[オープニングスピーチ]
経済産業省 商務・サービス審議官 藤木俊光さん

今年2019年は、キャッシュレス元年といわれています。新聞やテレビで取り上げられる機会が増え、キャッシュレスのツールがどんどん世の中に出てきています。まさにキャッシュレスに対する関心が非常に高まっている状態ではないかと思っています。

10月1日から私どもがはじめましたキャッシュレスのポイント還元制度。おかげさまで、11月1日現在、全国の中小企業のみなさま、64万店にご参加いただいています。11月11日には73万店となり、まだまだ増えている状態です。お客様にも1日平均すると270億円ほどを使っていただいており、ポイント還元額にするとだいたい1日10億円をみなさまにポイントとしてお返ししている形になっています。

もちろんこれで十分というわけではありません。この事業を通じて一人でも多くの国民のみなさまにキャッシュレスを体験していただき、「ああ、便利だな」と感じていただきたいと思いますし、お店のみなさまにも、「今まで使っていなかったけどひとつ試してみようじゃないか」と考えていただくきっかけになれば良いと思います。これからも中小のお店へのPR、それから消費者のみなさまには、たとえば使い方講座のような形を通じて、全国でしっかりとキャッシュレスを進めていきたいと考えています。

私はキャッシュレスには3つの可能性があると思っています。1つは圧倒的に時間とコストが小さくなることです。お店では、たとえばお釣りのための小銭を用意しなくてすみます。また一日営業が終わった後にレジを閉めて、一円でも間違いがないかチェックして、終わったら大事に金庫にしまう、これらの手間も省けます。消費者のみなさまにしても財布が小銭でパンパンになるような経験をしなくてすむ。こういったメリットがあります。

2つめは国境を越えるということ。いま日本は世界中から多くの人が訪れる国です。日本人の多くの方が海外旅行へ出かけた経験があると思います。これまでは海外に行くと、その国のお金にいちいち両替をしなくてはならなかったですが、いまは多くの人があまり両替をせず、クレジットカードなどキャッシュレスで済ませています。これから日本がますます国際化していき、海外のお客様を多くお迎えするなかで、キャッシュレス化はとても大切なことだと思っています。

3つめはいつ、どういうものにお金を使ったのか、データが残ること。このデータを活用すればいろいろなことができると思っています。すでにみなさまのなかにも家計簿サービスに結び付けている方がいらっしゃるかもしれません。あるいは子どもにお小遣いをあげた場合も、キャッシュレスで履歴を見れば何に使ったのかすぐ分かってしまいます。またこれはビジネスにも大きな影響を及ぼします。お客様がどういうものを、どういう頻度でお買い求めになるのか、そういったことが分かるわけです。これはビジネスの在り方やお店の運営の仕方が大きく変わってくるのではないかと思います。

もちろんキャッシュレス社会では、セキュリティや個人情報の保護といった今までとは違う意味での防御、保護を高めていく必要はあると思います。ただそういうものを乗り越えて、このキャッシュレスのツールをどう使っていくか。そしてライフスタイル、ビジネススタイルをどう変えていくのか。どうしたらよりよい社会につなげていけるのか。そういったことを我々は議論していかなくてはいけないと思っています。

冒頭でキャッシュレス元年といいました。元年とはスタートであり、つまりまだまだ未開拓ともいえます。我々がこれからチャレンジしなくてはいけない課題はたくさんあります。ぜひ今日のイベントを通じて、これから我々がどういうことにチャレンジしようとしているのか、キャッシュレスにどういう可能性があるのか、そういったことについて知り、そして新しい未来を拓く機会にしていただきたいと思います。

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朝日新聞社メディアビジネス局