2021年度・クイズ②
解説
テーマ①
国内農業の基盤が弱体化?
農業の担い手と農地の減少…長らく低迷する日本の食料自給率

「昔は一面に稲穂が実る田園風景だったのに、今は雑草が伸び放題になっているな…」と思った経験はありませんか?いま、新規就農者は1年に約5万人いますが、農業従事者は1年に約5.6万人のペースで減少しています。さらに、農業従事者の高齢化も大きな問題です。「平成」の30年間で平均年齢は約10歳高齢化し、2025年には農業従事者の約7割が65歳以上になると試算されています。

農地面積も減少しています。50年前に580万haだった農地面積は、2019年に440万haに減ってしまいました。これは、都道府県で3番目に面積が大きい福島県1県分に相当します。このままでは日本の農業の衰退が心配です。

農地面積、作付け(栽培)延べ面積

「農地面積、作付(栽培)延べ面積、耕地利用率」出典 農林水産省「耕地及び作付面積統計」 注:耕地利用率=作付(栽培)延べ面積÷耕地面積×100

農家さんと農地が減り続けているということは、 わたしたちの食べるものを、わたしたちの国でどんどん作れなくなっているということですよね!? 農地を管理する農家さんがいなくなると、農地は荒れてしまうんですよね。一度荒れた農地からまた農産物を収穫できるようにするには、あらためて、土づくりや水の管理、病害虫対策など、時間をかけなければならないそうです。

農家の減少・高齢化、農地面積の減少の影響もあり、長らく低迷している日本の食料自給率(カロリーベース)は、2019年時点で38%となっています。農林水産省は2030年までに国内の食料自給率(カロリーベース)を45%まで引き上げるという目標を掲げています。

食料自給率

出典:農林水産省「食料需給表」、FAO「Food Balance Sheets」等を基に農林水産省が試算(アルコール類等は含まない)

私たちが口にする食べ物の6割以上を輸入に頼っているということですよね!?
日本の食料自給率は、先進国のなかで最低水準なんですね…
私の大好きな「お米」、日本人の大切な主食「お米」の生産量はどうなっているんだろう?

2000年からの約20年間で、米や牛乳は10%程度、野菜や果樹は20%程度、生産量は減少しています。国産の農畜産物をおいしく食べて、日本の農家さんを応援しましょう!

テーマ②
日本でも世界でも自然災害が多発…どんな影響がある?

最近、南国のように強く激しい雨が急に降ったり、台風が続けて来襲したり…と、自然災害を実感することが多くありませんか?実は、日本における「非常に激しい雨(1時間降水量50ミリ以上)」は直近30年で約1.4倍に増加しています。

国内の自然災害の回数・被害額ともに増加しており、2019年度の農林水産関係被害額は、4,883億円に上りました。天候不順による収穫量減少などの被害はもちろんですが、例えば、大雨によって洪水や土砂崩れが発生すると、農地や農業関連施設、農道に土砂などが流入し使えなくなってしまい、物流も遮断されてしまいます。

過去10年の農林水産関係被害額

出典:農林水産省(令和2年4月末時点)

国内の自然災害の回数・被害額ともに増加している…… 農地を守ることは、洪水や土砂崩れなどの自然災害を防止・軽減する働きもあるそうです 畜産などの施設は初めの投資額が大きいので、被災した場合、再建までに大変な費用と時間がかかってしまうそうです。

日本に限らず、世界各地でも、大洪水、干ばつ、山火事、台風、熱波、暴風などが発生しており、今までにない深刻な被害のニュースを耳にします。2019年には、ヨーロッパ広域における高温・少雨、スペインなどイベリア半島での多雨・洪水、北中米の干ばつ・ハリケーンなどにより非常に多くの被害が出ました。

世界の主な自然災害

出典:気象庁

自然災害は世界的にも多発していて、昨年は、日本の農産物輸入の上位5カ国(米国、中国、豪州、タイ、カナダ)すべてで、豪雨・大雨・干ばつなどの災害が発生したそうです。
日本だけでなく、世界でも自然災害の発生が続けば、農畜産物が生産できなくなって、価格の高騰が始まり、最終的には食料不足になってしまうリスクがありますよね!?

