[パネルディスカッション]
「キャッシュレス最新状況~還元制度開始から1カ月、そしてその次へ~」

経済産業省 商務・サービスグループ キャッシュレス推進室長 津脇慈子さん
ハフポスト日本版 編集長 竹下隆一郎さん
フォースタートアップス株式会社 社長室 鈴木聡子さん

「食わず嫌い」を解消し、キャッシュレスの普及を

竹下 キャッシュレス化を取り巻く最新情報を教えてください。

津脇 キャッシュレス化は、消費者にとって簡単に買い物ができたり、お金の管理ができたりとメリットが多いほか、盗難リスクも減らすことができる可能性があります。また、店舗にとっても、現金管理の手間が減り、一層増えるインバウンド需要にも対応できるなど、双方にとって便利なものです。しかし、食わず嫌いの方が多いようで、日本での普及率は、24.1%に留まります。政府としては、2020年中に40%程度、そして将来は80%を目指したいところです。ちなみに、韓国では96%。そこで、食わず嫌いを解消するために、キャッシュレスポイント還元事業を行っており、加盟店にてキャッシュレスで買い物すると、5%から2%のポイント還元が受けられます。

竹下 私も韓国やアメリカなどに出張でいくと現金はほとんど使いません。タクシーの代わりに利用するUberや、コーヒーショップなど、クレジットカードでことが足ります。店員のいない無人コンビニも体験しました。いま日本に年間3000万人くらいの外国人が訪れますが、7割くらいの方が、キャッシュレスが普及していたら、もっと日本で消費すると考えているようです。これは、日本の経済やビジネスにとってチャンスとなると思います。

鈴木 私は子どもが生まれた時にキャッシュレスの便利さを痛感しました。スマートウォッチを使えば、子どもを抱えたまま改札を通過でき、とてもスムーズです。それ以来、個人として様々な決済アプリを試しています。最近は、結婚式のご祝儀もアプリで事前に相手に贈れますし、「投げ銭」というサービスで好きなアイドルを応援することもできます。お金のやり取りや価値などが変化し、新たなコミュニケーションとなっている気がします。

キャッシュレスという新たなコミュニケーションに期待

竹下 そもそもなぜ、政府はキャッシュレス化を推進しているのですか?

津脇 第一に、消費者にもお店の人にもメリットがあるため、社会インフラとして必要だと考えています。次に、お店の方が消費者の皆さんに、より良い消費体験や商品を提供するためには、消費者と接点を持つことが必要なのですが、それのためにはキャッシュレス化が不可欠です。最初に接点が持てれば、その後一人ひとりのニーズに合ったサービスを提供できます。つまり、データの利活用です。そこでキャッシュレスを起点に、社会産業を変えていくというのが一番の目的です。

鈴木 キャッシュレスと言われると新しい感じがしますが、プリペイドカードやクレジットカードもキャッシュレスです。そう考えたら、生活に浸透という意味では、すでにキャッシュレス社会はスタートしています。ただ、今は財布をふたつ持っている感覚で、スマートフォンであればコンビニ、クレジットカードはデパートと、別れてしまっています。

竹下 買い物履歴などの個人データの利活用は、生活が便利になる面もありますが、悪用もできてしまいます。そのため、情報をどのように利活用するかが重要です。

津脇 そうですね。より便利になるのはいいけど、情報を取られることの気持ち悪さという天秤のバランスをどうとるかが大切です。こういうサービスに繋がるという利便性を分かりやすく伝えていかなくてはなりません。インバウンド消費をはじめ、消費者に価値を伝え、新たなコミュニケーションの形として認識していただきつつ、インフラを整備していきたいと思います。

鈴木 キャッシュレスは、人口減少による人手不足といった社会課題を解決する手段として期待されています。今後の日本経済を支えるプロジェクトになるのではないでしょうか。

企画・制作

朝日新聞社メディアビジネス局