朝日新聞社が中心となり実施する「未来事業イノベーションアワード」(特別協賛:三菱商事)の最終審査会と表彰式が、2024年10月25日、東京ミッドタウン八重洲カンファレンスで開催されました。
昨年の「地域事業イノベーションアワード」を発展させた本アワードには、全国から多数の応募があり、最終候補に選ばれた8組のファイナリストが、熱のこもったプレゼンテーションを披露。厳正な審査を経て、各賞を決定しました。

未来事業イノベーションアワードとは?

2040年以降、働き手の中心となる現役世代(15~64歳)が今の8割になる「8がけ社会」の到来とともに、様々な社会課題に直面することが予想されます。こうした未来の課題に対する解決策となりうる革新的なアイデアやビジネスプランを学生たちから募集し、よりよい未来をつくることを目指すプロジェクトが、「未来事業イノベーションアワード」です。

プレゼンテーション開始前には、「未来事業イノベーションアワード」に特別協賛する三菱商事 広報部長 岡本卓馬氏の言葉が、ファイナリストたちを力づけました。

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三菱商事 広報部長の岡本卓馬氏

「昨年の地域事業イノベーションアワードも三菱商事として特別協賛させていただきましたが、皆さまのアイデアは地域内に留まるものではなく、日本の未来をより良く元気にできるポテンシャルを秘めていると強く感じたこともあり、朝日新聞社とも相談の上、今回からは『未来事業イノベーションアワード』と改称いたしました。とはいえ、根本にあるわれわれの考えは変わっておりません。世の中にある課題を解決して、より良い世界をつくりたい。これは、弊社の企業理念にも通ずるところです。最後に、著名な経営学者ピーター・ドラッカーの『The best way to predict the future is to create it.』=『未来を予測する最良の方法は未来をつくることだ』という言葉を皆さまに贈らせていただきます」

ファイナリスト8組が堂々のプレゼンテーションを披露

張りつめた雰囲気の中、いよいよ最終審査会がスタートします。8組の学生たちは、5分間という限られた時間の中で、自らのプロジェクトについて、堂々とプレゼンテーションを行います。その後の審査員との質疑応答でも、質問に真正面から向き合っていました。

グランプリ:ビールの「消費」を社会への「投資」に変える ―社会的価値の「見える化」プロジェクト―

[登壇者]佐藤稜さん(岩手大学)

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佐藤稜さん

私たちは岩手県で、地域経済理論に基づいた地域発展の仕組み作りに挑戦しています。プロジェクトの基盤として、国内自給率の低いビール麦を県産化し、「県産原料100%ビールの生産体制」を構築しました。県産原料の活用は、地域資源の活用促進や地域経済循環の向上、環境負荷の低減など多くの便益をもたらします。しかし、このような社会的価値は商品価値として十分に消費者に伝わっていません。そこで本プロジェクトでは大学と連携し、社会的価値を定量評価して商品価値に変える「認証制度」の実現に取り組みます。さらに、メディアを用いて地域発展の理論を消費者に広めながら、商品の購入を通して社会の発展に消費者も参加できる仕組み作りを目指します!

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image04_award_佐藤稜さん受賞

[登壇者のコメント]
「これほど名誉のある賞をいただけるとは思っておらず、うれしい限りです。賞金で来年はいくらか予算に余裕ができるので、有効に使わせていただきます。社会課題解決に関しては『いつか、未来には、課題を解決します』という姿勢では駄目だと感じています。具体的な期限を設けて、それを周知することが大事です。そこで、私たちのチームでは、2030年までに何らかの成果を出します。自分たちを奮い立たせる意味からも、この場をお借りして、宣言いたします」(佐藤さん)

[審査員からの講評]
「原体験からの思いが乗っていて、素晴らしいプロジェクトだと感じました。周りを巻き込みながら進められている点も素晴らしいですね。ただ、一点、ビールは今想定されている価格の5倍でもよいのではないでしょうか。クラフトビールには、千数百円するものも少なくありません。胸を張って、価格は妥協せずに設定することをお勧めします。審査員のわれわれもサポートできることがあると考えておりますので、引き続き、事業を前に進めていただくことを期待しています」(審査員・一般社団法人Green Innovation 代表理事・菅原聡氏)

準グランプリ:プライバシーも守れる防犯カメラ「プライバブルカメラ Kosmos」

[登壇者]佐藤大稀さん(早稲田大学)

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佐藤大稀さん

私たちは、監視カメラを設置しづらい場所での暴力の根絶を目指し「プライバブルカメラ Kosmos」を開発しました。まずは保育園を中心に導入を進めることで、安全かつプライバシーを守ることができる空間を提供します。保育園での虐待は毎年のように報告されていますが、一方で過度な監視や管理は保育士の離職にもつながり、監視カメラの設置は難しいのが現状です。ブロックチェーン技術を用いて“問題があったときしか映像を閲覧できない仕組み”を構築したプライバブルカメラなら、プライバシーも安全も両方を守れます。