日本最大の農産物輸入国である米国では、特に竜巻やハリケーンによる災害が回数・被害額ともに増加しています。2017年には、米国観測史上最高の被害総額3,060億ドル(約34兆6,000億円、農業被害以外も含む)を記録しました。

テーマ③
日本は人口減、世界の人口は増加…食料は足りる?

世界に今、どのくらいの人が生活しているか、知っていますか?2019年の統計では約77億1500万人!この人口はさらに増え続けると予測されています。どのくらいかというと、2030年には85億人。今後10年間で約8億人も増えることになります。

人口の増加が予測される地域の大部分はアフリカとアジアです。飢餓問題が解決していない地域で、これ以上人口が増加すると、食料不足や栄養不足がさらに進んでしまうことが危惧されます。

世界の人口予測

出典:内閣府「2030年展望と改革タスクフォース報告書参考資料」

飢餓が懸念される地域で、今後も人口は増加するとの予測…… 日本が国内での生産を増やさずに、食料を海外に依存し続けたらどうなるんだろう?安易に途上国から輸入をすることで、その国の食料を奪う可能性はないのかな? 日本が途上国から高い値段で食料を買えば価格が上昇するので、その国の人には手が届かなくなってしまう可能性がある!?

下記のグラフは、2025年に消費される食料が、2015年頃に比べて何パーセント増えるかを地域ごとに示したものです。先進国と、サブサハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ)、サブサハラ以外の途上国の3つに分けて表示しています。先進国では消費量が減ると予測されている品目も一部ありますが、サブサハラや途上国では消費量が増える予測となっています。

一人あたり食料消費量伸び率

出典:内閣府「2030年展望と改革タスクフォース報告書参考資料」

日本でもこれから先ずっと、海外からエネルギーや食料を買い続けられる保障があるわけではないですよね…? 私が大好きな牛乳や乳製品を作るには、たくさんの水やエネルギー、牛さんのご飯も必要なんですよね。

水・エネルギー・食料の不足は、途上国だけの問題ではなく、いずれわたしたちの日本でも起こりうる懸念があります。

テーマ④
農産物の国際化がすすんでいる?輸出入の現状

スーパーなどに行ったとき、海外産の農産物が多いなと感じたことはありませんか?実は、2000年からの約20年間で、農産物の輸入額は約2.7兆円も増え、2019年には約6.5兆円輸入しています。他方、輸出額も同じ期間に約4,000億円増加していますが、国としてもっと輸出を増やしていこうと目標を立てています。

輸入額の推移

輸出額の推移

出典:農林水産省「農林水産物輸出入概況(2019年)」より(一部抜粋)

この約20年間で輸入額は大幅に増加。農産物の国際化は進展… 日本の食材は、海外からの評価をどんどん高めているそうで、私が好きな果物、いちごやぶどうなどの輸出量も伸びています! 食料自給率が低い状態で万一輸入がストップしてしまったら、国内の食料需要を満たせるのかな?

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴いマスクの需要が急激に増加しましたが、その大部分を輸入に頼っていたことから、国内は深刻なマスク不足に陥りました。もしそれが食料であったらどうなっていたでしょうか。

コロナ禍で、10以上の国が食料の輸出規制に踏み切ったそうです。それらの国から日本は食料を多く輸入していなかったので、影響は出なかったそうですが…
全ての食料を国内で生産することは難しいそうですが、国民が必要とし消費する食料は、できるだけその国で生産する、「国消国産」という考え方は大切ですね!

食料自給率の低迷、農業生産基盤の弱体化、自然災害の頻発、世界的な人口増加、国際化の進展、日本の食を取り巻くリスクが高まるなか、日本の食を支える農業・農村を応援しましょう!

テーマ⑤
日本の国土・地形に適した農業は…
「農業の多面的機能」って何?

