建設機械の中でも、その小ささで話題を集める存在がコマツの電動マイクロショベル「PC01E-1」。大型ショベルと同じ機構や動作を、車幅580mmのボディにギュッと詰め込んだ。

コンパクトサイズながら、しっかりとパワフルな作業をこなしてくれる。むしろ、人が乗ることによって作業の安定度が増すのだと、コマツの設計者たちは語る。その仕組みや、「PC01E-1」誕生の秘密などを聞いてみた。

小さなショベルが人と一体になって、パワフルに稼働

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今年3月からレンタルが始まった「PC01E-1」は、バッテリー駆動のマイクロショベル。人の肩幅ほどの車幅(580mm)に、軽トラックで運ぶこともできる重量(340kg)。音が静かで、排出ガスも出さず、環境にやさしい建設機械だ。

「PC01E-1」には、ガソリンで動く同型機の“きょうだい”がいる。名前に「E」がないPC01シリーズは1991年に発売され、30年以上デザインも変わらず、エンジンの性能向上に合わせて進化し続けてきたロングセラー。その丸みを帯びたシルエットとコンパクトなサイズから、全国の現場で愛されておりファンも多い。

時代の流れに合わせて電動化した「PC01E-1」は、PC01の正統進化形であり、30年以上変わらぬDNAが脈々と受け継がれている。それは「どんなに小さくなっても、使う人が求めている機能は減らさないこと」。小さいマシンの中にあらゆる機能を集約し、人が乗って動かすことも大前提に。だからこそ、肩幅に合わせた580mmの車幅に設定された。

前方にある作業機を動かして仕事をする油圧ショベルにとって、本体の重量が軽くなるということは、力強い作業が難しくなることを意味する。作業機に力が掛かり過ぎると、軽い機械は重心を崩して前に倒れてしまう。後部の重量が非常に大切なのだが、重心が後ろになり過ぎると逆方向に倒れてしまうため、きめ細かなバランスが求められる。

30年以上前にPC01の設計を担当したコマツの永塚功さんは「重いものを運ぶときには、重りの代わりに、人間がカウンターウェートになる。人の体重が全体のバランスに利くと感じていました。この機械は、最初から人が乗る前提で考えていたのです」と話す。

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コマツ 開発本部 車両第四開発センタ 技監/ユーティリティビジネスアドバイザ
永塚功(ながつか・いさお)さん

そこで生まれたのが、バイクのようにまたがって乗るという画期的なスタイル。人間と機械が一体となって全体のバランスを保つことで、小さなサイズでもパワフルに働くことができるのだ。

機能は意地でも外さない、スリムなボディに凝縮

1980年から90年代にかけて、ショベルカーには小型化の波が押し寄せていた。世帯ごとの建売住宅の開発が進み、狭い敷地内で建設や管工事を行うニーズが増加。小回りの利く建設機械が、現場では求められることになる。

1981年に入社してミニショベルの設計を担当していた永塚さんは、家の門を通れる車幅810mmの機種や重量500kg未満の機種などを次々と開発。販売も好調だった。「車幅690mmのPC02を世に出した時は、これより小さいのはないだろうという思いでいました」と、当時を語る。

だが、小型化への挑戦は続くことになる。市場では、より小さいサイズの機械が出回っていたが、それらは搭乗や旋回ができないものだった。現場で求められるニーズを満たす、できるだけ小さいサイズの油圧ショベルを作らなければならない。PC01の開発がスタートした。

サイズは、住宅の建物と塀の間を通れる車幅580mm、軽トラックの最大積載量(350kg)未満。その条件を満たすために、スペースを節約する工夫が細部にわたるまで重ねられた。幅を大きく取る要因となっていた油圧バルブを新たに開発して小型化。スイングさせる足元のペダルがなくなった分、レバーを旋回とスイングの切り替え式に。そのほかにも、今まで無理と思われた発想を加え、究極のスリムなボディを追求していった。

試作機が完成すると、それを永塚さんたちは軽トラックで運び、関東や大阪のユーザーの元を約2カ月かけて回っていったという。実際に使ってもらった評価や稼働データを収集して、その結果をもって予想以上の手応えを感じ、PC01を世に送り出した。

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そして約30年。コマツによるショベル小型化の集大成となったPC01は、時代を超えて愛される名機となった。永塚さんは「使い勝手が悪いものは、結局使ってもらえない。必要な機能を意地でも外さないで作ったのが正解だったから、ずっと使っていただけていると思うのです」と胸を張る。

