地震大国といわれる日本では、もしもの場合の非常食などの備蓄や日頃からの避難訓練など、大きな災害から身を守る備えがスタンダードになりつつあります。しかし、被災後に元の生活を取り戻すための備えについては、その必要性がまだ十分浸透していないことが懸念されています。火災保険では補償されない地震による損害をカバーし、生活再建に役立つのが「地震保険」。その価値をもっと広めるために、俳優の長谷川博己さんと日本損害保険協会会長の金杉恭三さんが、フリーアナウンサーの貞平麻衣子さんの進行で語り合いました。

国と民間が協力して
誕生した地震保険

貞平 長谷川博己さんは、日本損害保険協会の地震保険広報キャラクターとして、テレビCMやポスター、新聞広告などに出演されていますね。地震保険の必要性をはっきり訴えられていて、大変印象的です。

金杉 地震保険は、政府と損害保険会社が共同で運営している公共性の高い保険です。CMには、好感度が高く信頼感のある方がふさわしいと考え、長谷川さんを起用させていただきました。CMを見て一人でも多くの人が地震保険の必要性を知ってくれることを期待しています。

長谷川 光栄です。日本は地震がとても多い国で、地震への備えはすべての人にとって重要だと思います。大切な情報を伝える役目ですので、身が引き締まる思いです。

貞平 そもそも、地震保険はいつ生まれたのでしょうか。

金杉 きっかけは1964年の新潟地震です。地盤の液状化現象が起こり大きな損害をもたらしました。当時、大蔵大臣だった田中角栄氏が、「震災国にふさわしい損害保険制度が必要」と強く主張し、地震保険創設の機運が高まったのです。

長谷川 それまでは、地震保険はなかったということですか。

金杉 はい、2年後の66年に「地震保険に関する法律」が成立して地震保険が誕生しました。

長谷川 知りませんでした。地震保険は、その成り立ちから国が関わっていたんですね。

金杉 ひとたび地震が起こると損害を受ける範囲が大きいので、莫大(ばくだい)な保険金が必要になります。しかも、いつどこでどのくらいの規模で起こるか、予測が困難です。損害保険会社からすると、商品にしづらいのです。ですから、地震保険の保険金は、損害保険会社と政府が責任を分担して支払うことになっています。

被災してしまった場合に
必要な費用を知っておく

貞平 長谷川さんは、地震に備えて対策をとっていることはありますか。

長谷川 やはり食料や地震グッズを備えていることと、以前から地震保険に入っております。

貞平 ご家庭でも停電や断水への備えや防災グッズが普及するようになりました。一方、被災後に必要なのが経済的な備えですよね。

長谷川 確かに……。報道では倒壊したり液状化で傾いたりしたたくさんの家屋を目にしました。家が壊れてしまったら、もとの生活に戻るのは本当に大変だと思うのですが……。

金杉 内閣府の発表によると、東日本大震災で全損被害にあった住宅の新築費用の平均は2500万円だそうです。壊れた家の住宅ローンがまだ残っていた人は、建て直した家の住宅ローンとの二重ローンになってしまうこともあります。

長谷川 平均でもそんなにかかるんですね。国から支援はしていただけるんですか?

金杉 国の被災者生活再建支援法で受け取れる支援金は、最大300万円です。これだけでは被災後の生活再建に十分とは言えないでしょう。地震保険は、火災保険にセットして加入する必要があり、保険金額は火災保険の保険金額の30〜50%と決まっています。建物で5000万円、家財で1000万円が上限です。

貞平 保険金は、家を建て直すための費用としてのみ支払われるのですか。

金杉 いえ、住宅の建て替えや修繕だけでなく、住宅ローンの返済や生活費、引っ越し費用など、使い道に制限はありません。被災された方の生活再建に役立てられています。

長谷川 それは安心ですね。

地震保険の補償対象

地震保険は、地震、噴火、またはこれらによる津波を原因とする損害(火災、損壊、埋没、流失)に対して保険金が支払われます

地震リスクの高さによって
保険料が設定される

貞平 昨年6月の大阪府北部地震の時は、95年の阪神・淡路大震災の時よりも格段に多くの方に地震保険金が支払われたというデータがあります。20年以上を経て、地震保険に加入される方が増えたのですね。

金杉 地震保険の加入状況は、火災保険への地震保険付帯率で表されます。付帯率は年々伸びていて、最新データでは65%(グラフ参照)ほどになりました。しかし、地域によって差があり、直近に大きな地震被害を受けた地域や、南海トラフ地震が想定される地域は比較的加入率が高く、それ以外の地域にはばらつきがあります。日本全国、どこにでも地震のリスクはありますので、なるべく多くの方に加入していただきたいと考えています。

地震保険の補償対象

※2000年度以前の付帯率のデータはありません。※損害保険料率算出機構のデータをもとに作成しています。

貞平 どこにでもリスクはあるのですが、地震保険に加入していない人の中には、保険料が高い、という声があるようです。

金杉 地震保険料は、法律で「できる限り低いものでなければならない」と定められており、将来の保険金支払いのための原資と、募集のために必要な経費のみで構成されています。比較的保険料が高い地域というのは、その分地震リスクが高いとご理解いただければと思います。もちろん、保険料が安い地域にも地震が発生するリスクはあります。

貞平 地震保険料は、地域によって違うんですね。

金杉 はい。都道府県ごとにリスクに応じた地震保険料が定められています。とはいっても、建物の免震・耐震性能に応じた保険料の割引制度や、保険料の一定額を所得から控除する地震保険料控除もあるので、負担を軽減して加入しやすいように工夫もされています。

フリーアナウンサー貞平麻衣子さん

長谷川 地震の備えというと、まず食料の備蓄や防災グッズが浮かび、被災後の生活再建までなかなか考えが及ばない人が多いと思います。自分の大切な生活、大切なものを守るために何が必要か、考えてみることが大切ですね。

金杉 どこでも地震の可能性があること、被災後の生活再建には多額の費用がかかること、そして、火災保険では地震による火災や家屋の倒壊は補償されないので、地震保険が必要であることを、もっと浸透させていきたいですね。

長谷川 この広報キャラクターの仕事を通して、私自身も地震の備えについての理解が深まりました。今日はありがとうございました。

かなすぎ・やすぞう
1979年早稲田大学政治経済学部卒業。大東京火災海上保険(現あいおいニッセイ同和損保)入社。執行役員などを経て2011年に常務執行役員。14年MS&ADインシュアランスグループホールディングス取締役執行役員。16年からあいおいニッセイ同和損保代表取締役社長、19年から日本損害保険協会会長。
はせがわ・ひろき
1977年生まれ。東京都出身。映画『シン・ゴジラ』『散歩する侵略者』『半世界』など話題作に出演。18〜19年NHK連続テレビ小説「まんぷく」主演、20年にはNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で主役の明智光秀を演じる。