日本の食料自給率はカロリーべースで38%、約6割を輸入に頼っている状況です。主要輸入国の米国や豪州などは、広大な土地で、その規模に合った大型機械を使って農業をしています。日本も同じように大型機械で収益性を高めて、自給率を上げることはできないのでしょうか?

日本は起伏の激しい中山間地が多く、広大で平坦な土地が少ない地形です。日本の農家1戸あたりの平均農地面積は、なんと米国の約1/70、豪州の約1/1,260です!(※)

※出典:日本は、「平成29年農業構造動態調査」
米国は、「Farms and land in Farms 2016 Summary」(米国農務省)
豪州は、「Agricultural Commodity Statistics 2016」(豪州農漁業省)

そして、日本の農業地域を地形や人口密度から、都市的地域・平地農業地域・中山間地域に分けると、中山間地域が約7割も占めています。

中山間地域は傾斜地が多く、耕地は狭くて分散していますが、標高差や豊富で良質な水資源などの自然条件を生かした農産物がつくられています。

例えば、日当たりや水はけのよさを生かした柑橘(かんきつ)類や、高地の冷涼な気候を生かしたキャベツなど葉物野菜の産地になっていたり、地域特有の伝統野菜が栽培されていたり、中山間地域は日本の多様な食文化を支えています。

日本は中山間地域が多く平坦な土地が少ないから、大規模化した農業だけをすすめることは難しいんですね… 中山間地域の自然を生かした農業や食が、日本の特色なんですね! 私の好きな野菜も高原や山間でたくさん収穫されています。

中山間地域は「農業の多面的機能」という重要な役割も果たしています。斜面に畑や水田があることで、土砂崩れや川の洪水を防いだり、雨水がゆっくり浸透して地下水を作ったり、周辺市街地の気温上昇を抑えているんです。さらに、多くの生き物のすみかになり、美しい景観を生み出してくれています。

出典:日本学術会議「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について(答申)」 (平成13年11月)及び関連付属資料

田んぼや畑は、農作物を作るだけの場所ではなく、私たちの生活や自然環境も守ってくれているんですね!
普段は気づきにくいけれど、大切な「農業の多面的機能」。日本の農業を応援していくことで、大切な自然環境を将来にも残していきたいです!

中山間地域は交通などが不便な土地でもあり、農家の高齢化・過疎化が進み、耕作放棄された土地が増えています。そうなると周辺地域のくらしや環境にも影響が出てきてしまい、大きな課題に直面している地域が多くあります。

テーマ⑥
食料を輸入するってどういうこと?
環境面からも考える

例えば、同じ100円のレモンでも、遠い米国から船の積み荷として運ばれてきたものと、国内の産地からトラックで運ばれたものでは、何が違うでしょうか?もちろん、味や品質も違うのですが、米国産は1万キロ以上を大型船舶で運び、国産は数百キロをトラックで運ぶ、これにかかる輸送エネルギーや環境負荷が大きく異なってきます。

各国のフード・マイレージの比較(品目別)

出典:中田哲也「農林水産政策研究第5号、52頁等 食料の総輸入量・距離(フード・マイレージ)とその環境に及ぼす負荷に関する研究」
及び「フード・マイレージ<新版>(2018、日本評論社)」

注)フード・マイレージ:食料の輸入(輸送)が地球環境に与える負荷の把握等のため、食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせた指標(単位:t・km)

また、海外からの輸入が多いということは、その輸送途中に事故があったり、輸入相手国で大規模な災害が発生したりした時などは、突然供給がストップしてしまう恐れがあります。食料を輸入に依存しないということは、食料の安全保障と持続可能な農業の促進を目標とするSDGsのゴール2「飢餓をゼロに」や、ゴール12「つくる責任 つかう責任」、ゴール13「気候変動に具体的な対策を」にも通じるものです。

日本は他の国と比べて、遠い国からたくさんの食料を輸入しているんですね。特にトウモロコシや小麦などの穀物の割合が高いですね。 輸入された食料は、日本で生産された食料よりも地球に優しくない??環境負荷を減らすためにも、そして食料を安心して手にするためにも、国民が必要として消費する食料は、できるだけその国で生産する、「国消国産」という考え方は大切ですね!

