キャッシュレスが日本社会を救う!?~意外と知らないキャッシュレスにすべき理由~

海外と比べても現金志向が強い日本。現在、国をあげてキャッシュレス化が進められていますが、“自分は現金で十分! キャッシュレスは不要”と考えている人も少なくないようです。でも少子高齢化が進むこれからの日本社会を維持するには、キャッシュレス化は不可欠と言われています。そこでキャッシュレス化は私たちにどのようなメリットがあるのか。なぜ推進すべきなのか。キャッシュレス社会の実現を目指し、様々な取り組みを行っているキャッシュレス推進協議会の福田好郎さんに、話を聞きました。

現金管理の手間やコストを抑え、社会を効率的に

──まずはキャッシュレス推進協議会が設立された目的と、活動内容を教えてください。

福田さん:私どもの協議会は2018年7月に、国内外の関連団体と関係省庁が連携し、業界を横断してキャッシュレス社会を実現するための中立的な推進役として設立されました。キャッシュレス実現に向けたロードマップを作成し、消費者や事業者の意識調査や各種ワーキンググループ、各地での説明会などを実施しています。

説明会には2種類あり、一つは地域の商工会議所などに呼ばれ、地元でお店を経営する人にキャッシュレスの導入をすすめるものです。もう一つは消費者に対して、不安を払拭(ふっしょく)したり、ポイント還元事業の説明をしたり、なぜキャッシュレスを推進すべきなのかといった話をしたりしています。

──キャッシュレスを推進すべき理由は何ですか?

福田さん:日本は少子高齢化により、これから働き手が不足します。地方ではとくにそれが顕著です。そこで少ない働き手でも支えられるよう、社会を効率化する必要があるのです。そのうえでキャッシュレス化が、非常に有効であることを説明させていただいております。

例えば現金決済の場合、お店を営んでいる人は毎朝、おつりを用意するため銀行へ行き、手数料を払って両替しなくてなりません。営業終了後は売り上げと現金の残高を照らし合わせ、夜間金庫へ現金を預けに行く必要があります。現金には紛失や盗難の恐れもあります。キャッシュレス化すれば、このような手間やリスクが一切なくなります。完全キャッシュレスのお店の場合、現金のお店で1時間かかる作業が、ほんの数分で終わると言われています。現金の使用は、控えめな試算でも年間1.6兆円もの社会の負担となっており、このコストをなくせることも大きなメリットです。

またキャッシュレスは、単なる現金の代わりではありません。キャッシュレス化によって、現金ではできなかったことができるようになるのです。例えば、キャッシュレス決済によって蓄積されたデータをマーケティングや商品開発などに活用できます。今後、5Gが始まって遠隔医療が普及しても、支払いのために病院まで行かなくてはならないのでは不便です。キャッシュレス化によって、初めて遠隔医療も実現できるのです。

キャッシュレスがことさら危険なわけではない

──お店や社会全体にとってのメリットは大きいのですね。消費者の反応はいかがですか?

福田さん:説明会に参加される方は現役をリタイアしたシニアや主婦が多いのですが、みなさんまだまだキャッシュレスにはなじみがないようです。例えば「電子マネーを持っている方?」と聞くと2、3人しか手を挙げませんが、「Suica(スイカ)を持っている人?」と聞くと全員が手を挙げます。Suicaで日常の買い物ができることをご存じない方もいるのです。またセキュリティーや不正利用について、不安を持っている方も多いようです。

──セキュリティー面の不安の声には、どのように答えますか?

福田さん:日本における2018年の現金関連の犯罪、強盗、窃盗、詐欺による被害額は760億円、現金の落とし物は年間191億円もあります。それに対してクレジットカードの不正利用は年間235億円、最近あったペイサービスの不正利用による被害額は4000万円弱から1〜2億円といったところ。キャッシュレスがことさら危険なわけではありません。また現金の被害はまず戻りませんが、キャッシュレスの被害はほとんど全額戻ります。またスマートフォンにロックをかけ、同じIDとパスワードを使い回さない、利用明細をよく確認するといった努力で、かなりのリスクは防げるといったことをお伝えしています。

──メリットを伝え、不安を払拭することで、キャッシュレスを使いたいという人は増えますか?

福田さん:半分くらいの方は興味を示します。でも半分の人は、現金でとくに困っていないので、あまり興味を示しません。ただ、キャッシュレスの推進は、自分のためだけではなく、社会全体のために行うものであることもぜひご理解いただきたいと思います。キャッシュレス化が進めば、お店で働く人の労働時間は大幅に削減できます。地方の人手不足は深刻で、今のままでは多くのお店が維持できなくなります。キャッシュレス化を進めれば、店主は長時間労働をしなくて済むようになるし、人員も削減できます。また銀行の経営環境が厳しくなるなか、今後、あまり使われていない地方のATM(現金自動出入機)などは撤去されていく可能性があります。キャッシュレス化が進めば、そのような事態になっても困りません。

まずは身近なサービスから気軽にお試しを

──国は2025年にキャッシュレス40%の目標を立てていますが、最終的には現金ゼロを目指すのでしょうか。

福田さん:キャッシュレス40%は現金とキャッシュレスを併用する社会で、あくまで通過点です。最終的には現金ゼロとまで言わなくても、80%くらいにする必要があります。ただ急激にキャッシュレス化を進めた海外の国では、現金が使えないことへの不満が高まる状況も起きています。日本では高齢者や障がい者、小さなお子さんも安心してキャッシュレスが使える環境を、徐々に整えていくべきだと考えています。

──最後に、まだキャッシュレスを使ったことがないという読者にメッセージを。

福田さん:現在、政府のポイント還元に加え、各社がお得なキャンペーンを繰り広げ、2020年9月からはマイナンバーカードによるポイント還元も始まります。ぜひこのようなキャンペーンをきっかけに、一度キャッシュレスサービスを使っていただきたいと思います。そうすれば、きっと便利さや生活の変化を体感していただけると思います。サービスの種類が多くで何を選べばよいのか分からない、という人もいるかもしれません。でも自分に合わなければ、すぐにやめればよいのです。まずは自分の生活となじみがあったり、親しみがあったりする会社のサービスを、気軽に試していただきたいですね。

プロフィール

一般社団法人キャッシュレス推進協議会 事務局長(常務理事) 福田好郎さん
ふくだ・よしお/慶応義塾大学卒業後、国家公務員、野村総合研究所を経て、2007年にNTTデータ経営研究所入社。決済領域やオープンAPIなど金融分野を担当するコンサルタントとして活躍する。18年、キャッシュレス推進協議会常務理事に就任。

企画・制作

朝日新聞社メディアビジネス局