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HIKARIさん
Jan.2026
Vol.244
映画やエンタメが世界平和に
貢献できることを証明していく
映画監督HIKARIさん

お葬式、結婚式、受験などのライフイベントにおいて、切実な理由から家族をレンタルしたい人がいる。『レンタル・ファミリー』は家族の代わりを引き受けるアメリカ人俳優の摩訶不思議(まかふしぎ)な日本滞在記。ハリウッドスター、ブレンダン・フレイザーのハートウォーミングな演技が国境を超え評価を受けている。オリジナルストーリーを作り上げたHIKARI監督に話を聞いた。

うそをついてでも守るべき家族の感情とは

昨年11月に北米公開され、初登場で5位にランクイン。著名な批評家賞、National Board of Reviewの2025年度のベスト10映画の中に『F1/エフワン』や『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』と共に選出された。それがHIKARI監督の『レンタル・ファミリー』である。

海外の観客を驚かせたのが、劇中で描かれる家族をレンタルするサービスが、日本では1980年代から始まった実在のビジネスであること。HIKARI監督は「日本特有のユニークなビジネスをユニバーサルな物語とするよう目指した」と語る。

「リサーチで知った実話に、病身の父親が娘と死ぬ前に和解したいと願い、周囲が似た女性をレンタルしたというものがありました。本当の娘との再会はかなわなかったけれど、父親は心にわだかまっていた謝罪の気持ちを外に出すことができた。それがレンタル・ファミリーを仕事とする人たちの物語を作るアイデアとなりました。本作で伝えたかったのは、真の家族と呼べる人は血のつながりがなくても、人種が違っても、近くにいるということです」

国際的な評価を得た長編デビュー作『37セカンズ』(2020年)は脳性麻痺(まひ)の23歳の女性と、娘可愛さから過干渉となった母親の話だった。今作では、低迷中の俳優フィリップ(ブレンダン・フレイザー)が、著名な俳優(柄本明)の話し相手や、中学受験に挑戦する少女(ゴーマン シャノン 眞陽)の父親役を引き受ける中、自身の人生に欠けていた父性に触れ、成長する姿を描く。

「父は死んだと聞かされて育った私にわざわざ“出ていったんよ”と教えた近所のおばさんがいました。母にどこにいるのかと聞くと、たまたまテレビに映った草刈正雄さんを“あの人や”と。うれしくて小学校でそれを言うと同級生たちは違うと言う。家に戻って聞き直すと今度はテレビの水谷豊さんを“あの人や”。で、“もうええわ”となったんですけど(笑)、その時、母が“今が幸せでそれでええやん”って。嫌な過去のふたを開けるより、うそをついてでも子供を守ったほうがいいと判断したと今はわかるし、その境遇がフィリップに反映されたのは確かです」

鉄工所で育った私がトップを目指すわけ

フィリップを演じるフレイザーは家族との別れを重ね、一時期、キャリアを休んだ過去を持つ。

20年、『ザ・ホエール』で272㌔の巨体を持つ主人公を演じて第95回米アカデミー賞®︎の主演男優賞を受賞したが、動きを封じ込まれた中での感情表現に驚いた人は少なくないだろう。本作でも、規律が多い日本の生活でどこか窮屈そうなフィリップが、疑似家族の一員を演じることで居場所を見つけていく変化をチャーミングに演じている。

「彼はしゃべっていても本当に優しくて、目の奥をのぞき込むとご苦労された過去がにじみ出てくるような人。ご長男が自閉スペクトラム症であることを公表され、周囲の偏見を乗り越える経験をした人だからフィリップ役を任せられた。映画の前半のフィリップはフレーム・イン・フレームの構造を使い、窓の枠の中に押し込めて、そこから出られない圧迫感や、周囲と距離があることを表しています。フレイザーの演技を通し、フィリップが枠を壊していく解放感を共に味わってほしい」

生き馬の目を抜くアメリカのエンタメ界の第一線で働く数少ない日本人、次世代へのメッセージは?

「私の実家は鉄工所で、映画とは関係ない環境から出てきた。そんな私でもトップに立てたら、私もと思う子が増えるでしょ。アメリカの映画業界は今、人手不足。無料で各部署の仕事を紹介する動画の配信を始めたばかりで、ワークショップで平和貢献もしたい! 見ていてください」

『レンタル・ファミリー』

©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

東京で暮らすアメリカ人俳優のフィリップは、日本での生活に居心地の良さを感じながらも本来の自分を見失いかけていた。そんな彼が出会ったのが、“レンタル家族”という仕事。他人の人生に入り込み、仮の家族の一員や友人として役割を演じるうちに自分では想像もできなかった人生を歩み始める──。全編日本ロケで、日本の美しさと優しさを世界に届ける心揺さぶる名作だ。
〈出演〉ブレンダン・フレイザー、平岳大、山本真理、柄本明、ゴーマン シャノン 眞陽
〈監督〉HIKARI

2月27日(金)公開

公式サイト

Profile

ヘア:EIJI KADOTA/メイク:ITSUKI

HIKARIさん

大阪府出身。長編デビュー作『37セカンズ』は第69回ベルリン国際映画祭でプレミア上映され、パノラマ観客賞、国際アートシアター連盟賞のW受賞の快挙を成し遂げ、最優秀新人監督賞にもノミネートされた。テレビ作品には、エミー賞®受賞シリーズ「BEEF/ビーフ」のパイロット版監督、アンセル・エルゴートと渡辺謙が主演、マイケル・マンがエグゼクティブプロデューサーを務めた「TOKYO VICE」がある。また、短編映画の脚本・監督でも数々の受賞歴がある。

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