日本の食料自給率を品目別にみてみると、米はほぼ100%に対し、同じ穀物の小麦や大豆などは低い状況であり、これらの生産を増やしていくことがすすめられています。

品目別の食料自給率(カロリーベース)

出典:農林水産省 令和元年度食料自給率について

消費者のニーズに合うものを生産していくことは、食料自給率を上げることにもつながっていくんですね。
テーマ⑦
コロナ禍で打撃
日本の農畜産物への影響は?

新型コロナウイルス感染症による影響は、全世界に大きなダメージを与えています。感染拡大が進み、一時はマスクや消毒剤などが店頭から消えるなど、私たちの生活にも不安が広がりました。

一方、外出自粛により家で過ごす時間が増えていますが、そんな時でもスーパーなどの小売店は、食料を途絶えることなく供給してきました。その向こうには、食品の流通を担う人、そして農畜産物を生産して出荷する人など、さまざまな人たちの力があって国民の「食」が支えられています。

コロナ禍で国内の農業にはどのような影響があったのでしょうか?

コロナ禍によって、需要が深刻に減少してしまっている品目もあるんですね……。誰にとっても必要な食料、それを生み出す農業がこうした状況にあることを、もっとたくさんの人たちに知ってほしいです! リアルでのイベントが中止になってしまい、たくさんのお花を見る機会が減ってしまったことを実感しています……。個人の家でもお花を買って楽しむなど、一人ひとりのちょっとした行動が、日本の農家を守るための大きな力になるのではないでしょうか。

これまでのクイズのとおり、日本の食料自給率は低く、国内の農業は高齢化や労働力不足などの課題に悩まされています。それでも、日本の国土・地形に適した農業を展開し、田んぼや畑を守り続けることで、「農業の多面的機能」の発揮や、食料の安全保障と持続可能な農業の促進を目標とするSDGsの達成にも貢献しています。

何か大変なことが起きた時、短期間での食料の増産は難しいそうです。例えば、一旦荒れてしまった農地からまた農作物を収穫するには、あらためて、土づくりや水の管理、病害虫対策などを行う必要があるそうです。 自分たちが食べる食材はできるだけ自分たちの国でつくる、「国消国産」という考え方が、今注目されているそうです。私たちの食卓に、新鮮で安全な食品が途絶えてしまわないためにも、国産の食材をおいしく笑顔でいただいて、農家の皆さんを応援したいですね。
テーマ①
農業の人手不足どうやって解決?生産現場を支える様々な人たち

おいしい国産の食べ物を作ってくれている生産者ですが、2015年からの5年間で約39万人も減少しています。 その主な原因は、高齢化や農村地域人口の減少と言われています。

※農林水産省「2020年農林業センサス」による。

主な産業別高齢者就業者及び割合(2019年)

出典 : 総務省「労働力調査」

そこで、人手不足に悩む産地や生産者は、海外からの研修生(技能実習生)の受け入れや観光業など他業種の人たちの協力を得ながら、問題解決に取り組んでいます。でも、現在はコロナ禍のため、海外から日本への入国が難しく、新たな研修生をなかなか迎えられません。
一方で、コロナ禍で苦境にある観光業の人や副業希望者などが、「一時的な職場」として農業のサポートを選択し、農繁期の収穫作業や選別、箱詰めなどの出荷作業を支えています。また、地域特有の「食」や「農業」を体験して楽しむ、農山漁村滞在型旅行「農泊」への関心が高まっており、農業に興味を抱く人が増えています。

農家さんの減少は深刻な問題です…。 農地の面積は、約50年前と比べると、約140万ha(日本で3番目に大きい福島県より広い面積)も減ってしまっているそうです…。 コロナ禍でも、農家さんや地域の方など、様々な人たちの協力のおかげで、わたしたちの食卓に新鮮で安全な食材が届いているんですね。

