では投手や遊撃手、1番バッターを任されていました。ホームランを打ったこともあり、瞬発力や爆発力には自信があります。クロスカントリースキーでは相手との競り合いなどで爆発力が必要な局面が多いので有利だと感じます」
高2のインターハイでは10kmクラシカル4位、高校選抜でクラシカル9位という成績を残しました。「町長さんが直接祝福してくれて、自分自身も『次は日本一だ』と気合が入りました」。練習のタイムを伸ばし、心肺機能も大幅に強化して臨んだ3年のインターハイでしたが、誤算も重なり、クラシカル42位、フリー24位と不本意な成績に終わりました。
インカレで1年生時に果たせなかった入賞を達成
高校時代に届かなかった全国優勝をめざし大学に進学。そして現在所属する明治大学スキー部には、U20クロスカントリースキー日本代表を指導する恩田祐一コーチがいます。現役時代はスプリントの名手としてワールドカップで4位になった実績もある指導者です。
大学1年生時に恩田コーチから指摘されたのは「筋力不足」。「自分の体を支えられていない」というアドバイスを真摯に受け止め、筋力トレーニングに励んだ結果、24年2月に行なわれた、第2回全日本学生選抜クロスカントリー大会の男子1.4 km スプリントクラシカルで7位入賞を果たしました。
さらなる高みをめざした大学2年生時は、バイクトレーニングを積み重ねました。“パワーマックス”とも呼ぶスプリントに特化したこの練習のねらいは、「乳酸が出てからも体を動かせるようにしたい」。しかし、思わぬ不振に陥りました。
「正直、大学2年生時はとても苦しいシーズンでした。週2回、パワーマックスのバイクトレーニングを取り入れ、速筋を鍛えることはできましたが、長距離のレースで必要になる遅筋に課題を残し、5kmを越えたあたりから急に疲れることが多かったです。体が重たいともずっと感じていて、なかなか結果が出ず焦りも募っていました」
そこで救いの手を差し伸べてくれたのは恩田コーチでした。
「シーズンがはじまってからは、LINEでフォームについて聞くと、的確なアドバイスをいただけました。なぜうまくいっていないのか課題についてよく話し合ってくれて、やはり恩田コーチの存在は大きかったです」
そして迎えたインカレ。スプリント種目で8位に輝き、1年生時に果たせなかった入賞を成し遂げました。
「スプリント種目での入賞をめざしてきたので、一つの目標を達成できて良かったです。苦しいシーズンではありましたが、結果的にはインカレのスプリント種目でパワーマックスの成果を出せたのは救われた気持ちになりました。やるべき練習を重ねれば、結果がついてくると信じ込めた点では、メンタル面で成長できました」
インカレで8位入賞を果たし、地元の人たちからは「良かったね」や「ずっと速報見ていたよ。おめでとう」といった祝福の言葉をもらい「すごくうれしかった」という梅澤選手。地元・鷹栖町のコースで練習する機会も増え、中学生を教えているコーチに「時間があったら指導してくれないか」と声をかけられたこともありました。
「実際に中学生にアドバイスをさせてもらい、自分の中学時代を思い出し、懐かしい気持ちになりました。明治安田『地元アスリート応援プログラム』に参加してからは特に、スキーを通じて地元と深くつながれているのかなと感じています」
目標はユニバーシティゲームズの出場権獲得
明治大学3年生となった梅澤選手の現在の目標は3つ。1つ目はインカレの全種目で入賞、2つ目は全日本学生選抜大会スプリントクラシカル競技優勝、3つ目は大学4年生時開催のユニバーシティゲームズ出場権獲得です。特に3つ目、大学集大成となる世界大会に出るためには、3年生時のFISポイントも重要な選考基準。つまりシーズンを通した好成績が鍵となるため、2年生時に不振に陥った課題を克服しなければなりません。
「得意のスプリント種目だけではなく、長距離のディスタンス種目でも好成績を残せるように、持久系のトレーニングに特化して体作りをしていきたいと考えています。夏から最大スピードの維持に重点を置いて練習を積み重ね、2年生時のような好不調の波を作らないようにしていきたいです」
大学4年間で「スキーを全力でやり切りたい」という梅澤選手は、卒業後は「地元の鷹栖町に帰って恩返ししたい」と将来を描きます。明治安田「地元アスリート応援プログラム」に参加したのも、「地元」に貢献したい気持ちをサポートする趣旨との合致が大きな理由。そして毎年、明治安田の北海道旭川支社にあいさつも兼ねて研修会に参加しているなかで、実は「鷹栖町で新しくスキー教室を開催しませんか?」という提案を受けているといいます。梅澤選手も「鷹栖町の小中学生のためになる恩返しができる」と前向きです。
目標達成に向けて努力する梅澤選手は、育ててくれた地元・鷹栖町への恩を忘れずに走り続けます。
(編集:4years.)