「キャッシュレス」が日本の社会課題解決と経済発展に寄与する!

千葉商科大学で「キャッシュレス」をテーマとした講義が、商経学部の橋本隆子教授が担当する「情報メディア論」の一部として開講されました。講師を務めたのは、全国的なキャッシュレス普及の推進を目的に、2018年に産官学が連携して設立した「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」の鈴木麻友さん。以下、鈴木さんによる講義の概要を採録します。

キャッシュレスって何?

日本では、2014年ごろから外国人旅行者の支払いをスムーズにするため、クレジットカード導入が進められました。続いて、「未来投資戦略2018」のなかで、10年後までにキャッシュレスによる支払の比率を、40%まで引き上げるという目標が掲げられました。

そもそも、「キャッシュレスとは何か」という疑問が生じますが、「物理的な現金ではなく、デジタル化された価値の移転を通じて活動ができる状態」と定義されています。その手段は、スマートフォンアプリを使ったコード決済、鉄道会社、企業、通信キャリアなどが提供する電子マネー、クレジットカードなど、数多く存在します。

また、私たちにとって支払いをするという行為は、お店での支払いを一番に思い浮かべますが、企業間取引や、納税や年金受給など、政府と個人、または政府と企業、さらには個人間の取引などにもキャッシュレスによる支払シーンはとても幅広いのです。

日本のキャッシュレス決済比率は21.4%

日本の個人消費におけるキャッシュレス決済比率は21.4%で、世界各国と比較して低い状況です。その理由として考えられるのは、店舗での導入が進まず、消費者に心理的なハードルがあることですが、特に店舗が導入する際に障壁となるのは、端末機器やネットワーク環境など導入コストや、決済手数料の負担といった費用面の負担が大きくなっています。また、決済事業者の口座を経由して入金が行われるため、売り上げから入金までタイムラグが生じるというビジネスモデルにも課題があります。

消費者にとっても、どこでも確実に利用できるのは現金のみというのが実情で、場所によって決済手段を使い分けることは負担となります。また、ATMが至る所にあり、すぐに安全に確実に現金を引き出せるため、現金の方が便利という事情もあります。さらに、キャッシュレスで支払うと、浪費しそうで怖いという声もまだまだ聞かれます。

キャッシュレス推進がなぜ必要なのか?

なぜ日本でキャッシュレスの普及を推進する必要があるかといえば、少子高齢化といった問題を抱えているからに他なりません。2060年、20~64歳の生産労働人口が1990年と比べ、約半分にまで減少します。そこで、少ない労働力でより大きな効果を上げられるよう、社会全体の効率化が求められます。そのために重要となるのがキャッシュレス社会の実現です。

現金を扱うには多大なコストと労力がかかっています。お店は、釣銭を備えるために銀行に両替に行ったり、閉店後にレジ締め作業を行ったり、口座に入金したりと、大きな負担となっています。こうした業務がキャッシュレス化により不要となるため、その分のコストや時間をサービス向上に充てることも可能となります。

また、どういう属性の人がどんな消費行動をしているか、データが蓄積されるため、そうしたデータを利活用し、新たな商品やサービスの開発につなげることができるという期待もあります。

キャッシュレス普及のためにより安心安全な環境を

キャッシュレスを安心して使うためには、スマートフォンにロックをかける、アカウント情報を使いまわさない、定期的に利用明細を確認するといった自衛策が有効となります。また、万一不正利用された場合、過失が無ければ多くの場合保障されます。認証についても二要素による認証を導入するなど各事業者がセキュリティ向上に努めています。

また、家計簿アプリなどを活用することで、支払い履歴をデジタル化できるため、支出をコントロールしやすいといえます。目の前に数字となって表れるため支払いをしたという実感もあります。

政府もコード決済のためのQRコードを共通化することを検討したり、昨年10月からはキャッシュレスによる支払に対してインセンティブを与える還元事業を行っています。最近ではキャッシュレスのみの支払いに限定したお店や、セルフレジなども増えてきています。キャッシュレスは私たちのライフスタイルを変化させるものであり、今後会計はレジでするという概念が無くなり、まさに生活の一部になるかもしれません。

知識として得たキャッシュレスを自分事として考えることが大切

講義後、受講した学生からは次のような感想がありました。「完全キャッシュレス化の店舗が既に存在しているなど、社会が大きく変わりつつあることを知りました。そうした状況にあわせて、今後使える範囲で今使っていない決済手段についても実際に試してみたいと思いました。(堤慶太さん/経営学科・3年)」、「大学でもキャッシュレスが進んでいる事例があることを知りました。私自身ほぼクレジットカードで支払っていて、いまは現金を使うのが面倒になっています。キャッシュレスはポイントもついてお得なので、やはり今後もっと国が支援して広く導入されるといいと改めて感じました。(細田佳吾さん/商学科・3年)」

また、本講義の担当である橋本隆子教授は、「最近ではクラウドなどを活用し、授業をペーパーレスで行ったり、学生とのやり取りもオンラインのため、学生にとってキャッシュレスは受け入れやすい概念だと思います。これまで漠然と知っていたキャッシュレスについて整理していただいき、知識として得られたことは良かったと思います。今後、今日の知識をもとに学生一人ひとりが自分のこととして考えられるかが大切だと思います」と感想を語りました。

橋本隆子教授

企画・制作

朝日新聞社メディアビジネス局