間質性肺疾患とは、線維化=肺が硬くなって呼吸しづらくなる病気
まず、間質性肺疾患という病気についてご説明します。肺の中の空気の通り道である気管支には、一番先まで行くと「肺胞」という小さい風船のような組織がたくさん連なっています。間質とはこの風船の壁(肺胞壁)に相当し、吸い込んだ酸素は間質を通り抜けて毛細血管に取り込まれ、身体中に届けられます。間質性肺疾患とは、間質すなわち肺胞壁に炎症や線維化がおこる病気です。また、「肺の線維化」とは間質(肺胞壁)が硬く厚くなる現象をさします。
線維化が起こると酸素が間質を通り抜けられなくなるため、血液中に酸素を取り込むことが難しくなります。また肺が硬くなって縮むことで、肺が膨らみにくくなるので、呼吸もしにくくなり、息切れが起きてきます。また線維化した肺の組織は元に戻らないといわれています。
間質性肺疾患には、最も多い特発性間質性肺炎などの原因がわからないものや、リウマチや強皮症などの膠原病に伴う間質性肺疾患、アレルギーが原因で起こる過敏性肺炎、サルコイドーシスなどさまざまな病気が含まれます。
PF-ILDとは

PF-ILDとは、間質性肺疾患のうち肺の線維化が
進行する特徴のあるもの
間質性肺疾患のうち、線維化によって肺がだんだん硬くなり、呼吸機能の低下が進行していく特徴があるものをまとめて、「PF-ILD(進行性の線維化性間質性肺疾患)」と呼んでいます。PF-ILDでは、肺の線維化が進むと、呼吸機能では肺活量が少なくなり、レントゲン検査では網状影などの肺の影が濃くなり、肺の縮小がみられることが特徴です。
PF-ILDの主な症状としては、痰の出ない乾いた咳(空咳)が続く、階段を上ったり坂道を歩くなど、体を動かしたときの息切れがひどくなる(労作時呼吸困難)、また日常の動作で疲れやすくなり、着替えや入浴、ふとんの上げ下ろしなどをしただけでも息切れが起きてくることもあります。また、このような症状は徐々に強くなってきます。症状が進行すると、安静にしていても息切れが出るようになります。間質性肺疾患が進行しているかどうかを見極めるためには、このような自覚症状の把握や呼吸機能検査の実施は重要なポイントとなります。
早期に発見するには背中の聴診
PF-ILDに含まれる病気にはさまざまなものがありますが、多くの場合共通して、背中の下側を聴診すると「バリバリ」「パリパリ」という特徴的な捻髪音が聞き取れます。また、レントゲン検査の異常な陰影も発見のポイントになります。特に捻髪音は症状に乏しい初期にも聴くことができるため、PF-ILDの早期発見に役に立ちます。気になる症状があったら、かかりつけ医の先生を受診して相談してください。症状によっては専門医に紹介となります。
定期的なチェックで進行をなるべく早く発見することが重要
専門医では、まず、間質性肺疾患の原因を調べることになります。間質性肺疾患はさまざまな原因で発症し、原因によって治療も予後も違うためです。膠原病などの病気が原因とはっきりわかった場合は、原因に対する治療を行います。また、原因が不明の場合(特発性)も原因がわかっている場合も、肺の線維化の進行の度合いを確認するために、少なくとも半年に1度の間隔で、定期的に各種の検査を行います。おもなポイントとして、①自覚症状、②CT検査、③呼吸機能検査によって肺の線維化が進行していないかを確認します。
肺の線維化が進行し、PF-ILDと診断された場合は、治療を始めます。なお、治療は高額になることが多いですが、医療費軽減のために「高額療養費制度」や、原因となる病気によっては「指定難病医療費助成制度」といった助成制度を利用できる場合があります。主治医やソーシャルワーカーに相談してみましょう。
咳、息切れを見逃さず、かかりつけ医の先生に相談を
「自分は間質性肺疾患では?」と疑うポイントは、咳が数か月続く、以前に比べて階段や坂道を上ると息が切れる、ふとんの上げ下ろしのような軽い運動が辛くなった、などの症状です。息切れは年齢のせいかと思ってしまいがちですが、以前より息切れしやすくなったと思ったら見逃さないことが大切です。
これらに思い当たったら、肺を守るために早めにかかりつけ医の先生に相談しましょう。