新カリキュラムで学びを刷新 副学長が語る専修大学の次なる挑戦 専修大学 副学長 松永賢次 タレント 上田まりえ

専修大学では学長・副学長の就任に伴う新体制のもと、新カリキュラムの導入に向けて、全学部によるデータサイエンス教育の必修化や英語による授業、文理融合科目の整備が着々と進んでいる。そのリーダーとして現場を牽引する新副学長・松永賢次教授のもとを、上田まりえさんが訪れました。

全学部でデータサイエンス科目必修へ新体制が目指す新たな学びのかたち

松永賢次 学長
松永賢次 副学長

上田 副学長ご就任、おめでとうございます。副学長になられて今、主にどんなことに取り組んでいらっしゃいますか?

松永 2026年度の新カリキュラムスタートに向けての準備を進めています。

上田 具体的にはどのようなことでしょうか?

松永 主に三つあります。まずは数理・データサイエンスの分野において、全ての学部の学生が、必ず履修できる科目を設けます。これまで、専修大学では文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」のリテラシーレベルに関して、ネットワーク情報学部や経営学部、商学部でほぼ100%の学生が履修できるカリキュラムになっていました。他学部は選択科目でしたが、新カリキュラムでは「データサイエンス入門」という科目を設置し、全学部で全員がリテラシーレベルを修得できるよう準備を進めています。さらに、その上位レベルである「応用基礎レベル」の修得人数を増やすことも目指しており、AIの実習科目を準備中です。このほか、二つ目は英語による授業、三つ目は文理融合系科目のSTEAM(科学・技術・工学・芸術・数学)教育科目の充実です。

上田 AIの実習科目も全学部で履修可能になるのですか?

松永 希望する学生が履修できるよう準備を進めています。学生にとって魅力的な科目となり、積極的に履修してもらえるよう、内容や環境を整えているところです。

上田 私は専修大学在学中から、自分の専門領域だけでなく、さまざまな領域の学問を学ぶ機会が用意されていることが大きな魅力だと感じていましたが、選択肢が多くなるとかえって迷ってしまうという贅沢な悩みが生まれますね。では、英語の授業はどうでしょうか?

松永 近年は受験する際に、英検2級の合格証を活用している学生が増えてきて、多くの学生が4技能(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)で一定のレベルに達しています。しかし、大学でそのスキルを活かす機会が少ないという現状があります。

上田まりえ
上田まりえ

上田 高校までに学んだことを大学でさらに昇華させていく機会が必要だということですね。三つ目が「文理融合系科目」でしたが、具体的にどんな科目ですか?

松永 これは2年次からの科目として計画しており、「環境」や「AI」などのテーマを設け、文系的な視点も採り入れた内容を用意する予定です。現在、先生方の意見を伺いながらテーマ案を整理しているところですが、どれも言うは易し行うは難しで、実際に授業を実施していくとなると、とても大変です。

上田 多くの学生は授業を選ぶ際、自分の興味や関心に基づいて選択しますが、なかには「こちらの方が単位をとりやすい」といったことなどを理由に選ぶ場合もあるかと思います。先生方が一生懸命に調整しながら準備してくださっていることへの意識が足りていなかったなと、自分の学生時代を振り返って思うところがありますね。

松永 先生方は学生にいろいろな学びの機会を提供したいと考えていますが、開講数には限界もあります。私たちの仕事は準備した科目に学生たちが興味を持ち、履修し、成長していく姿が確認できたときにはじめて達成されると考えています。やはり、我々教員にとって一番うれしいのは、学生たちの前向きな反応なんですよね。

上田 学生の反応とは、具体的にどんな反応ですか?

松永 授業を受けてすぐ学生の変化が見られるということは限られますが、学生たちと接しているうちに「考え方が成長したな」とか、「行動力が変わったな」と感じることがよくあります。行動力が変わると自分で学べるようになるので、こちらから何か教えなくても主体的に動けるようになります。そんな学生の姿を確認できると、教員にとって大きな喜びになります。

先進的なIT環境を提供しつつAI時代の教育を考えていきたい

上田まりえ

上田 学問領域を広く学べる機会が用意されているのは、専修大学の強みだと思いますが、他にはどのような強みがあるとお考えですか?

松永 私の専門は情報学の分野になりますので、IT関連の調査データを見る機会が多くあります。そのなかで感じていることは、専修大学の学生のIT利用の量が非常に高いということです。例えば、学生はパソコンやスマートフォンを持ち込んでキャンパスのWi-Fiに接続していますが、現在、ピーク時には約1万台近くが繋がっています。これは、登校している学生数と近い数字で、同規模の他大学と比較しても多いと言えます。また、新システムを導入する際に他大学へ調査に行く機会がありましたが、IT導入に先進的な大学であっても、専修大学の方がより活発に利用されていると感じることもよくありました。

上田 これまでも専修大学ではデジタル社会の進展を見据え、データサイエンス教育について特に注力されていたと思います。その点について、松永副学長はどのような未来像を描いていらっしゃいますか?

