臨床遺伝学センター
公共政策研究分野
一般社団法人日本難病・疾病団体協議会理事
レアディジーズビジネスユニットヘッド
パネルディスカッションの冒頭では、武藤香織教授、濱村美砂子から以下のようなショートスピーチがあった。
武藤 希少疾患を対象とした研究には、いくつかの倫理的課題があります。ゲノム解析によって様々な病気の可能性がわかりますが、こうした情報を適切に扱うための環境整備が重要です。米国では、患者さんのデータ提供のおかげで得られた知的財産を、患者さんらとどうシェアするか、リスクが大きい未確立な医療行為を、患者さんが試す権利があるか、などの議論も起きています。日本でも考えなくてはなりません。
希少疾患の場合、患者さんは診断がつけば、「診断を求める終わりなき旅」から解放されますが、すぐに「新たな治療法を模索する旅」が始まります。患者さんやご家族の生活基盤だけでなく、研究に関わり続けられる環境も構築することが、何より重要です。
濱村 製薬会社の仕事は、まずは患者さんとそのご家族のことを知ることから始まります。私どもは希少疾患患者に対するインタビューを数多く重ね、検査と発病、診断、治療、支援の過程でどのような問題があるかを調査しました。その結果、確定診断までに平均5〜7年もかかっており、診断に大きな課題があることが改めて分かりました。
私どもは治療薬の提供だけでなく、患者さんを取り巻く環境を改善することも、製薬企業の重要な使命だと考えています。これからもステークホルダーと連携しながら、患者さんとそのご家族に価値提供できる優れたパートナーであり続けたいと思います。
このような濱村のスピーチに対し、岡部さんは「治療薬の開発だけでなく、患者や家族を含めた環境改善への武田薬品の取り組みに、患者として力をいただいた」と語った。その後、4人のスピーチに対する感想や質問を踏まえ、さまざまな議論が行われた。
議論のなかで岡部さんは、「早期診断や早期治験への参加やゲノム治療について、患者はどう向き合えばよいのか」との質問を投げかけた。それに対し武藤教授は「意見が割れている場合はその原因を明らかにし、患者会としての問題意識をもって専門家に本音をぶつけて欲しい」、小崎教授は「正確な理解のためのベーシックな情報を、学会・研究者側が発信していく必要もある」と答えた。また濱村は「患者さんが正しい知識を学べる機会がさらに必要」と付け加えた。
その他、日本における遺伝カウンセリングの現状と課題、診断や治療のための科学的データをいかに集めて共有するか、患者に早く治療を届けることとリスクや患者を置き去りにしない配慮のバランスをどうとるか、という議論が展開された。
今回のシンポジウムは患者や患者団体、医師、研究者、企業が立場を超え、希少疾患の環境改善に取り組むステークホルダーとして提案・議論を行ったユニークな取り組み。今後の議論の礎となるとともに、ステークホルダー間の議論の重要性が再認識され、パネリストからも今後の継続を期待する声があがった。
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