2022年3月にコマツが市場に導入した電動マイクロショベル「PC01E-1」。世界最小級のマイクロショベルは元々コマツの得意とするところだが、この「PC01E-1」はバッテリー駆動に進化したことで、更なる注目を集めている。電動モデルならではの静音性とクリーン性は、どのようなシーンで真価を発揮するのか。実際に利用された現場を取材した。
石灰石鉱山の坑道に、電動マイクロショベルがやって来るまで
岐阜県の南西部に位置する大野町。豊かな森林を擁するこの地で、20年以上にわたって岐阜鉱山の採掘を行うのが、住友大阪セメントグループの一員である岐阜興産株式会社だ。岐阜鉱山で採れるのは石灰石。さまざまな用途のある鉱物資源だが、ここではセメントの主原料として使われており、採掘されたものは近隣にある住友大阪セメント 岐阜工場へと運ばれ、副原料の混合、焼成などの過程を経てセメントに生まれ変わる。
「ここで作られたセメントは、ビルやダムなど我々の生活に欠かせないインフラの材料として使われています」と語るのは、住友大阪セメント 岐阜工場の鉱山課長を務める梶谷啓介さん。さらに今回は、岐阜興産 鉱山事業部の係長・杉山浩則さん、採掘業務に携わるオペレーターの渡邊文計さんを加えた3名に、「PC01E-1」の活躍ぶりを語っていただいた。
岐阜鉱山では、採掘された石灰石を坑道内のベルトコンベアに載せて外へと運び出しているが、このとき問題となっていたのが、多少の石灰石がベルトコンベアからこぼれ落ちること。これを放置したままだとベルトの下に堆積して稼働に支障を来すため、人力でかき出す必要があった。
ベルトの下からかき出すだけでも大変なのに、かき出した石灰石を移動するのは更に大きな労力がかかる作業。自然と、落石は坑道内に溜まっていったという。これでは通行しづらいだけでなく、安全面でも問題が生じてしまう。そう思いながら少しずつ人力で片付けるうちに、「PC01E-1」の存在を知ったのは杉山さんだった。
「たまたまネットニュースで、ホンダが開発したバッテリーで動くコマツのマイクロショベルが出たという記事を見つけたんです。これなら落石を片付けられるかも、と上司に伝え、コマツさんへレンタルの依頼をしてもらいました」と杉山さん。当時、「PC01E-1」はデビューしたばかり。1カ月後、待望の「PC01E-1」が現場に届いた。
ガソリン車が制限される坑道内。排気ガスゼロの「PC01E-1」だからこそ採用できた
そもそも坑道で、なぜ「PC01E-1」なのか。狭くて高さもない坑道だからと言うなら、従来の車格がほぼ同じガソリンエンジンモデル、「PC01-1」で良いのでは。そんな疑問の答えが鉱山保安法にあると教えてくれたのは、梶谷さんだ。
「法律上、規定の通気量を確保していない坑道内で、ガソリンエンジン車を使うことはできません。だからこそ、排出ガスのない電動モデルが必要となってくるんです。どこの業界も人手不足が深刻ですし、効率の面でもできるだけ建設機械に任せたいとの考えもありました」(梶谷さん)
少しでも人の手を煩わせることがなくなれば……。そんな思いで導入された「PC01E-1」の実物を初めて目にしたとき、渡邊さんは「楽しそうなヤツだな」と感じ、バイクのようにまたがるスタイルにワクワクしたという。さらに杉山さんの「いいおもちゃが来たって感じ」との言葉を聞くと、この電動マイクロショベルは働くクルマにときめいた童心を甦らせる1台なのだと、改めて実感する。