環境性能だけではない電動化のメリット

「私が入社した1992年には既に存在していたPC01は、コマツとしても大事なブランド。今回電動化するにあたって、仕事のしやすさ、バランス、力強さといった良さを守らなくてはいけません。そこに加えて、電動という技術を使って、より魅力的なものを作りたいと考えました」

そう語るのは、「PC01E-1」の設計の主責任者である遠藤武士さん。長い付き合いだという先輩の永塚さんは「技術の高い尊敬すべき技術者」で、「PC01E-1」の開発に際しては、「構造を熟知されていますから、その知見に基づくアドバイスをたくさんいただいた」という。

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コマツ 開発本部 車両第四開発センタ 次世代商品開発グループ グループマネージャ
遠藤武士(えんどう・たけし)さん

基本的な性能は残しつつ、電動化によってエンジンから大きく進化したのが、モーターが低回転でも安定した作業ができること。「モーターというのは、回転数に関係なく力が出ます。その特徴を生かして、モーターの回転数を落としても力が落ちない設計をしました。ゆっくり仕事したい人が、速く動かさなくても済むようになります」と遠藤さん。

永塚さんは、「PC01E-1」はエンジン音がなくなって、大幅に静音化された点を評価。さらに、「回転変動が少なく、負荷がかかっても同じ回転数でずっと回り続けられるのも、電動モーターの特長です。ガソリンエンジンだと負荷がかかって回転数が下がってくるようなケースでも、電動だと早く動いているなと感じました」と話す。

二人が強調するメリットは、燃料補給の手間がなくなって、交換式のバッテリーを取り外して家庭用のコンセントで充電できること。ガソリンスタンドまで行って給油する必要はなく、利便性が大幅に向上した。

「元々お客様に愛されているPC01でしたが、さらに電動という価値が加わり、『PC01E-1』の魅力は増したと実感しています。音が静かになることで、運転者とその周りにいる人たちがコミュニケーションを取りやすくなり、建設機械をより身近に感じてくれるのではないでしょうか。開発している側としては、非常に楽しかったです」と遠藤さんは振り返る。

人に身近な存在を目指し、電動化で縮まった距離

いろんな場所に出入りできるサイズに、音が静か、排ガスがないという長所が加わり、「PC01E-1」の行動範囲はさらに広がった。住宅地で動かしても迷惑がかかりにくく、食品を扱う業界や、農家のビニールハウスでの作業などでの活用に期待できる。

「使う場所やシーンを選ばないので、私たちが使い方を考える以上に、いろんな方に使い方を想像していただきたいです。ジャンルは建設機械ですが、『建設』という言葉がなくなるぐらいになればいいなと。これまでの重要な顧客である建設業界の方はもちろんですが、自営業や趣味など幅広い場面で『PC01E-1』を使いたいと思っていただけたらいいですね」と遠藤さん。墓地周辺で工事をするユーザーに、静かに作業ができて周囲の雰囲気を乱さない点を評価されたことが印象に残っているそうだ。

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実は、永塚さんは30年前の設計時から、一般のユーザーの利用を意識していたという。「軽トラで運べるということは、農家の人が使えて、一般家庭での園芸などにも使えるはず。一家に一台という思いで作っていました」と話す。丸くて親しみやすいデザイン、アームの関節部分をグリスで整備する必要がないようにした無給脂ブッシュは、現在も受け継がれている。

開発当初からすべての人に身近な存在を目指し、電動化によってさらに距離が近くなった「PC01E-1」。力強いパワーを発揮できるのも、人が乗ってこそ。頼りになるけど、どこか放っておけない不思議な魅力を持ち、人と機械の新しい関係を感じさせてくれる温かいマシン。これからも多くの人に愛され続けていくだろう。

「PC01E-1」の特徴とスペックを見る>>

電動マイクロショベル「PC01E-1」に乗るには、まずは資格の取得から!

『bouncy/バウンシー』の津田編集長が資格取得にチャレンジ! 興味がある方は、ぜひ2日間の受講の様子を動画でご覧ください。

「2日間の受講で3トン以下のショベルカーに乗れるなら全然アリ」と感想を述べた津田編集長。

「PC01E-1」の運転には、以下のいずれかの受講が必要です。

・車両系建設機械の運転業務にかかわる特別教育
・車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習

 前者は車両系建設機械(整地用等)のうち、機体質量が3t未満の機械が対象となり、全国にあるコマツの教習所でも受講(2日間、計13時間)を受け付けています。

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