※農林水産省「荒廃農地の現状と対策について」(2020年4月)による。

人手不足が深刻化するなか、JA全農おおいたでは、就農希望者に限らず、農業に関心を持つ人に対して、農業1日体験や農業アルバイト、プロ農家への弟子入りなど、希望に合わせて農業を支えることができる機会を提供しています。また、JAにしうわ(愛媛県)は、JAふらの(北海道)、JAおきなわ(沖縄県)と連携し、各地の農繁期に合わせたアルバイトの募集を行うなど、3地域をまたぐ人材の「産地リレー」を展開しています。この取り組みを通じて、本格的に就農を目指す人もいるそうです。

JAの様々な取り組みを通じて、日本の農業は成り立っているんですね。 農業1日体験や農業アルバイトは、農業の魅力を感じる「きっかけ」にもなっているんですね!

テーマ②
なぜ人気?ファーマーズマーケットの魅力とは??

地域のおいしいものと消費者をつなぐファーマーズマーケット(農産物直売所)を利用したことはありますか?地域の旬の食材を取り扱うJAのファーマーズマーケットは、どこに行っても盛況です。「新鮮な農産物」「生産者がわかる安心感」が魅力です。朝早い時間、多くの生産者がとれたての果物や野菜を運んでいて、新鮮さは折り紙付きです。商品の近くには、生産者の名前や顔写真が載っており、ファンになる方がたくさんいます。また、生産者の直接搬入だからこその価格設定も嬉しいポイントです。地元の農業・生産者を応援したい人から強く支持されています。

※JA全中「利用者ヒアリング調査(平成29年10月)」による。

JA糸島 産直市場 伊都菜彩
JAレーク滋賀 おうみんち 守山本店

農家さんの名前や顔がわかるってすごい安心!農家さんとの距離も近くに感じますね。 わたしもJAのファーマーズマーケットに通って、旬のおいしい食材で季節を感じたいです!

「豊富な品揃え」も、ファーマーズマーケットが人気の理由です。同じ野菜などが品種違いで複数並んでいますが、これは消費者のニーズを意識しているからです。例えばトマトなら、糖度の高さ、すっきりした酸味、黄色・オレンジ色などカラフルな品種のように、食味や見た目が異なるトマトが陳列されています。
食材の特徴が明記されたPOPや、商品に詳しい店舗スタッフの声を参考にすれば、迷わずに楽しく、レシピに合う食材を選ぶことができ、料理の幅も一層広がりそうです。

食材の種類が豊富だと、どんな料理をつくろうか、ワクワクしますよね! JAのファーマーズマーケットには、「食育ソムリエ」の資格を持つ人など、食材に関する専門知識が豊富なスタッフさんもいるんですって。 旬の食材を使った、おすすめの食べ方やレシピを教えてほしいですね!

また、ファーマーズマーケットで見逃せないのは、地元企業や生産者自身が手がける加工品。菓子、ジャム、漬け物、パンなど、素材の味を生かした、地元ならでは・生産者ならではの商品も人気を博しています。

テーマ③
日本人の主食「お米」。みんな、本当のこと知ってる??

白くて艶やかで、おいしい日本のお米。皆さんは毎日食べていますか。日本人の主食として欠かせない食材ですが、実は、1人当たりの消費量は年々減少しています。国民1人・1年あたりの消費量は、約50年で、なんと半分以下まで減ってしまっています!

米、肉類、油脂類の1人・1年当たり消費量の変化

出典 : 農林水産省「食料需給表」令和元年 注 : 1人・1年当たり供給純食料を記載

朝忙しくて朝食を抜いてしまったり、食の多様化でお米以外を食べる機会が増えたり、お米を炊くのが面倒だったり…消費量の減少については、様々な理由が考えられますが、「お米を食べると太りそう」というイメージも原因にあるようです。しかし、それは誤解です!「糖質=太る」のイメージかもしれませんが、糖質には様々な種類があり、お米の糖質「でんぷん」はゆっくり消化されるため、血糖値の上昇が穏やかで腹持ちがよく、体脂肪になりづらい特徴があります。カロリーも脂質の約半分です。
また、お米を中心に、魚・肉・野菜・海藻・豆類などのおかずをバランスよく食べることで、より栄養バランスのとれた食事になります。
そして、お米の価格も魅力の一つです。一般的なお米(5kg)の平均小売価格は2,070円。茶碗1杯に換算すると、たったの約27円です。家計に優しいことがわかりますね。

