その最新研究は何を明らかにしつつあるのか。
BS朝日で放送の「Newton TV」をもとに、興味深い「免疫」の世界を紹介する。
免疫は体を守る「防衛隊」
今この瞬間にも私たちの身のまわりには無数の菌やウイルスが存在し、口や鼻から体内へ侵入しようと試みている。もしも体に免疫というシステムがなければ、ごくありふれた菌やウイルスが致命的な感染症を引き起こし、私たちの日常生活は常に脅かされることになるかもしれない。
免疫はそうした危険を防ぐためのいわば24時間監視システム兼、敵と戦い排除する防衛隊でもあり、脳の指令を待たず自律的に働いている。その主役といえるのが「白血球」と呼ばれる細胞だ。
免疫の働きには、「自然免疫」と「獲得免疫」という二つの系統がある。病原体の侵入に素早く反応し、即座に攻撃を開始するのが自然免疫で、文字通り私たちが生まれた時から自然に備わっているもの。ただしその効果は一時的にしか期待できない。一方で獲得免疫は、一度でも体内に侵入した敵を「記憶」しておくことで後天的に強化されていく免疫。この両者がうまく補完し合いながら私たちの体を守っている。
白血球のうち、自然免疫の第一防衛線として働くのが主に好中球、獲得免疫の中核となるのがリンパ球で、マクロファージや樹状細胞は司令塔として両者の橋渡しを行う。これらの免疫細胞はそれぞれ固有の役割を持ちながら、密に連携し合って免疫システムを支えている。
「腸」は防御の最前線
腸は栄養を吸収する大切な臓器である一方で、食物とともに外敵が侵入しやすいため、体にとっては防御の最前線といえます。たとえば赤ちゃんの体には外敵に対する免疫の「記憶」がないため、母乳に含まれる抗体やラクトフェリンなどの成分が腸に運ばれることで免疫を助ける働きをしています。免疫を学べば学ぶほど、これほど複雑な仕組みがよくできたものだと感嘆の念を覚えます。やっぱりこれは神様がデザインしたんじゃないかと、そんな気持ちにもなりますね。



驚くほど精緻なシステム
病原体の侵入に対して、体の中ではどんな反応が起こっているのだろう。外敵の侵入が感知されると、まず好中球をはじめとする自然免疫の攻撃が始まる。それでも生き残った手強い相手に対して、次に攻撃を仕掛けるのが獲得免疫だ。
樹状細胞は敵の特徴をヘルパーT細胞に伝え、ヘルパーT細胞はB細胞を活性化して「抗体」を大量につくらせる。抗体とは、敵を見やすくタグ付けするツールのようなもので、これを目印に好中球などが効率よく攻撃を仕掛けていく。やがて戦いが終わるとヘルパーT細胞とB細胞の一部は「記憶細胞」となって体内に貯蔵され、次に同じ敵が侵入した時に備える。
まるで誰かが入念に設計したかのような見事な仕組みには驚くしかないが、最近の研究では全身の免疫細胞のかなりの部分が「腸」に集まっていることがわかってきた。そしてビフィズス菌などの善玉菌やラクトフェリンと呼ばれるたんぱく質が、腸を舞台とした免疫の戦いをどのようにサポートしているかも明らかになりつつある。今後も研究が進めば、免疫はその複雑にして精緻なメカニズムで私たちをさらに驚かせてくれるかもしれない。
免疫研究の最新事情
免疫細胞は互いに助け合うだけでなく、腸内の善玉菌やたんぱく質などによっても支えられている。注目される最新の研究について、専門家に聞いた。
19世紀の終わりにビフィズス菌が発見されて以来、「人の健康に深く関与していそうだ」ということは示唆されていましたが、詳細なメカニズムは2000年代以降、研究手法の進歩により徐々に理解が進んできました。
ビフィズス菌には多くの種類がありますが、ヒトのおなかに棲む種類のビフィズス菌の代謝産物は、免疫メカニズムと大きなかかわりがある、ということがわかってきています。
©Morinaga Milk Industry Co., Ltd.

ラクトフェリンは主に目や鼻、口など外部の異物にさらされる部位の粘液に多く含まれるたんぱく質です。名前の「フェリン」とは鉄のことで、菌にとって必要な鉄を奪うことで増殖を抑え、免疫の働きをサポートしています。食品を通して口から入ったラクトフェリンは、のどや腸の免疫細胞を整えていると考えられます。また、病原菌にとっては大敵ですが、善玉菌の増殖には悪影響を与えないこともわかっています。
©Morinaga Milk Industry Co., Ltd.

