ディズニープラス「スター」のオリジナルドラマシリーズ『フクロウと呼ばれた男』が4月24日(水)から独占配信となる。田中泯さんと新田真剣佑さんが親子役で共演し、国家の裏側やタブーに切り込む、本格的な社会派政治サスペンスとなっている。本シリーズを第3話まで視聴したジャーナリスト・堀潤さんが本作の魅力を語った。

日本の闇を視覚化した物語。現代政治との比較が面白い

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提供:ディズニープラス

――ディズニープラスのオリジナルドラマシリーズ『フクロウと呼ばれた男』をご覧になり、今の時点での率直な感想からお聞かせください。

3話まで視聴したところですが、シリアスなストーリーが緊張感のある映像の中で描かれているところが気に入っています。落ち着いたトーンの映像のせいか、今の日本に通底する閉塞感がよりリアルに迫ってくる感じがありました。

本作の主人公・大神龍太郎は自分の正義に突き動かされ、道筋を正すためならどんな手段もいとわない国家の黒幕。そんな父に反発し、金と権力を嫌う息子の大神龍。この2人を中心に政界と各家族の話が入り混じりながら展開していきます。日本の闇を視覚化した、非常に今の日本の停滞を感じさせる舞台設定だなと思いました。表には出てこない男社会のうみのようなものも実に分かりやすく表現していますし、僕らが本来闘うべきものは何か、明らかにしなくてはならないものは何かがすごく透けて見えました。

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提供:ディズニープラス

――日本の停滞、うみを本作のどんなところに感じられたのでしょうか。

基本的に登場する権力者は男性です。互いに権力基盤から引きずり下ろそうとする男たちのハラスメントや嫉妬、愛欲などが刻々とリアルに描かれています。登場する権力者たちは全然フェアではないんですよね。何か物事を決める際には根回しを行い、人間関係を構築しながら誰かを引きずり落とし、どのように勝ち上がっていくかを考えているような人ばかり。でも、そういう人たちがまさに日本を停滞させているんだと改めて実感したわけです。

――そこが今の日本にまん延する閉塞感でもあるというわけでしょうか。

そうです。例えば、この物語では、さまざまな思惑が交錯する中で物事が決まったり、正当性のある手続きのないところで、いろいろなことが決定されてしまったりしています。まさに現代の政治の在り方に通じる部分です。また、それらをどのような手段、タイミングで表に出していくかというメディアにとってのせめぎ合いも描かれているのですが、それもまた現実の世界と同じ構図でした。

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「作品から日本の閉塞感を感じた」と話す堀さん

そんな具合に、本作は日本が成長し、多くの人たちに開かれた国になる上で邪悪なもの、改善すべきことを題材にしてさまざまな人間模様を描いているドラマです。本作を見ていると「この国の政治家たちは何をやっているんだ」といった批判だけではなく、メディアに身を置く人間に対しても「何をやってきたんだ」と問われている気がして、自分にも腹立たしい気持ちになりました。

世の中を変える手段が隠蔽や不正、根回しであってはならない

――主人公の大神龍太郎は、「毒をもって毒を制す」という黒幕です。彼の「正義」の貫き方についてはいかがでしょう。

龍太郎は政治の問題に寛容に振る舞っていますが、ある程度、政治にはそういうドロドロしたものがあってしかるべきという考え方なのかなという印象です。でも、「毒をもって毒を制す」というのは言葉としては成立するかもしれませんが、正当性から考えると、本来は社会から絶つべきものです。それが遅れたから、日本は名ばかりのコンプライアンスやガバナンスになってしまっている部分もあるのでしょう。

――息子・大神龍の「正義」はどのように受けとめましたか。

彼はNPOに勤めており、今までの成果主義の社会では推し量れないような価値観を持ちつつある段階ですよね。そうした人物が古い価値観で動いている父親に対峙するという構図もまた今まさに起きていることです。

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提供:ディズニープラス

いずれにしても、龍太郎のような旧来型の「正義」に基づいた価値観と、息子・龍の新たな指標作りの途上にいて、まだふんわりとしている価値観の対比も本作の見どころだと思います。極論同士の2人がぶつかり合う姿を見て、自分にとっての「正義」は何かと自分と対話してみると面白いと思います。

――では、新しい時代へとシフトさせてくれるのは息子の大神龍だと思われますか?

いや、彼ではなく、おそらくメディアではないでしょうか。個人的にサラ・ローレンスという女性ジャーナリストに注目しています。海外の記者というファクターが入っている点にリアリティーを感じます。なぜなら、今の日本の課題を徹底的な取材で浮き彫りにして、世の中を大きく動かしているのはBBCなど海外メディアだからです。

複雑な人間模様を見事にあぶり出す豪華なキャスト陣

――ドラマのキャスト陣についてもお聞きします。大神龍太郎役の田中泯さん、大神龍役の新田真剣佑さんの演技はいかがでしたか?

田中泯さんはやはり独特の雰囲気で迫力があり、圧倒的な存在感を放っておられます。別の分野で培ってきた表現力を最大規模で総動員していて、狂気すら感じられる演技でした。最近、「老獪(ろうかい)」と称される人が少なくなっているだけに貴重な存在です。かたや、新田真剣佑さんは勢いがあって、生き生きと演技をされているなと思いました。

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提供:ディズニープラス

――そのほか、気になる登場人物は?

