今から千年以上前の平安時代中期、紫式部によって書かれた長編小説『源氏物語』。物語を新たに解釈し、書き下ろされた詩楽劇「沙羅の光」で、元宝塚トップスター紅ゆずるさんが光源氏を演じる。高貴で容姿端麗、多くの女性たちをとりこにしてきた主人公を「憧れの役だった」と語る紅さんはどんな光源氏となって見る人をとりこにするのだろうか。
日本の魅力を発信する伝統と革新の舞台公演
2017年より、歌舞伎や狂言など日本古来の伝統芸能に新たな価値を見いだすことを目的として、魅力的な「にっぽん」の文化体験空間を創出してきた『J-CULTURE FEST』。18年に始まった井筒装束シリーズは、資料に基づいて研究のために再現された〝本物の装束〟を纏(まと)う舞台公演として好評を博している。
24年1月3日(水)からの公演「沙羅の光〜源氏物語より〜」は、気鋭の歌舞伎作家である戸部和久さんが源氏物語を新たに解釈し書き下ろした脚本だ。物語の中で詠まれた和歌を舞や歌、語りで聞かせ、光源氏と心を通わせた女性たちの姿が詩楽劇として描かれる。和歌の朗読、二十五絃箏(そう)・胡弓、篳篥(ひちりき)・笙(しょう)などの和楽器演奏、日本舞踊などにより光源氏と女性たちの思い、愛と苦悩を表現し、出演者は美しい平安装束を纏って登場する。
主人公の光源氏を演じる紅ゆずるさんは、「光源氏役は、宝塚在団中から憧れの役であり、オファーには、即答した」という。
「光源氏という役については、以前から周囲の人に紅ゆずるの光源氏を見てみたい、光源氏を演じてほしいと言われてきたので、今回、このご縁をとてもうれしく思っています。宝塚在団中は、コメディエンヌとしてトップに立ってきましたが、源氏物語はどちらかというと悲劇のイメージ。愛を求めて次々に女性たちをとりこにしていく光源氏の美しさと悲哀を、私なりにどのように表現できるかと考えているところです。千年以上も前に書かれて、現代も語り継がれる源氏物語の世界にどっぷりと浸りたいと思っています」
詩楽劇「沙羅の光」では、光源氏と紫の上という宿命の2人が、愛憎渦巻く世界で魂の自由と平安を求めて苦悩、葛藤し、玉響(たまゆら)の光となってとけ合っていく姿が描かれる。2人を取り巻く愛と悲しみのストーリーがつややかな平安朝の舞台となって誕生し、見る人を物語の世界へと誘う。
本物の装束とともに魔性の美と色気を纏う
役を演じるからには、「誰よりも役について知り、役の気持ちになりたい」と語る紅さんは、光源氏についてこう分析する。
「みめ麗しく、身分も高く、才能にも恵まれている。そんな光源氏が次々に他の女性を愛してしまうその背景には、私は早くに母親を亡くし、母親という絶対的な愛に包まれてこなかったことが大きく影響していると思っています。愛する女性のどこかに母の面影を探す光源氏は、女性を愛することで瞬間的には幸せを感じることができても、その幸せははかなく、また他の女性に目を向けてしまうのではないかと。源氏物語は、光源氏という完璧に見える人が抱えるコンプレックスを描いた作品とも言えるのではないでしょうか」
舞台で紅さんが身につける光源氏の衣裳(いしょう)は、糸から染め上げた本物の直衣(のうし)だ。
「昔から紫色が大好きで、似合うと言われてきたので、衣裳を目にした時はうれしかったですね。ただ、実際に着てみるとその重さには驚きました。この装束自体、博物館に飾ってあってもおかしくないようなものだそうです。宝塚時代、大羽根を背負ったこともありますが、それよりも重いという印象でした。これを着て美しく動いたり舞ったりすることを考えると身が引き締まる思いです。平安時代を再現した本物の装束を纏って光源氏を演じることができる人は限られていると思うので、紅ゆずるだから魅せられる、光源氏として誇りを持って舞台に立てるよう、稽古にも励みたいと考えています」
日本が最も日本らしい空気になる正月。凛(りん)とした空気の中、日本の伝統的な美しさを目にし、体感できる舞台作品だ。紅さんが演じる光源氏は、どんな愛と悲しみを見せてくれるのか。物語にも、その美しさにも終幕まで目を離すことができないはずだ。
J-CULTURE FEST presents 井筒装束シリーズ「沙羅の光〜源氏物語より〜」

〈日時〉2024年1月3日(水)〜7日(日)
〈会場〉東京国際フォーラム ホールD7(東京・有楽町)
〈料金〉SS席12,000円、S席9,000円、U-25席4,000円(全席指定・税込み)
〈演出・振付〉尾上菊之丞
〈脚本〉戸部和久
〈出演〉紅ゆずる、井上小百合、日野真一郎、花柳喜衛文華、藤間京之助、羽鳥以知子、尾上菊之丞
■チケットに関するお問い合わせ ticket_genjimonogatari2024@le-himawari.co.jp
■公演に関するお問い合わせ info@iz2tokyo-genji.com
Profile

紅ゆずる さん
2000年、宝塚音楽学校入学。02年宝塚歌劇団に88期生として入団し、初舞台を踏む。星組に配属。16年、星組トップスターに就任。「GOD OF STARS-食聖-」「Éclair Brillant(エクレール ブリアン)」(19年)東京宝塚劇場千秋楽をもって退団。退団後も舞台「NOISES OFF」への出演、写真集『悪い女 A BAD WOMAN』出版など幅広く活躍する。