※農林水産省「米をめぐる関係資料」(令和2年)による。

文部科学省「七訂日本食品標準成分表」より算出による。

お米は太る!というのは誤解なんですね! 健康にもお財布にもやさしいなんて、やっぱりお米は毎日の食事に欠かせませんね! 日本人の主食として、わたしたちの生活に欠かせないお米を取り巻く状況が気になります…。

このままお米の消費量が落ち込んでしまうと、お米の生産者が減ってしまい、国産のおいしいお米が手に入りにくくなってしまうかもしれません。
さらに、お米を育てる田んぼが減ることで様々な弊害も出てきます。例えば、田んぼは、大雨の時の洪水や土砂崩れを防いだり、多様な生き物のすみかになったり、様々な役割があります。

お米を育てる田んぼは、様々な生き物のすみかにもなっているんですね。 大雨などによる災害を防ぐ役割があるなんて知りませんでした…国内でお米を作ることは、わたしたちの日常生活や環境を守るうえでも、とても重要なんですね。 国産のおいしいお米をずっと食べ続けたいけれど、このままでも大丈夫なのでしょうか?

お米を炊くのが面倒…という方には、無洗米や、温めてすぐ食べられるパックご飯もあります。お米は、世界に誇れる日本の主食です。環境面でも重要な役割を発揮するお米を、わたしたちがたくさん食べて、未来につないでいきたいですね。

テーマ④
毎日食べてる?栄養たっぷりの国産果物と国産野菜!

「なんだか体が疲れやすいなぁ…」と感じる時はありませんか?
それは、食生活を見直すサインかも!?ビタミンやミネラル、食物繊維を豊富に含む果物や野菜が不足すると、生活習慣病のリスクが増えたり、体の免疫力が低下するなど、体調不良の原因になってしまいます。
厚生労働省は、1日あたりの摂取目標として、果物200グラム、野菜350グラムを掲げていますが、若い世代ほど果物や野菜の摂取量が少ないのが現状です。

果物・野菜の摂取目標と年齢別平均摂取量

出典:厚生労働省「2018年国民健康・栄養調査」

摂取目標量が多い…と感じるかもしれませんが、果物の場合、みかん2個または、りんご1個で約200グラムです!野菜は加熱するとかさが減ります!そして、ポイントは、国内で生産される果物や野菜が収穫されるタイミング、いわゆる「旬」を意識することです。「旬」の時期は、おいしいだけでなく、栄養価も高くなり、また、生産量が多くなることで価格が安定する傾向があります。

摂取目標量について、果物はみかん2個と考えると、ちょっと意識するだけで達成できそうです! 旬にあわせて、おいしい国産の果物と野菜を、お得に味わいたいですね!

ここで、国産の果物と野菜を食べたくなる、食材の「機能性」についてお伝えします!昔から、「りんごやトマトが赤くなると医者が青くなる」と言われていますが、皆さんは、果物や野菜が持つ機能をご存じですか?

果物

野菜

おいしいだけではなくて、こんなに健康効果があったなんて! それぞれの摂取目標量を意識して、健康な食生活を実現したいですね! わたしたちが果物や野菜をたくさん食べることで、農家さんも喜んでくれるといいですね。

果実と野菜に含まれる栄養・機能性は世界でも注目されており、国連は2021年を「国際果実野菜年」に設定し、果実や野菜の魅力を広く伝えています。みずみずしく、味わい深い国産の果実と野菜を毎日楽しみたいですね。JAグループも、「国際果実野菜年2021」のオフィシャルサポーターとなっています。

