
──今年6月にローンチした「STUDIO R330」ですが、プロジェクト自体はどのように始まったのですか。
R330は「essentials for a good life」をスローガンとする新しいライフスタイルブランドですが、最初からブランドをつくろうというビジネスの発想で始まったものではありません。ローラ自身がロサンゼルスに拠点を移し、生活環境を変えたことによって得た気付きや驚き、なかでもサステナビリティに対する問題意識をどうすれば多くの人に伝えられるだろう、ということがそもそもの発端なんです。
「地球にも人にも優しいことを、できることから少しずつ始めていきたい」という彼女の想いを伝えることがブランドにとって最大のミッションだと思っていますし、そのビジョンはチーム全体で共有しています。
──写真を多用したブランドサイトは、クールでいながらずっと眺めていたくなるような居心地のいい空間ですね。
たとえばブランドのアイデンティティともいえるのが、リサイクルポリエステルを使用したオリジナルの素材です。リサイクルの技術そのものは日本環境設計という会社にあったものですが、ワークアウトウェアの素材としては使用されていなかったものをローラ自身が試作段階から関わり、工場にも足を運んで一緒に開発しました。
またウェアの紙タグにはFSC認証(※)素材を100%使用していますし、商品配送用のボックスはカカオの皮を使った再生紙でつくられています。ただ、こうしたことをお勉強的に理解してほしいのではなく、あくまでカッコいいウェアを選んだらそれが環境にもいい商品だった、という伝え方が重要だと思っていて、サイトも絶対にカッコいいことが必須条件でした。写真のセレクトや配置についてもローラが細かくチェックしています。
※森林保護に配慮した製品であることを示す国際認証
──現在のラインアップはワークアウトウェアが中心ですね。
ローラの言葉を借りれば、体が元気になれば考え方もポジティブになって身の回りのことにもっと目が向くようになるから、ということです。
世の中が不安定な時期ですのでローンチのタイミングとして最適だったとは思いませんが、ステイホームの期間に多くの人が健康や自分の時間の過ごし方についてすごく意識的になったと思うので、その意味では背中を押されている部分もあります。
──今後もECサイトでの展開が中心ですか。
7月に大阪で実施した限定のポップアップストアは非常に好評で、その場だけでなくECサイトの売り上げも大きく伸ばしてくれました。他にはない素材を使っているという点で、実際に商品を手にとって確認できる場というのも大切なんだと実感しました。ただ中心はあくまでECサイトですね。
──そのサイトのプラットフォームとしてShopifyを選んだのはなぜですか。
第一にはローラのSNSフォロワー数を考えると、膨大なトラフィックにも耐えられるだけのシステムであること、そしてカスタマーにとっても管理側にとっても使いやすいサービスであることです。
いくつか選択肢を検討しましたが、Shopifyは管理画面が直感的に使いやすいことやアプリを使って簡単に機能拡張できることなど、サービスとして非常に洗練されていると感じました。僕自身は以前もECサイトを立ち上げた経験がありますが、もし知識や経験がまったくなくてもほとんど迷うことなく使えたんじゃないかと思います。
またLA発のブランドとして英語圏での販売は早急に開始する予定ですし、将来的には日本と海外の在庫状況を一元管理する必要が出てくるかもしれない。そうしたニーズに応える機能もShopifyにはそろっているので安心感があります。サービス側の事情で「それはできません」と言われることがほとんどない、という印象です。
これまでのところ、サイトの訪問者はローラのインスタグラム経由が最多ですが、実際に商品を購入された方が自分のツイッターなどで紹介し、そこからたどって来てくださるケースも少なくありません。その点でもShopifyは外部サービスとの連携がスムーズなのでありがたいですね。
──今後このサイトとブランドをどのように育てていきたいですか。
僕らにとってはブランドの「世界観」を伝えることが最重要テーマだと思っています。他にはない商品を扱っているので、なぜそれが生まれたのか、背景にある想いやストーリーも知ってほしい。「どこよりも安い」だけが売りのブランドなら、もっと安いものが現れた途端に人は離れていくでしょうが、世界観に共感してくださった人とのつながりはずっと続くはずです。その点で現在のサイトは、ここに我々のめざす世界観があります、と言えるものになっています。
