日本赤十字社と関東大震災

災 害 救 護 の 歴 史 と

そ れ か ら 得 た も の

日本赤十字社

1923年9月1日に発生した関東大震災から、今年で100年をむかえる。日本赤十字社は、設立当時から戦時救護と災害救護のノウハウを積み重ね、日本、そして世界の助けが必要な人々に様々な形で手を差し伸べてきた。関東大震災を経て、災害時に必要なもの・ことは何か、その膨大な記録から、「備えよ」という声が聞こえてくる。

Interview

関東大震災の記録が
今に語りかけること

日本赤十字社と関東大震災

日本赤十字社と
災害救護の歴史

パリ万博に派遣されたことをきっかけに、「敵味方の区別なく、人の命を救う」赤十字がヨーロッパに存在することを知った佐野常民(さのつねたみ)(1822〜1902)らによって、1877年に日本赤十字社の前身となる博愛社が設立された。77年に勃発した西南戦争における負傷者救護で初めての活動を行い、88年に起きた磐梯山噴火災害における救護活動を皮切りに、以来146年間、日本赤十字社は戦時救護と災害救護を重要な使命と位置づけて組織的に取り組んできた。

1923年9月1日に発生した関東大震災当時、日本赤十字社はすでに、戦時救護・災害救護のノウハウを蓄積し、様々な事態に対応する救護員の養成や救護資機材を整備しており、延べ200万人超の被災者の救護に当たった。2024年3月28日(木)まで赤十字情報プラザ(東京都港区)で開催されている企画展「関東大震災100年 温故備震(おんこびしん)」では、当時の映像から、被災者を的確に手当する医師・看護師など救護員たちの様子を伺い知ることができる。さらに、全国の日本赤十字社の支部や病院に加え、活発に活動するボランティア組織の存在も大きかったという。こうした日ごろからの備えと全国的なネットワークが、関東大震災での救護活動の基盤となったのだ。

現在、日本赤十字社は47支部、91の赤十字病院におよそ500の救護班(医療従事者や事務員によるユニット)が登録されており、常日頃から訓練を重ねていつでも出動できる体制を整えている。その根底にあるのは「救いたい」という思い。人道支援の届かないところへ支援を届けることを100年以上前から使命とし、実践してきた。

9月1日、発災当日から翌年まで設置した皇居前救護所テント内の活動の様子

日本赤十字社にとっての
関東大震災とは

関東大震災という未曽有の大災害のなかで、日本赤十字社の果たした役割と存在感は大きかった。救護の最前線となった皇居前広場をはじめ、横浜や千葉を含む被災地に設置した救護所や赤十字病院などでの献身的な活動のほか、関東から全国各地に避難した人々を受け入れた日赤の支部によって多くの命が救われた。また、ケガの治療や補助が必要な被災者(病人、子ども、妊産婦、高齢者など)への支援だけではなく、公衆衛生の悪化を察知し、感染症対策に取り組んだことで、結果赤痢や腸チフスなどを最小限にとどめることができたと記録に残っている。

海外の赤十字社からの支援も迅速で効果的だった。関東大震災を経て、日本赤十字社は日ごろから既に行っていた災害への備えをより強固なものにしていった。『大正12年関東大震災日本赤十字社救護誌』は、およそ1,100ページにわたり関東大震災の被害状況や設置された救護所の様子、臨時病院や産院の活動報告などの詳細な記録が詰まっており、震災を目の当たりにし、救護に携わった人々の思いが今に伝えられている。

被害状況や避難所などの詳細な記録が残されている

関東大震災の経験から
今に生かされているもの

日本赤十字社の災害救護活動は、傷病者の治療だけでなく、救援物資の配布やこころのケア、義援金の受付、そして全国のボランティアによる活動など多岐にわたる。

東日本大震災では、世界各地の赤十字・赤新月社から寄せられた海外救援金を復興支援に役立てた。また、2017年からは災害直後の応急対応に加え防災教育事業を全国で展開している。自然災害の正しい知識を得て、危険から身を守る方法を学んでおくことで、いざという時自らが「気づき、考え、実行する」力を身につけ自身と大切な人の命を救うことにつなげるためだ。

今後起こり得る災害に備え、
日本赤十字社が伝えたいこと

首都直下地震や南海トラフ巨大地震などは、今後30年の間に相当に高い確率で発生すると言われている。重要なのは日ごろの「備え」。日本赤十字社の歴史は、救護活動の経験と反省をくり返し、備えを改善してきた歴史でもある。しかし、どんなに救護活動そのものが進歩したとしても、大災害時に救える命には限りがある。やはり一人ひとりが最善の行動をとることが最も重要なこと。「備え」は行動からしか生まれない。例えば防災について家族で話し合うなども大切な行動の一歩だろう。

関東大震災から100年というこの機会に、先人たちの残したものにあらためて思いをはせ、行動につなげてほしい。

日本赤十字社が使用していた救護機材

企画展「温故備震」について

「温故備震」に
込められた思い

テーマは、「『備えよ!』100年前の声が聞こえますか?未曽有の大災害で命と向き合った人々の記録を今ふりかえります。」というもの。

企画展を担当した大西智子さんは、「関東大震災の際に残された膨大な記録は、当時命と向き合った人の記録であり、災害時にどんなことが必要だったか、何が役に立ったかなどが詳細に記されています。そこから聞こえてくるのは、やはり『備えよ』という声なのです」と語る。

本企画展では、「温故知新(おんこちしん)」を言い換え「温故備震(おんこびしん)」と題した。この言葉には「関東大震災をふりかえることで、明日の災害に備えてほしい」という願いを込めている。

展示内容について

関東大震災時の災害救護の様子がわかる写真や資料、海外からの支援品などを中心に、当時の緊迫した災害救護の実態がわかる特別展示を行っている。当時と今では災害救護に関連する資機材や救護者のスキルは変わっているが、根底にある「苦しみの中にある人を救いたい」という変わらない思いがあることを、当時の資料から伺い知ることができる。

企画に携わった(左から)川田恭子さん、大西智子さん、横山瑞史さん
「温故備震」展示品の
写真はこちら

2024(令和6)年3月28日(木)まで 
(1~2月上旬まで工事のため休室)
事前予約制 火・水・木曜日 
10:00~16:30(12:30~13:30閉室)
赤十字情報プラザ 
〒105-8521港区芝大門1-1-3
(日本赤十字社 本社1階)
予約受け付け ℡03-3437-7580
(平日10:00~17:00)

WEB連動特別企画 関東大震災100年
「温故備震」

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