テーマ⑤
農業の救世主? SDGsにもつながる「スマート農業」

近年、ロボットやAI(人工知能)をはじめとするデジタルの力が、労働力不足に悩む日本の農業を支えはじめています。そのような先端技術を生かした農業は「スマート農業」と呼ばれ、全国の生産現場で取り入れられています。
スマート農業は、人が時間と労力をかけて行ってきた作業を機械が短時間で行うことで、生産者の負担を減らすことに役立っています。また、生産者が長年をかけて培ってきた技術を数値化(見える化)することで、就農希望者に技術を伝える面でも大きな役割を発揮しています。

具体的な技術を挙げると、人工衛星やドローンのセンサー通信を活用する「センシング技術」があります。GPS情報を使ったトラクターなどの自動走行や、ドローンを使った農薬散布などです。他にも、農作物を栽培するための場所「圃場(ほじょう)」の温度や湿度を測定し数値化(見える化)することで、栽培データの蓄積が可能となり、農業経営の幅広い場面で活用されています。

日本におけるスマート農業の取り組み例

出典 : 農林水産省 「農林水産研究イノベーション戦略2020」(2020年5月)より一部抜粋。

農業でもDX(デジタル技術による変革)が着実に進んでいるんですね。 これからも先端技術を取り入れていくことで、新しい農業生産のカタチが生まれるかもしれませんね!

農林水産省は、2021年5月に食料や農林水産業の「生産力向上」と「持続性」の両立をイノベーションで実現するための「みどりの食料システム戦略」を策定しました。この戦略は、持続可能な食料システムの構築に向け、環境負荷の低減を推進するもので、デジタルの力を生産現場に浸透させて、必要以上の農薬や肥料の使用を減らすことなども掲げられています。
例えば、農薬や肥料の散布にドローンを活用することで、必要最低限の量で最大の効果を生み出し、環境負荷低減はもちろん、生産者の経営にもプラスになります。

みどりの食料システム戦略が目指すもの

出典 : 農林水産省「みどりの食料システム戦略〜食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現〜」(2021年5月)より一部抜粋。

スマート農業は、環境に配慮した農業の実現にもつながるんですね。わたしたちのほんの少しの意識や行動の変化が、未来の食料生産やSDGsの達成にもつながりそうですね! 

テーマ⑥
栄養たっぷり! わたしたちの食卓に届く牛乳

栄養たっぷりでわたしたちの食卓に欠かせない牛乳。一体どうやって食卓まで届けられるのでしょうか?
牛乳のもととなる生乳は、乳牛1頭から毎日、平均20〜30ℓしぼられます。これは、200mlのコップで約100〜150杯に相当します。生乳は栄養豊富である反面、傷みやすいため、流通には専用のタンクローリーやクーラーステーションといった整備が欠かせません。

こうした生乳の特性をふまえて、個々の生産者の輸送をまとめ、乳業メーカーとの価格交渉力を強化するなど、酪農家さんの経営の安定と消費者への牛乳・乳製品の安定供給を目的とした組織として、「指定生乳生産者団体」が重要な役割を発揮しています。

指定生乳生産者団体(指定団体)の役割

①生産者が生乳生産に集中できる!

乳業メーカーとの価格のやり取りや、販売を指定団体が担当してくれることで、生産者はつくる仕事に集中できます。

②まとめて運んでコストを削減できる!

鮮度が命の生乳を、指定団体が各牧場からまとめて運ぶことで効率化。輸送コストも抑えられます。

③量を調整して安定供給できる!

毎日生産量が変わる生乳ですが、指定団体が取りまとめ、乳業メーカーが欲しい量に調整して販売。安定して生乳を届けられます。

そして、酪農の生産現場では労働力不足が深刻な問題になっています。動物を相手にするため、健康管理や餌やり、乳しぼりなどの作業は、どんな日であっても欠かせません。近年は全自動の搾乳ロボットや給餌機、授精のタイミングをAIで判断するシステムなど、先端技術を活用した労力軽減が進められています。

