Cashless Talk 6「ショップで進むキャッシュレス決済導入」

キャッシュレスに関する疑問に、世界のキャッシュレスに事情に詳しいNCB Lab.の佐藤元則(さとう・もとのり)さんと、電通ビジネス共創ユニットでキャッシュレス・プロジェクトを推進する吉富才了(よしとみ・まさのり)さんが、対話形式でわかりやすく答える「Cashless Talk」。今回のテーマは「消費増税後のキャッシュレスについて、お店の状況がどう変わったのか」です。

中小店舗の約半数が導入済み

吉富:昨年11月中旬に中小事業者(ショップ)を調査しました。その結果、キャッシュレス決済導入店舗は、34.6%(2018年10月調査)から49.6%に上がりました。

佐藤:中小ショップの約半数がキャッシュレス決済を導入済み、というのは大きな前進ですね。どんな業種でキャッシュレス導入が進んだのでしょうか。

吉富:飲食業での導入が顕著でした。28%から54%へほぼ倍増しています。小売業では衣類・身の回り品販売が62%でした。

佐藤:確かに、飲食店でキャッシュレスマークをよく目にします。年末年始は忘年会や新年会があり、かき入れ時です。それにあわせてキャッシュレス決済を導入したところも多いでしょうね。

スマホ決済がキャッシュレス導入を牽引

吉富:短期間で飲食業のキャッシュレス導入が加速しました。それを牽引したのはスマホ決済です。キャッシュレス決済導入店の調査によると、各種食料・飲料品販売では80%、酒類販売では83%、喫茶店ではなんと100%がスマホ決済を導入しています。

佐藤:それはすごい。主導したのは、QRコード決済ですよね。

吉富:はい。キャッシュレス決済導入店で、最も多く採用している決済手段は、カード(クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード)で、81.1%でした。ついでスマホ決済で70.7%。スマホ決済がカード決済とほぼ肩をならべるまでになっています。電子マネー(交通系、WAON、nanaco、Edyなど)は33.0%でした。

佐藤:電子マネーを超え、カードに迫る勢いですが、その理由は何でしょう。

吉富:やはり加盟店手数料です。スマホ決済事業者は手数料をゼロにしているところが多い。期間限定ではありますが、加盟店にとって手数料は悩みの種でした。

佐藤:カードの場合は、政府の支援策もあり、2.17%になっています。が、ゼロには勝てない。

吉富:それと、導入のしやすさというのもスマホ決済の強みです。QRコードを店頭に貼るだけでいい。特別な端末の設置や操作が不要です。

導入効果のトップは「客層が広がった」

佐藤:キャッシュレス決済を導入した中小ショップでは、導入効果があったのでしょうか。

吉富:効果があると回答したショップは44.1%でした。回答者のなかには、導入後まもないところもあるので、44.1%という数字はいい結果だと思います。

佐藤:具体的にはどんな効果があったのでしょう。

吉富:トップは「客層が広がった」(15.2%)でした。キャッシュレスマークが目印になって、新規客を呼び込むことができたということです。

佐藤:売上アップや業務効率アップがトップになると予測していたのですが、意外です。スマホ決済事業者のキャンペーン効果もあったでしょうね。

吉富:はい。私の知り合いの奥さんは、キャンペーン対象店をスマホで検索して行くそうです。そういう人が増えている。

佐藤:近くにお店がありながら、何を売っているかあまり気にしていない人が多い。でも、キャッシュレス対象店になることで、商品やサービスをアピールできるようになった。お店にとって、キャッシュレス導入で新規客が増えるというのはありがたいですね。

