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奥山大史さん 越山敬達さん 中西希亜良さん
Aug.2024
Vol.227
小さな恋と小さな痛みを
あたたかな日射しが包み込む
映画監督奥山大史さん 俳優越山敬達さん 俳優中西希亜良さん

北国の小さな田舎町、雪が降り始めてから雪がとけるまで──。そんな閉ざされた半年ほどの、限られた季節に成長する少年の姿を描きたいという監督の思いでスタートした作品づくり。吃音(きつおん)のある少年、夢を諦めたコーチ、コーチのことが気になる少女。三つの視点と三つの心が絡まり合い、ほどけてゆく物語は誰しもがどこかに自分を重ねることができるやさしさにあふれている。

子どものころに感じた心の振り幅を描きたい

「子どものころは、ほんのささいなことがすごくうれしかったり、ちょっとしたことが悔しかったり、悲しかったりして涙があふれた。感情の振り幅がすごく大きいんですよね。大人になるにつれ、僕たちはそれを狭めてしまっている。作品を見ることで、子どものころに感じたこと、想像したことなどを感じてもらえたらと思いながら作品を撮りました」。子どもを主人公にして作品を撮る理由を、奥山大史監督はこう話す。

映画『ぼくのお日さま』の主人公タクヤ(越山敬達さん)は、吃音のある小学生。タクヤが心を奪われるさくら(中西希亜良さん)は、フィギュアスケートを習う中学生だ。そこにさくらのコーチで、2人にアイスダンスを教えることになる荒川(池松壮亮さん)の視点が加わり、物語が紡がれていく。

作品の設定は小さな田舎町。物語に寓話(ぐうわ)性が生まれるように、「ロケ地選びにはかなりこだわった」と言う。「日本でありながら日本ではないような、でも現実離れしすぎないような場所」として監督が選んだ景色は、風景だけでも何かを語りかけてくるような絵として完成しており、主演の2人も「ロケ地は本当にきれいだったし、スクリーンを通して見ても美しい」と声をそろえる。映画の中でも印象的な自然の湖でスケートを滑るシーンは、実際に北海道の苫小牧にある凍った湖でロケを行った。「スケートは結構長く習っていますが、自然の湖で滑ったことはありませんでした。本当に寒かったので何度か、『あ、私凍ったかも』と思いました」(中西さん)。「湖のリンクはゴツゴツしていて、思うように滑れず、何度も転んで痛くて泣いてしまいました」(越山さん)。それほど過酷なロケだったとは思えない作品を印象づけるすてきなシーンを、ぜひスクリーンで楽しんでほしい。

俳優 越山敬達さん
俳優 中西希亜良さん

主演の2人と出会い厚みを増した物語

タクヤ役とさくら役は、オーディションで募った。習い事でスケートの経験があった越山さんは「スケートの作品があるからオーディションを受けてみたら」とマネジャーに勧められ、中西さんは「通っていたスケートリンクに、オーディションのポスターが貼ってあり、コーチに勧められた」と言う。越山さんは映画初主演、中西さんは演技そのものが本作初となった。世界から「注目すべき新鋭」と評された2人はタクヤ、さくらという役についてこう話す。「タクヤには吃音がありますが、僕は吃音が何のことかも知りませんでした。だから、調べたり、監督に教わったりしながら普段の僕とは違うタクヤに寄り添いながら演じました」(越山さん)。「スケートのシーンは、普段と変わらずできたのですが、演技も初めてで、わからないことだらけ。越山くんや共演者の方々、監督にいろいろ教わりながらすてきな経験をさせていただきました。自分がカンヌに行ったことなど、いまだに信じられません」(中西さん)。

奥山監督は「2人に出会い、2人の顔と声を思い浮かべながら、物語が具体的になり、セリフが生まれていった」と振り返る。スケートの基礎がある2人、スケートの映画を撮りたいという監督の思い、物語が紡がれるロケーション、「ぼくのお日さま」という主題歌──。その全てが、作品が生み出されるための奇跡の出会いだったのだろう。エンドロールで流れる「ぼくのお日さま」は、全ての登場人物の、そして映画を見る私たちの気持ちを代弁してくれるように聞こえる。「きらいなときはノーと好きなら好きと言えたら」。シンプルなことほど、実践は難しい。

映画監督 奥山大史さん

『ぼくのお日さま』

『ぼくのお日さま』

吃音のあるアイスホッケー少年・タクヤは、「月の光」に合わせてフィギュアスケートを練習する少女・さくらに心を奪われてしまう。ある日、さくらのコーチ荒川はホッケー靴のままフィギュアのステップをまねて何度も転ぶタクヤの姿を目にする。タクヤの恋を応援したくなった荒川は、スケート靴を貸してあげ、荒川の提案でタクヤとさくらはアイスダンスの練習をすることに……。
〈出演〉越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也、山田真歩、潤浩
〈監督・撮影・脚本・編集〉奥山大史
〈主題歌〉ハンバート ハンバート 9月6日(金)テアトル新宿、TOHOシネマズシャンテにて先行公開スタート

公式サイト

Profile

奥山大史さん

(写真中央)おくやま・ひろし/1996年、東京都生まれ。大学在学中に制作した長編監督作『僕はイエス様が嫌い』(2019年)が第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を受賞。日本、フランス、スペイン、韓国、香港で劇場公開された。森七菜「スマイル」、乃木坂46「僕は僕を好きになる」などのMVを監督するほか、米津玄師「カナリヤ」や星野源「創造」のMVでは撮影を、ドキュメンタリーフィルム「HUMAN ODYSSEY」では総監督を務めた。長編2作目となる『ぼくのお日さま』は第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品された。


越山敬達さん

(写真右)こしやま・けいたつ/2009年、東京都生まれ。俳優のほか、EBiDAN NEXTでのアーティスト活動や『ニコ☆プチ』でモデルを務めるなど幅広く活躍。映画出演作に『スイート・マイホーム』(23年)、『かぞく』(23年)などがあり、本作が映画初主演となる。今後、映画『夏目アラタの結婚』、ドラマ「天狗の台所 Season2」(BS-TBS)の放送が控えている。


中西希亜良さん

(写真左)なかにし・きあら/2011年、東京都生まれ。4歳から現在までフィギュアスケートを習っており、作品の中で披露している。演技は本作が初。特技はダンス、語学(英語、フランス語、韓国語)など。

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