畜産業で活躍している先端技術・機器の例

出典 : 農林水産省「aff 『食を支える技術の力』」(2020年4月)より。

指定生乳生産者団体が中心となって、コロナ禍で学校給食に提供できなかった牛乳を、長期間保存可能なバターなどの加工品にする工夫を行ったそうです!全自動で搾乳できるロボットがあるなんてびっくり! 酪農家の皆さんの体力的な負担も軽減できそうです。

牛乳は栄養バランスに優れ「準完全栄養食品」と呼ばれています。特にカルシウムが豊富で、例えばコップ1杯(200ml)で、日本人の成人女性に必要な1日あたりのカルシウム摂取目安の3分の1を補えます。
ほかにも、たんぱく質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンを含み、わたしたちが生活するために必要とする「5大栄養素」の貴重な供給源となります。
さらに、近年の研究では、免疫力の向上、病原菌への感染予防、血圧の改善など、病気になりにくい体質づくりに期待できることが明らかになっています。

栄養素をバランス良く含む牛乳や、チーズ・ヨーグルトといった乳製品を毎日の食事に取り入れ、健康的な体をつくり、維持することを心がけていきましょう。

わたしたちの食卓に牛乳が届くまでには、酪農家さんの大変な苦労と「協力」があったんですね。 コップたった1杯(200ml)でたくさんのカルシウムを摂取できるのはうれしいです。毎日の食事に牛乳や乳製品を取り入れてみよう!

テーマ⑦
世界が注目! 安全・安心で高品質な日本のお肉

日本の牛肉や豚肉が、世界から人気を集めていることを知っていますか? 特に、日本国内で長い時間をかけて品種改良されてきた「和牛」の認知度が高まるにつれ、国産牛肉の輸出量は、香港・台湾・アメリカ向けを中心に年々増加しています。

日本の牛肉の輸出量と輸出額

出典 : 農林水産省「令和2年度 食料・農業・農村白書」(2021年5月)より。

畜産農家さんはおいしい牛肉を提供するため、毎日、1頭1頭の体調などに合わせて飼育しています。牛の健康と成長に欠かせない粗飼料(乾草など)や、筋肉のもとになる成分を多く含む濃厚飼料(とうもろこし、麦、油粕など)をバランス良く与えることはもちろん、愛情をかけてブラッシングをしたり、声掛けなどの様々なスキンシップを通じて牛との信頼関係を築いたり、牛が過ごしやすい環境づくりに取り組んでいます。
ストレスが少ない環境で育てられた牛のお肉は、食肉市場の品評会などで高い評価を受け、ブランド化されて産地の活性化にもつながっています。

そして、牛肉に限らず国産の畜産物は、国が指定する飼養衛生管理基準(家畜伝染病の発生を予防するため、牛や豚などの飼養者が守るべき事項を定めたもの)に基づき、農場の防疫体制を徹底して管理されているため安全・安心です。

畜産農家さんが1頭1頭大事に飼育してきた結果、日本の牛肉は海外からも支持されるようになったんですね。約10年前と比べると、国産の牛肉の輸出量は9倍近くになっているなんて!

牛肉や豚肉には多くの栄養素が含まれています。例えば、筋肉や血、内臓など、体の基礎をつくるたんぱく質が豊富です。特に動物性たんぱく質は植物性たんぱく質と比べて、栄養価が高く、食事で補う必要がある必須アミノ酸をバランス良く含んでいます。さらに、疲労回復効果があるビタミンB1や、ビタミンの吸収などに関わる脂質も含まれています。

「お肉は脂質が多くて、カロリーが高いから太りそう」と思われがちですが、実は、脂肪を燃焼させるために重要な筋肉をつくるためにもお肉は大切なんです。牛肉には脂肪を分解するカルニチンが含まれ、ダイエット効果が期待できます。また、豚肉には運動能力を向上させたり、太りにくい体質づくりをサポートしたりするロイシンも多く含まれています。

※参考 : 日本食品標準成分表 2015 年版(七訂)

おいしいお肉で疲労回復の効果も期待できるなんて素晴らしい! 畜産農家さんが丹精込めて育てた、世界に誇る国産のおいしいお肉。たくさん食べて、畜産農家さんを応援していきましょう!