入賞作品紹介

優秀賞
中高生の部
鳥取県 本庄 晃都 さん
応募方法:WEB

 塩むすびが一番好きだ。塩と米だけのシンプルな塩むすびが、最高においしいと思う。  小学校3年生の時。「庭でお米を作ろう。」母が苗とコンクリートを練るための船を持って帰ってきた。田んぼの土とかいうものも。家庭菜園が趣味の母は、庭の一角に小さな畑を作って、トマトやなすやズッキーニ、タマネギなどをちょこちょこ育てていた。今回は、日当たりのいい駐車場に船を置いて、そこで稲を育てるという。当時の僕はよく分からないままに、お米が家でできるらしいことにわくわくし、小さな即席の田んぼにはりきって田植えをした。苗の背丈が伸びては喜び、川でドジョウやオタマジャクシを捕まえてきて小さな田んぼに放流し、毎日観察していた。大雨の時は僕らの小さな田んぼの住人があふれ落ちてしまわないよう兄弟とパトロールしては、たまった水をかき出した。夏の日照りでは田んぼが干上がってしまわないよう水を注ぎ足した。そうして初めての出穂を目にした時の、お腹からこみ上げてくる暑くてくすぐったくて叫び出したくなるようなあの興奮。そして迎えた稲刈りの日。兄弟3人でキッチンばさみを手に手に、「ザクっ」。思いの外手応えのある切り心地を、今でも覚えている。  収穫できたのは1リットルのペットボトル1杯ほどだ。籾をどうやってとって精米するのか。本やネット検索で調べ、空き瓶に入れて棒で突くという、なんとも原始的な行為を兄弟3人、汗をかきかき交代しながら遂行した。ざるで籾殻を飛ばし、手元に残ったお米は、両手に2杯分。あれだけの労力をかけて、これだけのお米にしかならないのだという驚き。農家の人って、すごいなぁと、単純に感心したのと同時に、自分たちの手で育てたお米の白さに、なんとも言えない思いを抱いていた。あの頃は、その気持ちが何なのか分かっていなかった。今なら、あの思いに「誇らしさ」と名付けることができる。僕ら兄弟の誇りの詰まったその白い粒を、兄が丁寧に研ぎ、僕ら双子が炊飯器のスイッチを押すという大役を担った。炊きあがったご飯は、ぴかぴかに輝いて見えた。そのままひと口ずつ食べて、何度も何度もかみしめた甘さ。残りは、母が塩むすびにしてくれた。たった1個の塩むすび。兄弟3人で順番にかじり合った。塩っ気とご飯の味わい。最高においしい。単純な言葉だが、最高においしかったのだ。  あれ以来、僕の一番好きなおむすびは、塩むすびだ。海苔も、具も、いらない。塩とご飯のシンプルな味わい。いろんな思い出が詰まったあの塩むすびと同じものは無いけれど、中学生になった今でも、母に「おむすびの具は何がいい?」と聞かれる度こう答える。「僕は塩むすび!」。

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