松永 近年はAIの進化が目覚ましく、これまでデジタル化に縁遠かった分野にまでその波が押し寄せています。例えば、文学部や法学部の研究でもAIの活用が進んできていますが、一方でAIに頼り過ぎるのも問題だと思っています。研究や開発においても、AIではなく人間の方が適している場合もありますので、AIと人間の両輪で物事を考える視点が必要です。教育もその考えのもとに変わらなければいけないと考えています。AI時代において、人間は何ができるのか、何をすべきかという問いが社会全体で大きな課題になっており、大学教育も変わっていくでしょう。そのなかで、どのような教育や研究を進め、独自のカラーを見出すかによって大学の序列も変わる可能性があります。専修大学にとっても大きなチャンスになるかもしれません。

上田 私の前職は日本テレビのアナウンサーで、退社した2016年頃は「いずれAIがニュースを読む時代が来るから、アナウンサーは不要になるのではないか」ということがよく話題になりました。当時は「仕事を奪われるのでは……」と不安に感じることもありましたが、今では「これは人間ならでは!」ということがより明確になってきたように思います。例えば、ニュースを読む際に過度に感情をのせることは適切ではありませんが、悲しみや喜びといった感情は自然に表れますし、表情も情報の一つになります。こうした要素は「人間だからこそ」だと感じています。

松永賢次

松永 そういった問題意識は社会人の方が強いですね。学生はまだAIとの向き合い方を模索しており、私たち教員もまだ手探りの状態です。そんななかで、学生たちにも学年差を感じます。例えば、レポートを作成する際、上級生にはまだ「あまりAIを利用し過ぎてはいけない」といった雰囲気がありますが、下級生はもう積極的に活用しています。

上田 最近は就活の自己PRもAIで作成する学生が多いと聞いたことがあり、とても驚きました。自分の頭を悩ませながら作成すべきこともあると思うのですが…。

松永 私もそう思います。バランスが大事ですよね。基本的には自分が主体性をもち、AIに頼るのは構成を考える際に知恵を借りたり、添削に活用する程度が無難だと思います。やはり、ゼロからAIに作成させるというのはあまり望ましくないですね。

上田 AIの活用方法も進化していて、最近では悩みを相談したり、愚痴を聞いてもらって心を癒している人が増えているようですね。

松永 現代社会は悩みを抱えている方が多いですね。大学の学生相談室のカウンセリングも予約でいっぱいです。その領域をAIに頼ることの良し悪しはわかりませんが、心の悩みを抱えている学生がいることの原因については、真摯に向き合う必要がありますね。やはり、そういった点でもセーフティネットは重要だと思います。専修大学は歴史も長く、学生相談部門の経験もデータも豊富ですので、安心して利用してほしいです。

上田 私も小・中・高校時代までは、保健室の先生によく相談することがありましたが、大学の学生相談室を利用したことはありませんでした。知っていたらもっと積極的に活用していたかもしれません。では、最後に受験生や在学生に向けて、メッセージをお願いします。

松永 自分の可能性を信じてチャレンジしてほしいです。すぐに結果が出るわけではないと思いますが、我慢強くチャレンジしていくことはとても重要です。学生時代にそのような経験を積むことは自信につながりますし、専修大学もそのための機会や環境を提供し続けていきたいと思います。

松永賢次松永賢次(まつながけんじ)
専修大学副学長、ネットワーク情報学部教授、情報科学研究所長。1994年慶應義塾大学大学院理工学研究科管理工学専攻後期博士課程単位取得後退学。専門は情報学(情報システム)。1995年より専修大学経営学部講師。設置準備委員としてネットワーク情報学部の立ち上げに関与し、2001年よりネットワーク情報学部助教授。専修大学ネットワーク情報学部長(2017〜2021年)、情報科学センター長(2017年〜2023年)、数理・データサイエンス・AI教育運営委員会委員長(2022年〜2023年)を歴任。

上田まりえ上田まりえ(うえだまりえ)
1986年鳥取県境港市生まれ。専修大学文学部を卒業後、2009年に日本テレビにアナウンサーとして入社。2016年1月末、日本テレビを退社し、同年2月にタレントに転身。現在は、タレント、ラジオパーソナリティ、ナレーター、MC、スポーツキャスター、ライター、講師など幅広く活動中。2021年7月に「知らなきゃ恥ずかしい!? 日本語ドリル」(祥伝社黄金文庫)を上梓。同年9月、日本語検定委員会審議委員に就任。また、2025年2月、1stデジタルシングル「はじまる」をリリースし、歌手活動を開始。作詞も自身で手がけている。