Cashless Talk 2「政府のキャッシュレス政策に対する生活者の支持率は?」

キャッシュレスに関する疑問に、世界のキャッシュレスに事情に詳しいNCB Lab.の佐藤元則(さとう・もとのり)さんと、電通ビジネス共創ユニットでキャッシュレス・プロジェクトを推進する吉富才了(よしとみ・まさのり)さんが、対話形式でわかりやすく答える「Cashless Talk」。今回のテーマは「政府のキャッシュレス政策に対する生活者の支持率は?」です。

キャッシュレス還元は、「キャッシュレス・ジャパン」に効きそうか?

佐藤:今年の10月から日本政府は、増税後の景気失速を防ぐため、キャッシュレス決済での還元をスタートさせますよね。

吉富:はい。いよいよ「キャッシュレス・ジャパン」の幕開けですね。この政策が日本のキャッシュレスをさらに後押ししていくことを期待しています。

佐藤:生活者は、このキャッシュレス還元について、どの程度認知しているのでしょうか。

吉富:今年3月に500人の消費者を対象に実施したインターネット調査の結果では、「内容まで知っている」は21.6%、「聞いたことがある」は43.7%と、全体の65.3%、おおよそ3人に2人が認知しているということがわかりました。ちなみに政府は増税に向けて、このキャッシュレス還元を含めた8つの施策をかかげています。下のグラフには、上位5つの施策に関する認知率を掲載していますが、キャッシュレス還元は最も高い認知という結果でした。

佐藤:生活者のキャッシュレス還元への期待度がうかがえますね。このキャッシュレス還元ですが、利用者へのインセンティブとして、キャッシュレス決済をした際に決済金額の5%分を還元するというものです。たとえば10,000円の買い物をした場合は、消費税10%を加えて決済金額は11,000円になります。ポイント還元は5%、つまり550ポイントとなり、実質的な支出額は11,000円から550ポイントを引いた10,450円となるといった仕組みです。つまり、消費税を含む決済金額全体に対してポイントや割引、キャッシュバックがつきます。
吉富さん、「利用意向」はどうだったのでしょうか?

吉富:はい。「利用意向」においても、キャッシュレス還元が最も高い割合でした。中でも全体の34.9%、約3人に1人は「非常に利用してみたい」と強い利用意向を示しています。「ある程度利用したい」と回答した29.8%とあわせると64.7%、認知度と同じく、およそ3人中2人に利用意向があるということがわかりました。
ちなみに「認知」では、キャッシュレス還元>プレミアム商品券>軽減税率の順でしたが、「利用意向」になると、キャッシュレス還元>軽減税率>プレミアム商品券という順番になりました。

佐藤:なるほど。利用意向をみると、キャッシュレス還元が生活者のキャッシュレスを促進するということが鮮明に見て取れますね。
キャッシュレス還元>軽減税率>プレミアム商品券の順で、利用意向が高いという結果を見ると、今回の増税は、プレミアム商品券のような「額」での還元より、キャッシュレス還元や軽減是率のように「率」での還元への支持がうかがえますね。

インセンティブ後の生活者のキャッシュレス意欲は?

佐藤:キャッシュレス還元の「認知」や「利用意向」は高く、生活者のキャッシュレス促進に効きそうだということはよくわかりました。
一方で「キャッシュレス還元はインセンティブ期間中効きそうだが、一過性で期間が終わった後は効力がないのではないか」といったメディアの論調も散見されます。
インセンティブ期間後の生活者のキャッシュレス意欲は、どうでしょうか?

吉富:今回の調査では、「キャッシュレス決済でポイントやキャッシュバックがもらえるのは2020年6月までです。これ以降もキャッシュレス決済を使いますか?」という設問で聞いてみました。その結果、なかなか興味深い答えが出てきました。
まず生活者全体では、「どこでも非常に積極的にキャッシュレスを使う」は16.3%、「これまで以上にキャッシュレス決済を使う」は20.2%、「今までと同じように主にキャッシュレス決済を使う」は49.4%と、合計で74.2%が、インセンティブ期間後もキャッシュレス決済を使うと回答しています。
さらに、これをキャッシュレス派と現金派に分けて集計してみました。すると現金派では、インセンティブ期間後もキャッシュレス決済を使うと回答した人が合計で30.5%と、キャッシュレス還元を期に現金決済をやめてキャッシュレス決済に移行する意欲を示しました。

佐藤:これは面白い結果ですね。メディアの論調に反して、キャッシュレス還元が生活者のキャッシュレス決済を、継続して後押しするきっかけになることを示しましたね。政府はこの施策の認知・理解を浸透させることで、きっと日本のキャッシュレス促進、「キャッシュレス・ジャパン」をスタートさせることができるでしょう。大いに期待したいですね。

次回は、QRやバーコードなどを使ったモバイル決済についてです。どれくらいモバイル決済が使われているでしょうか。またどこで使用しているのでしょうか。今年7月に実施したインターネット調査結果をもとに解説していきます。

プロフィール

佐藤 元則(さとう もとのり)NCB Lab. 代表
キャッシュレス社会の普及とニューペイメントの発展を願い、精力的にセミナーやコンサルティング、執筆活動に取り組んでいる。分かりやすい解説が好評で、講師やモデレーターとしても活躍中。
『電子マネーウォーズ』共著(産能大学出版部)『新クレジットビジネス』(産能大学出版部)『カード・クレジット用語辞典』(近代セールス社)『金融破壊者たちの野望』(東洋経済新報社)など著書多数。https://www.ncbi.jp

吉富 才了(よしとみ まさのり)
電通 ビジネス共創ユニット キャッシュレスプロジェクト
米系コンサルティング会社、欧州系投資銀行を経て、電通入社。
金融(銀行、証券、保険など)、通信、自動車、飲料、トイレタリー、医薬品などのクライアントの新事業開発、マーケティング・ブランド戦略、PRに従事。
「金融破壊者たちの野望」(東洋経済新報社)「コーポレート・レピュテーション」(ADVERTISING)「CSRとコーポレート・レピュテーション」(日経ブランディング)など。
日本証券アナリスト協会検定会員

企画・制作

朝日新聞社メディアビジネス局