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岩代太郎さん
July.2024
Vol.226
どんな環境でも境遇でも
前を向けるような心の道標を
作曲家岩代太郎さん

ふと聞こえてきたメロディーが、1行の言葉が、誰かの何げないひと言が救いになることがあり、踏み出せなかった一歩への背中を押してくれることがある。これからを生きる若い世代のために、生涯心に寄り添ってくれるような「心の道標(みちしるべ)」「心の燃料」「心の栄養」となるメッセージを届けたい──。2023年、作曲家の岩代太郎さんは「オトブミ集〜絆」という活動を立ち上げた。音楽、言葉、朗読のハーモニーが生み出す「オトブミ」に込める思いとは。

仕事を超えた理想と壮大な思想を知って

ジョン・ウー監督の『レッドクリフ』の音楽制作のため、撮影現場に足を運んだ岩代さんは、戦いのシーンの撮影中、監督からこんな話を聞いた。「ここにいる多くの出演者・スタッフは、中国、モンゴル、韓国、日本、アメリカから集まっている。彼らはついこの間までの歴史において、国家間や民族同士で争っていた。それが今、こうして一つの作品を作ろうとしている。私が本当にやりたかったのは、こういうことだ」と。

それまで映画音楽の制作を仕事=経済活動と捉えていた岩代さんは、壮大な思いに衝撃を受けたという。さらに、音楽について「これはただのバトルフィルムではない。私は〝戦争において勝者はいない〟ということを一番に伝えたい。だから勝者万歳のような音楽は違う」とのオーダーがあった。

「作品から、そんな監督の意図を感じ取る人がどのくらいいるかはわかりません。しかし、僕にとっては仕事のスタンスが大きく変化するきっかけでした。映画を作ることは、単なるビジネスではなく、価値観の違うもの同士が志を一つにする異文化交流なのだと気付かされたんです」

ウー監督との出会いから、岩代さんは自分の仕事やスキルを通してビジネスを超え、社会や世界に貢献できる生き方があるのではないかと模索し始める。それが「オトブミ〜絆」という活動の種となった。

「オトブミ〜絆」誕生のもう一つの直接的なきっかけとなったのが東日本大震災だ。「あの時、被災地の映像を見て『自分にできることはないか』と思わなかった人はいなかったはずです。でも、人が生きるか死ぬかという時に、作曲家ができることは何もないと思い知り、悶々(もんもん)としていましたね。そうしたらその後会った役者さんも、同じ思いを抱えていたんです。被災地で役者ができることなんて何もないと。そこで、彼らのスキルを社会貢献につなげられるようなプロジェクトはないかと考え始めました。オトブミのスタートラインです」

仕事を超えた理想と壮大な思想を知って

オトブミを通してつながり広がっていく輪

2011年に子どもを授かった岩代さんは「命」や「次の世代のためにできること」について深く考えるようになり「何かをやらなくては」と強い衝動に突き動かされたという。

「様々なご縁があり、これまでに自分が積極的に関わることのなかった児童養護施設などに足を運ぶようになりました。そこには、経済的理由や暴力など何かしらの事情で親と一緒に暮らせない子どもたちがいます。最近は国籍を持たない子も増え、ある意味で現代社会の縮図のように思えました。災害や戦争、パンデミックの世の中で、そういう子どもたちを目の当たりにし、普通に生まれて普通に育つことが、どれだけ尊いかということを思い知ったんです。世の中の見え方が180度変わりました」

「オトブミ〜絆」のメッセージを執筆するのは、岩代さん自身がメディアなどを通して知り「会いたい」「メッセージを依頼したい」と思って声をかけた方、知り合いの紹介でつながった縁など様々。執筆されたメッセージを俳優が朗読し、そこに岩代さんがメロディーを乗せることで形作られるのが「オトブミ〜絆」というオーディオコンテンツだ。

「若い人が情報を得るツールは、その多くがスマホだと考え、スマホで手軽に聞けるようなものに仕上げることに重きを置きました。教科書のようにはしたくない、どこからでも、一編だけでも、何編でも聞ける形のものにと思って制作を続けています。100編残すことを自分のライフワークと決めましたが、この活動を通して広がっていく輪は、本当に温かく、かけがえのないものです」

音楽、言葉、人の声が伝えるメッセージは、これからを生きる人たちへ前を向いて歩むための、一歩を踏み出すための心の栄養として届くに違いない。

500名様を無料ご招待
特別講演会「人生はソナタ形式」

500名様を無料ご招待 特別講演会「人生はソナタ形式」

人生後半を自分らしく生きるために、何を大切にしていったらよいのだろう――。国内外で数多くの映像作品の音楽を手がけてきた作曲家の岩代太郎さんの特別講演会「人生はソナタ形式」。交友のある俳優の高橋克実さんを特別ゲストに迎え、人生を輝かせるためのヒントをトークとピアノ演奏、朗読も交え語り奏でます。500名様を抽選で無料ご招待いたします。
〈日時〉7月28日(日)14:00~16:00(開場13:30)
〈場所〉有楽町朝日ホール
〈申し込み〉下記「お申し込みはこちら」ボタンからお申し込みください。
〈締め切り〉7月17日(水)23:59まで
■お問い合わせ 「人生はソナタ形式」運営事務局 otobumi@info-event-jimukyoku.jp

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Profile

岩代太郎さん

岩代太郎さん

1965年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院修了。国内外問わず多くの映像作品の音楽を担当。映画『血と骨』『春の雪』『Fukushima 50』『キネマの神様』などで日本アカデミー賞優秀音楽賞。ジョン・ウー監督『レッドクリフ』『The Crossing』『ManHunt』、ポン・ジュノ監督『殺人の追憶』も手掛ける。テレビでもNHK連続テレビ小説「あぐり」、大河ドラマ「葵 徳川三代」「義経」などを担当。近年手掛けた映画は『月』、『正欲』、『首』など。またNPO法人「オトブミ集~絆」を立ち上げ、社会貢献活動にも取り組んでいる。

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