社内で「PC01E-1」を最も運転したという渡邊さん。実際に乗ってみて感じたのは、「見た目のわりにパワフルで、足場が良くない路面でも排土板が砕石をならしながら進んでくれるので安定する」ということだった。一方で、ガソリンエンジンで動くものとは力の掛かり具合に多少の違いを感じたそうなので、操作には少し慣れが必要かもしれない。それでも、「音が静かで作業中でも会話しやすく、排出ガスがゼロでニオイも気にならないところがいい」と「PC01E-1」を気に入っている様子だ。作業上の指示が飛び交う現場にとって、互いの声が機械の動作音に紛れず聞き取れるに越したことはない。万が一、トラブルが起こったとしても、危険を知らせる声が届けば被害を抑える可能性も高まるだろう。
最初は「電動だとパワーが弱いのでは」と多少不安に思っていた杉山さんも、少し乗ればその不安はすぐ解消された。車格をほぼ同じとするガソリンエンジンモデル「PC01-1」と比べても力の差は感じられなかったという。車高が低くコンパクトなため、足場の下など高さがあまりない場所へ難なく入って行けるのも美点だった。
あえて言えば「後部がもう少しスリムだといいな」と思ったくらい。これについても今後、正常進化でボディサイズが更にコンパクトになるかもしれない。岐阜鉱山では朝、満充電にしたものを昼の休憩時に持ち帰り、予備のバッテリー2個と入れ替えていた。4個のバッテリーをローテーションで使えば、1日の作業に支障はなかったそうだ。
そうやって落石の掃除を任された「PC01E-1」は、現場で十二分な活躍ぶりを見せてくれた。溜まっていた落石の山は、「PC01E-1」で作業を始めてから数日で大半が片付いたという。ベルトコンベアの下に落ちた石灰石はどうしても人がかき出す必要があるものの、かき出した落石は「PC01E-1」が搬出用の容器に積み込む。容器を電動ウインチで上げ、中身の落石をベルトコンベアに戻す作業を繰り返せば、それで任務は完了だ。
これにより、人が落石を避けながら行き来するストレスがなくなったのはもちろんだが、一番の収穫は保安上の懸念が解消された点。「鉱山では保安第一と言われ、安全に作業することが何をおいても重要ですので、本当に良かったです」と、梶谷さんも語っている。現場で働く人々にとって、最も大切なものを守った「PC01E-1」。これからも坑道内の掃除が必要になるたびにお呼びがかかり、再びその実力を発揮してくれることだろう。
個人でもレンタル可能な「PC01E-1」。
DIYやガーデニングなど幅広い活躍に期待
岐阜鉱山のような採掘現場だけでなく、建設現場や農地など、さまざまな場所で活躍している「PC01E-1」。バッテリー駆動になったことで活用シーンはさらに広がり、DIYやガーデニングといったプライベートでの活躍も期待されている。
「排気ガスが出ない点やコンパクトなサイズ感は、ビニールハウスの中や果樹園などでの利用にも役立つと思います」と語るのは、コマツカスタマーサポート株式会社 中部カンパニー 岐阜支店 スマートコンストラクション営業課の課長、石本明さん。また、ガソリンスタンドに行く必要がなく、バッテリーを家庭用のコンセントで充電できることも、プライベートでの活用にとっては大きなアドバンテージだ。「PC01E-1」が登場してからそれほど時間が経っていないため、レンタルで出ている台数はまだ多くないとのことだが、レンタルの利用は法人、個人を問わず可能。
運転には資格が必要。資格をお持ちでレンタルを希望するなら、まずはコマツカスタマーサポート株式会社の公式サイトで拠点検索を。近隣の支店を見つけ、レンタル希望であることを伝えれば、資格の有無や用途の確認などを経て、問題がなければ申し込み手続きののち、レンタルが開始される。レンタル期間は1日単位で受け付けているので、週末の「ショベライダー」を目指すなら早速、近隣の支店に問い合わせてみては?
動画メディア『bouncy/バウンシー』の津田編集長が、キャンプ場で「PC01E-1」を使ってみた! その操作性やいかに!?
※「PC01E-1」の運転には資格が必要で、2日間の講習を受ける必要があります(全国にあるコマツ教習所などでも受講可)。