入賞作品紹介

最優秀賞
中高生の部
新潟県 樋口 美来 さん
応募方法:郵送

 しらす、高菜、わかめ。決して高級な物が入っているわけでは無いけれど、思いは沢山詰まっている。
 見渡す限り田んぼが広がる越後平野の中をおばあちゃんが握ってくれたおむすびを食べながら、通り抜けて行く。幼い頃から、習い事の行き帰りには必ず、車の中でおむすびを食べるのが、私と弟のルーティンだった。具材は決まって、しらすと高菜とわかめの混ぜ込みおむすび。毎日食べても飽きないこの味は、日本一だと思う。なぜこんなにも美味しいのだろう?と今まで何度も思い、おばあちゃんの作っている様子を見ても、すごい大技を使って握っているわけでもなさそうだった。
 そんなことを考えているうちに私は中学二年生になり、習い事を辞める日が来てしまった。習い事が終わり、車に乗ると「今日までようやりました。はなまるです」そう言っておばあちゃんは紫紺色の巾着袋からいつもより三倍の大きさはあるおむすびをくれた。「いつもありがとうございました。いただきます」感慨深いものを感じながらもラップを取っていると、「それも今日で最後だね」とおばあちゃんは悲しそうに言った。
 新緑が綺麗な五月、一面黄金色に輝く十月、雪が降り銀世界になる一月。四季折々、様々な田んぼの表情をおむすびを食べながら見てきた。十年間、その間におばあちゃんが握ったおむすびの数、約二千八百八十個。つらい時も、嬉しい時もいつもおむすびを食べていた。一つ一つのおむすびにどれだけの思いを詰めてくれていたのだろう。最後の日、あの言葉を言われた時、やっと分かった。
 おばあちゃん、折角の大きいおむすびは涙でいつもよりしょっぱくなってしまったけど、美味しかったよ。今度帰ったら次は私がおむすびを握るから楽しみにしていてね。

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