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広告特集
企画・制作 朝日新聞社メディアビジネス局
「ツナマヨでいいから。」 反抗期。いつもお弁当を用意してくれる母が倒れた朝、私は祖父にそう言い残して家を出た。その日は1日部活の日で、お弁当が必要だった。田舎なので学校までの道のりにコンビニもなく、朝早いのでスーパーも開いていない。いつも当然のように炊かれているご飯もなく、困り果てた私は祖父に、昼までにおにぎりを調達してくれるよう頼んだのだ。 「いってらっしゃい。」 祖父は困ったように笑いながらもそれを引き受け、私を送り出してくれた。よかった、これで安心だ。私はお昼を心配することもなく、大好きなソフトテニスに打ち込んだ。 しかし、お昼になっても祖父は来なかった。何をしているんだろう。定番のツナマヨがない店なんてないだろうに。お昼休憩が終わってしまう。私はイライラしていた。見かねた友人がお弁当を分けてくれようとしたその時、 「おーい」 と遠くで声がした。祖父だった。 「遅い。」 ありがとうとも言わず袋をブン取ると、私はすぐに中身を確認した。 「ええか?足りるか?初めて作ったで、おいしないかもしれんけど。」 なんと、袋の中には、ラップに包まれたまだ温かい手作りのおにぎりが4つも入っていた。 「え、作ったの?」 私が驚いていると、顧問が茶化しに来た。 「お、いいなあ。おじいさんの手作りか。どれ、一緒に食べてったらどうです。」 家族と一緒にいられるのを友人にみられるのが恥ずかしい一方、反抗期丸出しで追い返すのも格好が悪い気がして、私はしぶしぶ、木陰で祖父と共におにぎりを食べることにした。 「かたい。」 一言目の感想はそれだった。祖父の大きな手からすれば確かに小さなそのおにぎりは、強く握りすぎてとても良い食感とは言えなかった。そしてさらに、 「え、ナニコレ。」 中から出てきたのは、なんだか茶色い具。ツナマヨじゃないじゃん、と祖父を睨みつけると、祖父は不思議そうに首を傾げた。 「ナスはなあ、じいちゃんの畑のやつやぞ。味噌はばあちゃんの。肉は、冷蔵庫を勝手に使ってまったで、お母さんに言っとかんならんな。」 文句を言うつもりが、祖父の嬉しそうな顔を見ていたら毒気を抜かれてしまった。きっと、「ツナマヨ」という聞きなれない言葉の、音の感じだけ覚えていて、一生懸命作ろうとするうち、いつの間にか「なす味噌」になってしまったのだろう。そう思うと、なんだかおかしくなってきて、私は笑ってしまった。 「辛いんだけど。」 「ほうか、ちゃんとレピシ通り作ったんやけどなあ。」 「レシピでしょ。」 普段台所には入らない祖父が、私のためにご飯を炊いて、慣れない手つきでレシピを調べて、一生懸命作ってくれたのだと思うと、このかたささえ愛おしく思えた。 「午後、見てけば。」 「お、ええんか?」 「別に。で、一緒に帰ったらいいじゃん。」 素直に言えないありがとうを、一球一球に込めて、私は午後の練習を精一杯楽しんだ。 「やっぱじいちゃん、笑っとる顔の方が好きやなあ。」 「うざ。」 言葉とは裏腹に、久しぶりに笑って過ごす家族との時間に、心がホッと温かくなった。
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