今後はワークアウトウェア以外のカテゴリでも商品展開を計画していますので、「今まで考えたことがなかったけど、R330ならそれも使ってみよう」と思っていただけるだけの信頼関係を構築していけたらと考えています。

──3年前の日本参入以来、Shopify(ショッピファイ)の利用者数は右肩上がりを続けています。
そうですね、過去2年間はいずれも前年比100%以上の成長を続けています。特に今年の3月と4月は、Shopifyの利用を開始するマーチャント(事業主)が2カ月連続で前月比60%以上のプラスになったほか、初めてShopifyのサイトから商品を購入したという人もこの期間中に77%増えました。
──日本でそれほど支持されたのはなぜだと思いますか。
日本に限らず、Shopifyがマーチャントから選ばれる理由は共通しています。私たちのプラットフォームは非常にシンプルで、コーディングの知識はほぼ必要ありません。それでいて非常に多くのことが可能です。日本の場合は特にクレジットカードのほかコンビニ払い、代引き、各種モバイルペイまで決済方法が多岐にわたっていますが、Shopifyではすべて利用することができます。
また実店舗とオンラインの売り上げや在庫、顧客を一元管理することもできるほか、世界の主要言語と通貨に対応しているので、越境EC(海外展開)もすぐにスタートできます。しかもこうした機能がオプションではなく、最初からすべて利用可能です。
──STUDIO R330にとっては、インスタグラムなどSNSとの連動性が高いことも魅力のようです。
それも私たちの強みのひとつです。他にもグーグルやフェイスブック、あるいは楽天市場のようなマーケットプレイスとも私たちが直接契約をしているので、マーチャントはShopifyのサイトを通じてそうした外部サービスとECサイトをスムーズにつなぐことができます。
──企業としてサステナビリティに配慮していることも選ばれる理由でしょうか。
それもあると思います。たとえば最近リリースした「カーボンオフセット」アプリは、マーチャントが商品を発送する際に移動距離を計算し、環境への負荷を可視化します。それに対してマーチャントがフィーを払うことを選択すると、発生したカーボンをオフセットする取り組みに貢献できるんです。Shopifyのマーチャントには自分たちの哲学をしっかりと持ったブランドが多いので、サステナビリティについても意識が高いのかもしれません。
──ShopifyでECを成功させるために大切なことは何でしょう。
日本のカスタマーには、他の国にはない特徴があります。まずECサイトを訪れてから購入までにかける時間が長いこと。これは商品説明やレビューをじっくり読み、他の商品と比較検討したりするためだと思います。さらに1回の購入金額が大きいこと。そして1度購入すると同じブランドから何度も購入する傾向があること。つまり、ブランドロイヤリティが非常に高いということです。
こうしたカスタマーと信頼関係を築くために大切なことは、自分たちの世界観をいかに伝えるかだと思います。Shopifyでは簡単にサイトのテーマを変更したり、好きな場所に画像や動画を表示したりできるので、製造工程や素材のこだわりなど、ブランドが一番届けたいメッセージを届けることができます。
──これまでECの経験がない、もしくはビジネスそのものをShopifyでスタートする人でも成功は可能でしょうか。
もちろん。たとえば私は日本の陶磁器や刃物、キッチンウェアなどが大好きで、地方へ行くとつい買いすぎてしまいますが(笑)、こうした日本の素晴らしい手工芸品は世界中にたくさんのファンがいます。しかし国外では買う方法がありません。
今年、栃木県で例年開催されている益子焼の展示販売イベントが、新型コロナの影響で中止になってしまいました。しかし私たちが協力して1週間でサイトを立ち上げ、同様のイベントをオンラインで実施したところ、通常の4倍の売り上げがあったそうです。私も期間中に6回も購入してしまいました(笑)。この成功でイベントは来年も開催できるようになっただけでなく、おそらく地域の小規模の工房が存続するための手助けもしたでしょう。
Shopifyは、個人の小規模なストアから世界規模のエンタープライズまであらゆるビジネスに対応できます。しかし私たちが本当にやりたいのは、小さなビジネスが大きく成長していくプロセスを応援することであり、それができるのがこのプラットフォームです。Shopifyなら、成長に限界はありません。
