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林部智史さん
Nov.2024
Vol.230
オペラやクラシックファンのみならず
建築やアートを体感できる舞台へ誘う
現代美術作家杉本博司さん

女性をとりこにする希代の放蕩(ほうとう)者ドン・ジョヴァンニと彼を取り囲む女性たちをダイナミックに描いたオペラ「ドン・ジョヴァンニ」。モーツァルトの豊かな音楽性が詰め込まれている名作を新たな演出で全幕上演する。新たな「ドン・ジョヴァンニ」は、現代に何を届けてくれるのか——。美術を担当する杉本博司さんに聞いた。

モーツァルトも見たはずの景色を舞台に創出する

Bunkamuraのオーチャードホールを飛び出し、様々な個性を持つ外部ホールで開催するORCHARD PRODUCE。めぐろパーシモンホールを舞台に、世界的アーティストがコラボするモーツァルトのオペラシリーズ、第2弾の公演が決定した。

大好評だった初回、千住博さんの美術によるオペラ「魔笛」に続き、2025年2月には、杉本博司さんとのコラボレーションによる「ドン・ジョヴァンニ」が新たな演出で全幕上演される。これまで杉本さんは、舞台作品において、文楽・バレエなどの美術・演出など幅広く手がけているが、オペラ作品については、「携わるのは初めてだけれども、新たなジャンル、世界に足を踏み入れることは、いつもスリリングで楽しみ」と語る。

新たな「ドン・ジョヴァンニ」の舞台に美術の観点から杉本さんが取り入れようと構想しているのが、モーツァルトとほぼ同時代に生きた建築家・考古学者であり、多くの版画作品を残したジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージの作品だ。

「モーツァルトとピラネージは、共に18世紀後半を生きた芸術家です。ピラネージは、モーツァルトほど知られている人物ではありませんが、彼が当時発見された遺跡から想像して描いたローマ時代の建築や街並みの版画は、多くの文学者や芸術家に影響を与えています。モーツァルトは、演奏旅行でイタリアにも訪れていますから、ローマの遺跡も目にしているはずです。ピラネージのイメージを舞台美術として用いることで、モーツァルトも見たであろう景色を現代の舞台上に作り出し、このオペラ作品を見る人と共有できたら面白いのではと考えました」

©森山雅智

時空を超えてつながる芸術作品の可能性

もう一つ、今回の舞台で杉本さんが構想しているのが、日本最古の木造建造物である法隆寺のモチーフを舞台上に立ち上げることだという。

「古代ギリシア・ローマの文化は、シルクロードを通ってはるか東端の島国、日本にももたらされ、独自の発展を遂げました。古代の歴史と文化、西洋と東洋は離れているようで実はずっとつながっている。モーツァルトの音楽が、現代を生きる私たちをいまだに感動させることからもわかるように、芸術は、時空を超えて古代から現代、そして未来へとつながっていくものなのではないでしょうか。今回の舞台でもアートの持つ可能性を感じ、驚いてもらえるような仕掛けを見せるべく、色々とアイデアを練っているところです」

音楽と歌によってストーリーが進行し、そこに舞台美術や衣装など視覚的要素も加わるため、総合芸術と呼ばれるオペラ。生涯で21のオペラ作品を手がけたモーツァルトは、オペラを真の総合芸術へと高めた作曲家と言えるだろう。モーツァルトの5大オペラの一つとして今なお世界中で愛され続けている「ドン・ジョヴァンニ」。

本公演は、首席指揮者の鈴木優人率いる古楽器アンサンブル、バッハ・コレギウム・ジャパンの管弦楽と合唱、国内外で活躍する旬の歌い手たちによる類いまれなる美しい響きを、気鋭の飯塚励生が演出する。衣装を手がけるのは、比類のないセンスで知られるソニア・パークと、スウェーデン出身のウィリアム・オウェソン。このメンバーと共に作品を作り上げることに杉本さんも「世界に誇れる日本発信のオペラになるのでは」と期待を込める。

席数1200というめぐろパーシモンホール(大ホール)は、「どの席も特等席」と言われるぜいたくな空間。オペラやクラシックファンを超えて、絵画や建築、その歴史に興味がある人にとっても見逃せない舞台となるだろう。現代の日本が世界に発信する「ドン・ジョヴァンニ」に期待が高まる。

高砂熱学PRESENTS
モーツァルト オペラ「ドン・ジョヴァンニ」

鈴木優人&バッハ・コレギウム・ジャパンが奏でるモーツァルト時代の音と、現代の最高峰アーティスト達がコラボするモーツァルトのオペラシリーズ、第2弾が決定! 2025年2月は杉本博司の美術による「ドン・ジョヴァンニ」を新制作。めぐろパーシモンホールのゆったりとした座席で堪能する“今ここにしかない”オペラは、またとない幸福体験!
〈日時〉2025年2月20日(木)〜21日(金)17:00開演、23日(日・祝)〜24日(月・休)14:00開演〈会場〉めぐろパーシモンホール(大ホール)〈料金〉S席25,000円、A席21,000円、B席17,000円、C席11,000円(全席指定、税込み)
■お問い合わせ Bunkamura TEL.03-3477-3244(10:00~18:00)

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Profile

©森山雅智

杉本博司さん

1948年生まれ、東京都出身。74年よりニューヨーク在住。活動分野は、写真・彫刻・インスタレーション・演劇・建築・造園・執筆・料理と多岐にわたる。2008年に建築設計事務所「新素材研究所」、09年に公益財団法人小田原文化財団を設立。17年10月には小田原文化財団「江之浦測候所」が開館。1988年毎日芸術賞、2001年ハッセルブラッド国際写真賞、09年高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)受賞。10年秋の紫綬褒章、13年フランス芸術文化勲章オフィシエ受章。17年文化功労者。23年日本芸術院会員に選出。

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