失意と悩みを乗り越えて、ツアーとティーチングの両方のプロをめざす
滋賀県のアスリート、女子ゴルフの渡邊紗弥華選手(朝日大学2年)は2023年の滋賀県アマチュアゴルフ選手権で優勝し、その年の全国高等学校ゴルフ選手権は5位タイに入るなど新進気鋭の選手です。現在は、ツアープロだけではなくティーチングプロの資格取得もめざして練習と勉強に明け暮れる日々を過ごしています。
小5でゴルフをはじめて、1年で70台に
渡邊選手は、祖父が近江八幡市内でゴルフ練習場を経営していた影響で、小学校5年から本格的にゴルフをはじめました。
練習場で開かれていたジュニアレッスンにも参加し、4ヵ月ほどで試合に出ると、103という好スコアが出ました。それがうれしく、「もっとうまくなりたい」とのめり込んでいきます。
1年後には70台のスコアも出せるようになり、滋賀県の小学生大会や関西大会を通過して全国大会に出場する実力をつけていきます。「さらに上にいきたいと、どんどん練習するようになっていった」と振り返ります。
感性のゴルフから理論や知識を取り入れ、より高みへ
「プロになりたいな」と思いはじめたのはそのころからです。「プロで活躍するには心技体を大切にする必要がある」。父の大二郎さんからそんなアドバイスがあり、ゴルフ部があって勉強に力を入れられる奈良育英高校に進学。滋賀県から奈良県までの通学は、大二郎さんが車でサポートしていました。自宅から1時間半かけて送迎してもらい、高校の練習場や近くのコースで毎日4時間ほど練習をこなします。さらに、午後10時近くに自宅に戻ってからはパター練習をする、まさに練習漬けの毎日を続けました。
その努力が実り、6アンダーの成績を目標にして臨んだ23年の全国高等学校ゴルフ選手権では、勝負どころの最後の2ホールで連続バーディーを取り、66のベストスコアを記録しました。「目の前の一打に集中することができました」。それが自信になって、その後の日本女子オープン初出場にもつながりました。
順調にキャリアを歩んでいるようにみえる渡邊選手ですが、24年は試練の年だったと話します。初のプロテストでは1日目は順調なスコアだったものの、体調不良で棄権。プレー面でも調子が上向かなかったといいます。
「1年を通してあまり調子も良くなく、はじめて大きな挫折を経験しました。今までは感性でゴルフをしてきた感じもありましたが、その挫折をきっかけにトレーニングや道具面までより深く考えてプレーするようになりましたね」と渡邊選手。感覚だけでなく、理論や知識も取り入れつつより高みをめざしたいと語ってくれました。
失意のプロテストと持病の手術を乗り越えて
25年4月からは「自分が最も自立できる環境だと思った」という理由から、岐阜県の朝日大学に進学。環境としてはさらにゴルフに向かい合う生活が送れるようになった渡邊選手は、7月に再びプロテストに挑みました。
地元滋賀県の信楽カントリー倶楽部田代コースで行なわれた第1次予選は、見事10位タイで突破。3日目の最終日にはこれまでの自己ベストである8アンダーをマークするなど自信に繋がる結果となりました。
しかしながら9月に行なわれた第2次予選は、91位タイという結果で突破するができませんでした。初日こそ1アンダースタートとまずまずの出足だったのですが、2日目に5オーバー、3日目に6オーバーと、崩れた調子を立て直すことができませんでした。「2日目からプロテスト独特の緊張感を強く感じるようになって、思うようなゴルフができなくなってしまいました。また、少しスコアが悪くなると余計に焦りができてしまい、3日目も立て直すことができませんでした」。この年最大の目標だったというプロテストでのこの結果に、しばらく落ち込む日々が続いたそうです。
実は、渡邊選手には高校時代から悩みのタネがありました。手首にガングリオンが何度もできてしまい、その度に治療が必要となっていたのですが、この年は、発生場所が悪く手術が必要となってしまいました。プロテストのスケジュール後の12月に手術をし、1カ月以上、クラブを握らない日々が続きました。
26年1月に球数制限をしながら少しずつ練習を再開し試合にも復帰。3月に行なわれた滋賀県アマチュアゴルフ選手権では、見事優勝を果たすまで復活しました。
手術からの復帰後に取組みはじめたドローボールからフェードボールへの球筋の変更も徐々に身につきはじめ、現在調子は上がり調子とのこと。今後は再びプロテスト受験に向けていっそう練習に取り組んでいくそうです。
ツアーとティーチングで地元・近江八幡へ恩返し
明治安田「地元アスリート応援プログラム」は、祖父の保険担当者さんから教えてもらいました。「自分がプロになる夢を持ちながら、地元にも貢献できることに気持ちが高まり、応募を決めました」
24年には「LPGA TOTOジャパンクラシック」で、明治安田滋賀支社が出展するブースでのイベントにも参加。地域の方々が温かく迎え入れてくれたことや、たくさんの声援を受けて「結果で恩返ししたい気持ちがより強くなった」と語るように地元への深い愛着を持っています。ゴルフ練習場の常連客からは「頑張ってね」などと温かい声をかけてもらうことも多く、ゴルフへの大きなモチベーションになっています。
さらに、近江八幡市には近江牛や近江米など名産品が多く、地元の「近江牛焼肉すき焼き 池もと」で食べる近江牛の焼き肉は、渡邊選手のパワーフードになっています。また老舗菓子店「たねや」の「バームクーヘン」は、お気に入りのおやつ。「毎月何度も食べるくらい好きなんです! 甘いものを食べることでリフレッシュしています」と笑いながら教えてくれました。
名産品だけではありません。自宅近くには、近江商人によって栄えた地域に引き継がれた、昔ながらの風景が色濃く残る「八幡堀」があります。時代劇のロケ地としても知られ、四季折々で移りゆく景色を見ると気持ちが落ち着き、気分が沈んでいるときには癒やされるそうです。
渡邊選手の夢は、プロテストに合格してレギュラーツアーで活躍することとともにもう一つあります。「もっとスイングや体のことを勉強してティーチングプロの資格を取得して、悩めるゴルファーにゴルフを教えたい」と言います。いずれは、ツアー会場でその姿を見るだけでなく、祖父が経営しているゴルフ練習場でレッスンをしている渡邊選手の姿を見ることができるかもしれません。
(編集:4years.)