大神家の次女が歌手を目指して活動しているのですが、彼女を取り巻く音楽業界の人たちが何とも怪しい感じで気になりました。業界あるあるが細かく再現されていて、とてもリアル。思わず心の底で彼女に「この会社は辞めたほうがいいよ」と叫んでました(笑)。

政治や各家族の話が入り乱れ、複雑に交錯して展開する中、どの俳優さんも素晴らしかった。演者の力量がエッジの効いたストーリーをつくりあげているのだと思いました。長男役の安藤政信さんをはじめ、どの俳優さんも少しずつ、見ている僕らの気持ちを逆なでするような演技をされていましたよね。加えてカメラアングルや画角もよく練られているお陰で、緊張感が途絶えることがありませんでした。

――印象的なシーンはありましたか。

いろいろありますが、ひどいなと思ったのは、龍太郎に「君がこれぐらい金をもらっているのはわかっているんだぞ」と突きつけられた新聞社の記者が、集めたネタの記事化を取りやめたところです。メディアの人間が保身に走り、正しい報道がなされていないというシーンにもまた今のメディアへの痛切な批判が込められているように感じました。

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提供:ディズニープラス

諦めないで!30代~50代にも新時代を作るチャンスはまだある

――本作を見て改めて感じた理想の社会とは?

少なくともフェアであってほしいですね。暗躍したところで誰かが勝ち上がる世界観はドラマの中だけで十分。そういう世界からいい加減、脱する時だとつくづく感じています。成長している国や地域、企業は透明性をいかに担保するかに尽力していて、そういうところにお金が集まる仕組みになっている。経済的にも、透明性もガバナンスも効かないようなところに発展はありません。まずは、新しい価値を持った人たちが自由に出入りできる柔軟性のある社会にする。それが理想です。

なお、本作では、自分が邪魔だと思う権力者に“退場”してもらうための手段が暴力や陰謀、もしくは不正だったりします。むしろ、人としてやってはいけないことすべてがてんこ盛り。少なくともこうした世界観は一刻も早く壊したいなと思っています。

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提供:ディズニープラス

――ディズニープラスがこうした大人向けの社会派ドラマをオリジナルで制作し、世界へ配信することの意義についてはいかがでしょうか。

ディズニーはいつだって社会派ですよね。以前、報道関係者用のビザを取りにいったアメリカ大使館でPRムービーを見たことがあるのですが、そこに出てきた人たちが「アートと言葉が掛け合わされると政治が生まれるんだ、それがアメリカだ」と言っていました。その言葉はディズニー作品にも当てはまるような気がしました。

ディズニーの作品はいつの時代も理想の世界、理想の社会の在り方を説いてきました。そして常に愛と勇気であったりとか、多様性だったりを発信し続けています。一見、楽しいおとぎ話のように見えても、登場するキャラクターたちのバックグラウンドは緻密に描かれているわけです。ですから、この作品にはどんなメタファーが込められているんだろうと大人はつい読み解きたくなります。そんなところがまさにディズニー作品の魅力だと思います。

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本作にも登場する記者と、ジャーナリストの自分を重ね合わせて語る堀さん

ーー本作は特に30~50代の男性向けになっています。その方々にぜひ本作の注目すべきポイントをお伝えいただけますでしょうか。

本作から、我々世代は最後に責任を果たすチャンスを与えられているという感じがしています。僕は今46歳。こんな停滞した時代を誰が作ってきたのかと言われたら、我々だと言わざるを得ない年齢です。「今さらあなたたちに何かしてもらっても」と若い人たちは思うかもしれない。でも、僕らが「今さらだけど、最後に責任を果たさせてくれないか」と言って新しい時代を作るために役立つことをしておきたい。そんな風に僕ら世代みんなが思って実践したら、それだけでも世の中はかなり良い方向へ進むのではないかと、何かそういうことを観る者に期待している作品なのではないかと感じています。

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提供:ディズニープラス

とはいえ、私も視聴したのはまだ3話まで。この後、どんな展開になり、主人公がどこまで変わるのか変わらないのか、我々はさらなる絶望を見せられるのか、それとも一つの光明が示されるのか、そしてそのキーマンは誰なのかとあれこれ想像しているところです。今こそ見たい作品です。配信が始まったら続きを皆さんと共に楽しもうと思います。

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ほり・じゅん
1977年兵庫県生まれ。2001年、NHK入局。アナウンサーとして報道番組などを担当。12年、市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げる。13年にNHKを退局。現在、「堀潤モーニングFLAG」(TOKYO MX)のMCをはじめ、独自の取材、報道・情報番組、執筆など多岐にわたり活動。

STORY

あらゆるスキャンダル、センセーショナルな事件を、時にもみ消し、時に明るみにさらして解決してきた国家の黒幕、“フクロウ”こと大神龍太郎(田中泯)。「道筋を正すため」と暗躍を繰り返す父親に反して、対極的な生き方で「正義」を掲げる大神龍(新田真剣佑)。ある日、大神家と親交の深かった次期総理候補の息子が謎の死を遂げ、龍太郎は国家の裏側から、龍は真正面から政界に潜む巨悪の正体へと近づいていくーー。カネ、名声、女、権力……あらゆる欲がうごめく世界で、それぞれがたどり着いた衝撃の結末とは?

●配信:ディズニープラス「スター」で独占配信。4月24日(水)に1話〜5話、5月1日(水)に6〜7話、5月8日(水)に8話〜最終10話を配信。
●出演:田中泯、新田真剣佑、安藤政信、長谷川京子、中田青渚、萬田久子、大友康平、益岡徹、原田美枝子、中村雅俊
●エグゼクティブ・プロデューサー&脚本:デビッド・シン(『時をかける愛』)
●演出:森義隆(『宇宙兄弟』)、石井裕也(『舟を編む』)、松本優作(『Winny』)