年齢も性別も超えることができ、人間以外のものにもなれる。時には異世界に行くことだってできてしまう。声優という仕事の魅力をそう語る石川由依さん。
9月に開催される兵庫芸術文化センター管弦楽団による音楽詩「火垂るの墓」では、戦後の混乱を兄・清太とともに生きようとした4歳の節子役としてステージでの朗読に挑む。
キャラクターが立つ場所・空気を思いながら
アニメ「進撃の巨人」ミカサ・アッカーマン役、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」ヴァイオレット・エヴァーガーデン役、「アイカツ!」新条ひなき役、「エロマンガ先生」高砂智恵役、「聲の形」佐原みよこ役、「トロピカル〜ジュ!プリキュア」一之瀬みのり/キュアパパイア役など、人気作品の主要なキャラクター役として活躍する石川由依さん。子どもの頃から劇団で活動し、舞台を中心に様々な作品に携わってきたが、意外にも「声優になるという選択肢は、自分の中にはなかった」と話す。
「小さい頃から劇団に入って舞台などに出ていましたが、声優として本格的に学んだ経験はなく、声優の仕事を始めた頃は、声だけの演技に戸惑うこともありました。アニメについてもそこまで詳しい方ではなく、役をいただいてそこに息を吹き込むという役割を、一緒にお仕事をさせていただく先輩方に教わりながら、またその姿を見ながら身につけてきたという感じです。次第に大きな作品に携わるようになり、作品に対して、また、作品を作る方々や共演者の隣に立つ人として、恥ずかしくないように演じたいと思うようになりました」
石川さんがキャラクターの声を演じる上で大切にしていることは、キャラクターについて、「描かれていないことまで想像すること」だという。
「そのシーンに直接関係がないとしても、演じるキャラクターが居る空間について、季節はいつなのか、キャラクターは暑いと感じているのか、寒いと感じているのか、そのセリフを言っているのは朝なのか、夜なのかと想像します。体感や見えている景色、時間が違えば、心の動きも違ってくると思うので。空気を動かす声に、そんな心模様まで乗せることができたらいいなと考えています」

音楽・映像とともに大切なことを伝えたい
9月17日(日)には、兵庫芸術文化センター管弦楽団によって音楽詩「火垂るの墓」が初演される。本作は、作家野坂昭如の戦争体験をもとに書かれた小説を原作としたスタジオジブリのアニメ映画『火垂るの墓』の音楽をオーケストラ演奏と朗読、映像によって新たな世界観で表現した作品だ。石川さんは、ステージ上での朗読で節子を演じる。
「アニメ映画『火垂るの墓』は、テレビなどで何度か見たことがありました。日本では実際に戦争を体験した方が少なくなり、実体験としての戦争の話を聞ける機会はなかなかありません。映画の中には、悲しくて、悲惨で目を背けたくなるような描写も多くありますが、この悲しみを繰り返さないためにも、今を生きる私たちは過去に起こった凄惨(せいさん)な出来事を知る必要があるのだと思います。アニメは世界的にも戦争を伝える映画として評価されたものですが、新たな音楽詩が、アニメとはまた異なる形で、過去の悲しみを知る手立てになればと考えています」
本公演で節子の兄・清太を演じるのは、石川さんにとって声優として先輩でもある速水奨さんだ。
「速水さんとは、共演させていただいたことはありますが、キャラ同士の掛け合いや絡みはそれほどなかったので、兄妹として共演できることにワクワクしています。また、私にとって速水さんは役でも実際でもダンディーなイメージ。だから、戦後を生きた14歳の清太を、速水さんがどのように演じられるのか想像もつかないので、どんな清太に出会えるのかもとても楽しみです。悲しいシーンに、自分も泣いてしまいそうと危惧していますが、音楽、映像とともに、足を運んでくださった方それぞれの心に残る時間と空間をお届けできたらと思っています」
今もなお、争いの絶えない世界において「火垂るの墓」が伝える戦争の悲劇と深い悲しみをオーケストラの響きと生身の人の声で聞かせる朗読に乗せて──。明日の平和へのメッセージとして多くの人に届くことを祈りたい。
兵庫芸術文化センター管弦楽団・音楽詩「火垂るの墓」
〈日時〉9月17日(日)16:00開演(15:15開場)
〈会場〉兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール(西宮市)
〈チケット〉SS席6,000円、A席5,000円、B席4,000円、学生席2,000円、プラチナ席9,000円(税込み・全席指定)
※SSペアチケット(2枚)10,000円、SSトリオチケット(3枚)15,000円(税込み・全席指定)
〈原作〉野坂昭如〈作曲〉間宮芳生〈編曲&指揮〉山下康介〈演出・構成〉上海太郎〈管弦楽〉兵庫芸術文化センター管弦楽団
〈出演〉速水奨(ステージ上朗読・清太役)、石川由依(ステージ上朗読・節子役)
■お問い合わせ 兵庫県立芸術文化センターチケットオフィス TEL.0798-68-0255
Profile

石川由依さん
8歳で初舞台を踏み、舞台を中心に活動。2007年声優デビュー。13年「第8回声優アワード」で助演女優賞、21年には「第15回声優アワード」で主演女優賞を受賞。主な出演作は、アニメ「進撃の巨人」ミカサ・アッカーマン役、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」ヴァイオレット・エヴァーガーデン役、「NieR:Automata Ver1.1a」2B役、ほか多数。舞台では「キングダム」紫夏役、「音楽劇ヨルハ Ver1.2」二号役など。20年からは歌と語りのソロプロジェクト「UTA-KATA」を開催している。

