Cashless Talk 5「消費増税後の生活者のキャッシュレスはどう変わったか」

キャッシュレスに関する疑問に、世界のキャッシュレスに事情に詳しいNCB Lab.の佐藤元則(さとう・もとのり)さんと、電通ビジネス共創ユニットでキャッシュレス・プロジェクトを推進する吉富才了(よしとみ・まさのり)さんが、対話形式でわかりやすく答える「Cashless Talk」。今回のテーマは「消費増税後の生活者のキャッシュレスはどう変わったか」です。

生活者の約7割は、「10月以降、キャッシュレス決済の頻度が増えた」と回答

佐藤:いよいよ消費増税が始まりましたね。

吉富:そうですね。今回は、2019年11月に我々が独自に実施した「キャッシュレス意識に関する調査」の結果をベースに、生活者のキャッシュレスがどう変化しているか、みていきたいと思います。

佐藤:生活者のキャッシュレスは、消費増税がスタートした10月以降増えたのでしょうか、それとも減ったのでしょうか?

吉富:下記の結果を見ると、「キャッシュレス決済の利用頻度が増えた」という生活者は71.0%となり、キャッシュレス決済の利用頻度が高まっていることがわかりました。

佐藤:順調に伸びていますね。増えた理由は何なのでしょうか?

吉富:キャッシュレス決済の利用頻度が増えた理由を聞くと、「政府のキャッシュレス還元施策を受けたいから」(49.3%)、「決済会社のキャンペーンや特典が魅力的だったから」(40.0%)、「レジでの決済スピードが早いから」(36.4%)の順で高い結果となりました。

佐藤:政府や決済会社のインセンティブ、さらにはキャッシュレス本来の付加価値であるスピードが、生活者のキャッシュレスを後押ししているのがよくわかりますね。

キャッシュレスが増えたのは、生活に身近なコンタクトポイント

佐藤:生活者のキャッシュレスは、一体どこで伸びたのでしょうか?

吉富:キャッシュレス決済回数が増えたのは、「コンビニエンスストア」(69%)、「スーパー・ショッピングモール」(60.3%)、「ドラッグストア」(49.0%)の順で高い結果となりました。

佐藤:なるほど。生活者が日常よく利用するコンタクトポイントでの決済で、キャッシュレスが増えているのですね。

吉富:はい。キャッシュレスが、生活者にとって身近な存在になリつつあり、日常生活にも浸透している状況が伺えます。

最も増えたキャッシュレスは、モバイルQR決済

佐藤:生活者のキャッシュレスが増えた場所は、生活者にとって身近な場所でしたが、どんな決済手段が伸びたのでしょうか?

吉富:最も増えたという回答が多かったのが、「モバイルQR決済」(58.1%)、次いで、「クレジットカード」(55.7%)という結果となりました。

佐藤:キャッシュレス決済手段として長らく存在しているクレジットカードを押しのけて、モバイルQR決済が、最も伸びたのですね。

吉富:はい。直近10年を振り返ると、世界では2010年のGoogle Walletに始まり、14年のApple Payで加速しました。日本においても16年の楽天Payや18年のPayPayと、2010年代のキャッシュレスはスマートフォンが変えていったともみえますよね。

生活者の約8割は、政府の施策終了後も、「継続してキャッシュレスを使い続ける」と回答

佐藤:足元のキャッシュレスが好調に推移していることはよくわかりました。一方、今回のキャッシュレス施策が終了した後、生活者のキャッシュレス動向はどうなるのでしょうか?

吉富:今回の調査では、その点についても聞いてみました。その結果、政府のキャッシュレス還元施策が終了する20年6月以降も、全体の82.8%の生活者がキャッシュレス決済を利用し続けると回答し、今後もキャッシュレス決済の継続利用意向が高いことがわかりました。

佐藤:これは力強い回答です。今回の調査結果は、現状のキャッシュレスの成長は一過性ではなく、今後も好調に推移していくことを暗示していますね。

次回は、消費増税後のキャッシュレスについて、お店の状況がどう変わったのかについても、調査結果をもとに解説していきます。

プロフィール

佐藤 元則(さとう もとのり)NCB Lab. 代表
キャッシュレス社会の普及とニューペイメントの発展を願い、精力的にセミナーやコンサルティング、執筆活動に取り組んでいる。分かりやすい解説が好評で、講師やモデレーターとしても活躍中。
『電子マネーウォーズ』共著(産能大学出版部)『新クレジットビジネス』(産能大学出版部)『カード・クレジット用語辞典』(近代セールス社)『金融破壊者たちの野望』(東洋経済新報社)など著書多数。https://www.ncbi.jp

吉富 才了(よしとみ まさのり)
電通 ビジネス共創ユニット キャッシュレスプロジェクト
米系コンサルティング会社、欧州系投資銀行を経て、電通入社。
金融(銀行、証券、保険など)、通信、自動車、飲料、トイレタリー、医薬品などのクライアントの新事業開発、マーケティング・ブランド戦略、PRに従事。
「金融破壊者たちの野望」(東洋経済新報社)「コーポレート・レピュテーション」(ADVERTISING)「CSRとコーポレート・レピュテーション」(日経ブランディング)など。
日本証券アナリスト協会検定会員

企画・制作

朝日新聞社メディアビジネス局