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いま知っておきたい
肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチン、どんな人が
接種すべきですか? Vol.2

東京大学医科学研究所附属病院
病院長
四柳 宏
新型コロナウイルスやインフルエンザとともに、これからの季節、特に注意したいのが「肺炎球菌」による感染症です。肺炎球菌とはどのような病気を引き起こす細菌なのか。どんな人が肺炎球菌ワクチンを接種すべきなのか。東京大学医科学研究所附属病院病院長で日本感染症学会理事長を務める、四柳宏先生に話を聞きました。

命に関わる「肺炎球菌感染症」の恐ろしさ

──「肺炎」とは、そもそもどんな病気なのでしょうか。

肺炎は日本人の死因の第5位(2020年)を占めており、年間約8万人もの人が肺炎により亡くなっています。

肺炎を引き起こす原因は、細菌やウイルス、カビ、寄生虫など様々です。こうした細菌やウイルスが口や鼻から体内に入り、喉から気管支を通って肺胞まで到達し、炎症を起こしている状態が「肺炎」です。特に多いのが、肺炎球菌をはじめとする細菌を原因とする細菌性肺炎で、細菌は肺の中で増殖し肺の構造自体を破壊しようとします。このとき、白血球などの免疫細胞が細菌やウイルスと“戦う”ため、熱や咳、痰、だるさなどの症状が表れます。

──「肺炎球菌」による感染症は、なぜ特に注意が必要なのですか。

市中で起こる肺炎の原因菌として最も多いのが「肺炎球菌」で、全体の2割ほどを占めています。数字上はそれほど多くないと思うかもしれませんが、この肺炎球菌が引き起こす病気「肺炎球菌感染症」の中には、肺炎のほかにも命に関わる恐ろしい病気があります。

肺炎球菌に感染した際に免疫の低下などの要因が重なると、血液中に細菌が侵入することによる「菌血症」や「敗血症」、脳や神経に細菌が達する「髄膜炎」などを発症することがあります。特に肺炎球菌性髄膜炎は予後が非常に悪いです。

そのほか、粘膜が弱い子どもの場合、耳管を通じて細菌が中耳腔内に侵入することによる「中耳炎」、副鼻腔が炎症を起こす「副鼻腔炎」などを発症することもあります。

高齢者や基礎疾患のある人は一層の注意を

──肺炎球菌感染症は、どんな人が気をつけるべきでしょうか。

肺炎球菌は人の鼻や喉に棲みついており、大人の3〜5%、子どもの30%程度がこの肺炎球菌を保菌しています。ただし、保菌者のすべてが肺炎球菌感染症を発症するわけではありません。例えば肺炎の場合、肺炎球菌が肺に到達した際に体が十分に“戦えない”、すなわち免疫が弱い状態の時にのみ発症します。

ですから特に注意してほしいのが、免疫機能が十分に発達していない乳幼児と、加齢により免疫が低下している高齢者です。特に高齢者は、肺炎による死亡者の95%以上が65歳以上というデータからも、重症化のリスクがいかに高いかが分かるでしょう。

それから、慢性の肺疾患や心疾患、腎疾患、肝疾患、糖尿病といった基礎疾患のある人や、がんに罹患(りかん)している人も免疫が低下しています。さらに、リウマチの治療や臓器移植などで免疫抑制薬を服用している場合や、免疫機能を担っている脾臓を摘出している場合も最大級の警戒をしてください。また、喫煙の習慣も肺炎球菌感染症のリスクを高めるといわれています。

これらの要素が一つでもあてはまる人はもちろん、二つ以上該当する場合はさらにリスクが高まりますので、一層の注意を心がけてください。

── 肺炎球菌感染症を予防するために、普段の生活でできることはありますか。

大切なのは高い免疫を保つことです。風邪をひきやすいのはどんな時かを思い浮かべると分かりやすいと思いますが、夜更かしをしたり仕事で無理をしたりして睡眠不足が続くと体調を崩しがちですよね。十分な睡眠とバランスの取れた食事、規則正しい生活を心がけましょう。