吉富:導入効果の2番目は「つり銭を用意する手間が減った」(14.8%)でした。

佐藤:現金は手数料がかからない、コストがかからない、と多くの人は思っています。しかし、つり銭を用意する時間や手間はコストです。

吉富:その通りです。つり銭を用意するのにかけている時間は、平均で7分、最長で60分にもなっています。

佐藤:つり銭用意に、そんなにかかっているのですか。この時間をもっと生産性の高い仕事に向けられればいいのに、もったいない。

吉富:導入効果の3番目は「レジ作業の時間が短縮できた」(10.2%)でした。

佐藤:レジ待ちを解消できるというのは、ショップにとっても、消費者にとってもうれしい。ショップはレジ生産性の向上、消費者はレジ待ちのストレス軽減というメリットがあります。

吉富:ここまでがトップ3ですが、以下「売上が上がった」(6.1%)、経理処理がラクになった」(5.9%)、「スタッフのつり銭の支払ミスが減った」(5.7%)、「生産性(業務効率)の向上につながった」(5.2%)などがつづきます。

キャッシュレス導入の課題

佐藤:約半数の中小ショップでキャッシュレス決済の導入が進んだ。しかし、まだ半数は未導入。キャッシュレスの普及において、この開拓が一番高いハードルです。

吉富:未導入店に、何を解決すればキャッシュレスを導入するか、聞いてみました。その結果、決済手数料が安くなる(60.1%)と、初期投資が安くなる(53.0%)が群を抜いて高かった。この問題は政府のキャッシュレス推進策で解決されていると思っていたのですが。

佐藤:政府のキャッシュレス推進事業の内容告知は、まだ道半ばのようですね。とともに、導入効果について、もっとアピールすべきでしょうね。

吉富:そうですね。回答のひとつに「導入効果が期待できる」(25.5%)が第4位に食い込んでいます。第3位は「お客様のニーズが高まる」(26.4%)でした。

佐藤:我々消費者は、意識してキャッシュレス決済を使うようにすることが重要ですね。私は「キャッシュレス決済で」と声をだしていうようにしています。一人ひとりの声が多くなれば、「お客様のニーズがある」ということになる。

吉富:キャッシュレス決済受付店舗数の問題とともに、売上に占めるキャッシュレス決済比率を上げていく必要もあります。導入店舗の売上高に占めるキャッシュレス決済の比率は、まだ21%しかありません。残りの79%は現金決済。キャッシュレス比率を最低でも50%まで拡大する必要があります。

佐藤:そのためには、店頭での声がけが重要ですね。現金を出した人に対し、カードやスマホ決済の利用を勧めるのは有効です。

吉富:今年は東京五輪が開催されます。海外からの観光客へのおもてなしは、キャッシュレスで。お店と消費者の両方が協力してキャッシュレスを推進する。いま、それが求められています。

次回以降は、これまでと視点を変えて、海外のキャッシュレス最新動向の注目ポイントについて触れていきたいと思います。

プロフィール

佐藤 元則(さとう もとのり)NCB Lab. 代表
キャッシュレス社会の普及とニューペイメントの発展を願い、精力的にセミナーやコンサルティング、執筆活動に取り組んでいる。分かりやすい解説が好評で、講師やモデレーターとしても活躍中。
『電子マネーウォーズ』共著(産能大学出版部)『新クレジットビジネス』(産能大学出版部)『カード・クレジット用語辞典』(近代セールス社)『金融破壊者たちの野望』(東洋経済新報社)など著書多数。https://www.ncbi.jp

吉富 才了(よしとみ まさのり)
電通 ビジネス共創ユニット キャッシュレスプロジェクト
米系コンサルティング会社、欧州系投資銀行を経て、電通入社。
金融(銀行、証券、保険など)、通信、自動車、飲料、トイレタリー、医薬品などのクライアントの新事業開発、マーケティング・ブランド戦略、PRに従事。
「金融破壊者たちの野望」(東洋経済新報社)「コーポレート・レピュテーション」(ADVERTISING)「CSRとコーポレート・レピュテーション」(日経ブランディング)など。
日本証券アナリスト協会検定会員

企画・制作

朝日新聞社メディアビジネス局