
主催:昭和女子大学 共催:30% Club Japan
モデレータ: 30% Club Japan アドバイザリーボードメンバー/株式会社カレイディスト
代表取締役兼CEO 塚原 月子氏
11月27日、昭和女子大学グローバルビジネス学部(ビジネスデザイン学科、会計ファイナンス学科)は、30% Club Japanと共催で女性のキャリア形成をテーマにした特殊研究講座を実施した。大学と企業のトップマネジメント層が集まり、グローバル時代における女性リーダー育成のあり方を語り合った。
塚原 まず、女性の上位の意思決定層への参画に立ちはだかる根本課題は何だとお考えですか?
宮本 建設業界には特に古い体質があり、昔はトンネルに女性が入れないような状況がありました。もちろん今は違います。それでもアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)によって、女性が入り込みづらい環境があるかもしれません。そこで現在は土日もしっかり休める、育児休暇も取りやすいといった働き方改革から一歩ずつ進めています。
田代 私は、社会の課すバイアスが圧倒的に多いと感じていますが、女性側にも一定のバイアスがあると思っていて、前へ前へという姿勢がもっと必要だと思います。例えば、女性を支援する制度をつくっても使われないことが多くの企業で課題になっています。自分が率先してこうした制度を利用して、他のメンバーも使いやすくするんだという前向きな意識を学生時代に身につけてほしいですね。
塚原 確かに、女性自らの前向きな意識は大切です。では、人材を輩出する大学側では、女性のキャリア形成の課題をどう見ていますか?
藤井 日本はキャリアの多様性がまだまだ少ないと思っています。新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった慣習から自由になれば、かなり違う社会になると思います。あるときは集中して仕事の経験を積み、どこかのタイミングで大学院に通う。あるいはNPOなどで社会貢献活動をする時期があってもいい。そんな柔軟なキャリアを目指せる社会になれば、女性のライフイベントの課題も克服できるのではないかと考えます。
曄道 私も同感です。最近は「マルチステージ」と呼ばれますが、さまざまなキャリアを自分のタイミングでデザインできるようになれば、自身が向き合う多くの課題は解決できるでしょう。そのためには、自分の「軸」を個性的につくりあげる努力が必要です。そうすれば、同質性を求められる世界から抜け出して、時間的な多様性を手に入れることができます。
坂東 世界が大きく変わっているということを皆さんに伝えたいです。今は勉強の成果に加えて、自分が得た知識をどう社会で役立てられるかを考える力が求められます。学生時代に社会とつながる小さな成功体験を積み上げて自己肯定感を高めることが重要だと考えます。採用、人事の際にも面接や成績表を活用し、女子学生が持つ能力の確認と発見が必要です。
塚原 では大学と企業が連携して、女性活躍に立ちはだかる課題を解決する方法はあるのでしょうか?
藤井 学生と社会を分ける線が明確に引かれすぎだと思っています。学生たちが大学で学んだことを社会で試せるように、企業と大学で一緒に学生を育てる場をつくる必要があります。いわゆる「コーポラティブエデュケーション」ですね。日本では「タイプ3」と呼ばれる実務体験型インターンシップがありますが、それよりも長い期間の実務を通じて、大学の学びを深められるのが理想です。
坂東 インターンシップというのは、欧米では短くても3か月、半年とやるもので、日本のような「1day 」「一週間」なんてありえません。
宮本 その通りです。当社でも1〜2年で辞めていく新入社員が一定数います。ミスマッチをなくすためにも先輩社員のリアルな仕事を見て学べる長期インターンシップ制度が重要です。また、各大学でも企業とタイアップした授業が増えるといいですね。
曄道 本学でも企業の方に講師をお願いする授業を多数用意しています。さらに、企業と学生が一緒に社会課題と向き合うプロジェクト型の授業などにも力を入れています。
田代 企業と学生が一緒に地球の将来を考えるような取り組みは理想的ですね。私は常々、日本の学生は欧米の学生と比べて、社会課題に対する意識が希薄だと感じています。今、皆さんが住む地球は大変な状況になっています。それをもっと「自分ごと」として捉える機会があれば、未来との向き合い方も変わると思います。
塚原 最後に坂東総長から企業の皆さんに期待することはありますか?
坂東 私は企業の人事担当の皆さんに3つの「き」をお願いしています。それは、「期待」「鍛える」「機会」。入社後にも学生をしっかり鍛えてほしい。そのためには、彼女たちに「期待」をして、責任をもって働く「機会」を与えてほしいのです。これからは人生のうち50年を働くことになる時代です。女性も同様です。企業で長く活躍できる風土、環境、ライフイベントに対する支援制度を今まで以上に整える必要があります。女性が仕事で思い切りチャレンジできる世界をつくっていければと思います。
田代 3つの「き」は本当にその通りです。いまは人材不足という社会情勢もあり、手を挙げれば、機会は豊富に得られます。女子学生にとっては、チャンスの時代だと思います。
宮本 3つの「き」は、ぜひ弊社でも取り組みたいですね。女性リーダーを育成する方向へ、日本社会は大きく変わりつつあります。弊社もここで力を緩めず、全社を挙げて女性活躍を定着させたいと思います。
30% Clubは、企業の意思決定機関に占める女性割合の向上を目的とした世界的キャンペーン。日本では「TOPIX社長会」、機関投資家による「インベスター・グループ」、9大学が参加する「大学グループ」の3つが活動しており、今回の講座でも協力を得た。
第二部は「分科会」として、トップマネジメントと学生との対話が行われた。昭和女子大学、上智大学、東京大学から50名を超える学生が参加し、3つのテーマに分かれて活発な議論が展開された。
テーマ① 「リーダー育成と無意識のバイアス」セッションは、大門小百合・昭和女子大客員教授、白川香名・大和証券グループ本社専務執行役の司会の下、学生から固定的性別役割分担意識の問題、女性ロールモデル不在の問題などに関する質問が挙がった。一方「女性側も『私には無理』という意識を変えるべき」「失敗体験の方が大事なので恐れずに」などの意見も出た。
テーマ② 「『女性参加』は手段?目的?」では、林香里・東大理事/副学長、原田郁子・NECエンプロイーリレーション統括部長の司会で、日本のジェンダーギャップの指数の低さ、女性参画を推進するための公教育のあり方などが議論された。「数値目標設定はジェンダー多様性実現のために重要。そこから、誰もが活躍できる、働きやすい職場が実現できる」というリーダーの発言もあった。
テーマ③ 「企業から見た大学教育への期待」は、今井章子・昭和女子大教授、西岡真帆・清水建設DE&I推進部長が司会を務めた。「個性はどのように磨けばよいか」という質問に「企業は、学生時代をどう過ごしてきたかを見て一緒に働く『仲間』を選ぶ」「就活で焦ることはない。専門領域にしっかり取り組むべき」「経営理念が自分の信念と合致しているかどうかを見極めるのも大事」などの意見が出た。