また、呼吸器を強くするという点で、適度な有酸素運動もおすすめです。胸をはって早歩きするだけでも呼吸器は鍛えられます。それから、丁寧な歯磨きは口内の菌量を減らすことにつながりますので、口腔内は意識して清潔に保つようにしましょう。

もちろん、手洗いやうがい、マスクの着用といった感染対策も引き続き行ってください。

肺炎にかかる人を一人でも減らすために

──肺炎球菌感染症には、肺炎球菌ワクチンがあります。その重要性をより多くの人に知ってもらう必要がありますね。

ワクチンで防ぐことのできる病気をVPD(Vaccine Preventable Diseases)といいますが、ワクチンを打たなかったばかりにVPDにかかって重い後遺症に苦しんだり、命を落としたりしたら、それは本当にもったいないことです。

「自分はまだ元気だから大丈夫」とおっしゃる高齢者もいますが、年齢を重ねると思いがけないことで生活は一変します。一度転倒しただけで大腿骨を骨折し寝たきりになってしまった、という話は皆さんも耳にしたことがあるでしょう。

肺炎が死因の第5位というデータからも分かる通り、治療の方法がある病気でさえ高齢者は命を落とす危険があるのです。その恐ろしさをご理解いただき、一人でも多くの人に肺炎球菌ワクチンを接種してほしいと思います。いま日本で接種できる肺炎球菌ワクチンは2種類あり、それぞれ特徴があります。接種を検討している人は、ぜひかかりつけ医に相談してみてください。

また、私たち医療者の側も、肺炎球菌ワクチンの重要性をより正確に認識し、しっかりと患者さんにお伝えしていく責任があると思っています。

インフルエンザとの同時接種も検討を

──インフルエンザが流行する季節ですが、インフルエンザと肺炎球菌のワクチンは、両方とも接種する必要がありますか。

最近、患者さんによく聞かれる質問ですが、私は「両方とも打った方がいい」とお答えしています。というのも、インフルエンザによって気管支粘膜が傷つき感染しやすくなっていたり、免疫が弱くなっていたりするため、インフルエンザの罹患後に細菌性肺炎を発症するケースが少なくないからです。

インフルエンザのワクチンはできるだけ全ての人に接種することを、そして、肺炎球菌感染症のリスクが高い人は肺炎球菌ワクチンも同時に接種することもおすすめしています。なお、いまは新型コロナウイルスのワクチンもあるので、接種のタイミングを迷う人もいるかと思いますが、コロナのワクチン接種から2週間が経っていれば、次のワクチンを打って問題ありません。インフルエンザと肺炎球菌の同時接種もぜひ検討してみてください。

──最後に、読者の皆さんにメッセージを。

新型コロナウイルスの感染拡大で多くの方が感じたと思いますが、ワクチンによって防ぐことのできる病気は、ワクチンで防ぐことが大事です。自分を守り、そして周囲の人を守るために、肺炎球菌感染症をはじめとする様々な病気について理解を深め、「もし自分や大切な人が病気にかかったらどんなことが起きるか」「どんなことに気をつけて生活すれば健やかな人生を送れるか」をいま一度考えてみてほしいと思います。

東京大学医科学研究所附属病院
病院長
四柳 宏
よつやなぎ・ひろし/ 東京大学医学部卒業。同大学医学部附属病院、聖マリアンナ医科大学での勤務を経て、2016年より、東京大学医科学研究所先端医療研究センター感染症分野教授。東京大学医科学研究所附属病院副病院長を経て、21年病院長就任。専門分野は、感染症内科学(主としてウイルス性疾患)、感染制御学、肝臓病学、消化器病学。
いま知っておきたい肺炎球菌ワクチン Vol.1 ワクチンの接種って、
なぜ必要なんですか?