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image07_award_佐藤大稀さん受賞

[登壇者のコメント]
「このような場所で発表する機会を与えていただきありがとうございます。これまでの取り組みや事業に対して期待、評価していただけたことを非常にうれしく思います。今回の受賞に満足するのではなく、これを大きなきっかけ、ステップとして事業をさらに推進し、誰もが安心して暮らせるより良い社会を築くことを目指して、今後も努力を続けていきます」(佐藤さん)

[審査員からの講評]
「保育士の方のプライバシーを守りながら、表面化しにくい虐待の解決を目指すということで、非常に有意義であると思います。若い年代の方だからこそ、ご自身が保育園、幼稚園に通っていたころの経験も記憶に新しく、気付けることがあるかもしれません。技術面ではこれからまだまだ改良を進める必要がありそうですが、画期的なカメラを完成させて、虐待等の問題を解決していただけることを望みます」(審査員・菅原聡氏)

特別賞:LEUK PROJECT (ルックプロジェクト)

[登壇者]巴山未麗さん(慶應義塾大学)

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巴山未麗さん

今、凄いスピードで世界の言語が消滅しています。私は危機に直面している少数言語の未来を変えたいと考え、言語多様性の維持とその価値の向上を図ることを目指してプロジェクトを立ち上げました。少数言語の情報を必要としている研究所や企業に言語データを販売したり、一般消費者向けに少数言語に関連した製品やサービスをフェアトレード市場に流通させたりすることで、その話者が経済的に自立できる仕組み作りを進めています。また、消費者がこれらの商品を購入することで少数言語とその文化に貢献し、言語の多様性を楽しみながら支援する意識を高めてもらうのも狙いの1つです。

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image10_award_巴山未麗さん受賞

[登壇者のコメント]
「まさか賞をいただけると思っていなかったので、驚いています。緊張しましたが、友だちに話すような気分で楽しくプレゼンテーションすることができました。社会的インパクトの面だけでなく、ビジネスの仕組み化という点で、皆さんの発表がとても参考になります。これから言語の魅力を様々な人に広げて、将来的には多くの少数言語を守っていける大きなプロジェクトに育てていきたいです」(巴山さん)

[審査員からの講評]
「何よりも、少数言語話者の方々が暮らす場所に何度も足を運ぶ、その行動力に感銘を受けました。さらに、フェアトレードを通じて少数言語話者の経済的支援を行うというアイデアも、とても興味深いものです。今後はマネタイズの部分が課題になることが予想されますが、われわれも含め、周囲の人の力も借りながら、持ち前の行動力で乗り越えていってほしいと思います」(審査員・菅原聡氏)

ファイナリスト:「令和時代の楽土創造プロジェクト」~住み慣れた地域で快適に暮らし続ける

[登壇者]千原顕勝さん(東京大学)

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千原顕勝さん

このプロジェクトの目的は、人口減少時代に適応した地域づくりを目指して、誰もが住み慣れた地域で快適に暮らし続けられるようにすることです。手法としては、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)のスキームを活用し、地域公共交通を維持するための多機能交通ターミナルを整備するとともに、様々な地域課題を解決するためのコミュニティビジネスと雇用の創出を行い、これらの事業成果に応じて地方自治体から成果報酬を得ます。

[登壇者のコメント]
「今まで、こうしたアワードに応募した経験がほとんどない中で、ファイナリストに進出でき、率直に様々なアドバイスをいただきたいと考えていました。ほかの皆さんとの経験値の差を実感することができました」(千原さん)

ファイナリスト:課題を強みに:日本の介護現場から学ぶ国際視察・研修事業

[登壇者]金子智紀さん(慶應義塾大学大学院)

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金子智紀さん

本プロジェクトは、高齢化が進む東アジア諸国などを対象に、日本の優れた介護実践のノウハウを提供し、国際社会への貢献と持続可能な収益モデルの構築を目指す取り組みです。日本の介護の質や制度への注目が高まる中、外国政府や法人に対して、日本の現場を直接視察する機会と、ケアの運営方法に関するe-ラーニングや研修プログラムを包括的に提供します。この事業の柱は、視察コーディネートサービスとオンライン学習コンテンツの2つです。

[登壇者のコメント]
「自分が慣れている学会や学術発表のルールに縛られることなく、自由に発表することができ、またその内容の社会的な意義を認められて、ファイナリストに選んでいただけたことは、率直にうれしく思います」(金子さん)

ファイナリスト:見ても見なくても見えなくても楽しめる! 視覚障害者も働ける日本初のインクルーシブカフェ

[登壇者]浅見幸佑さん(立教大学)、三浦輝さん(早稲田大学)

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左から、三浦輝さん、浅見幸佑さん

私たちは、視覚障害者と晴眼者(視覚障害のない人)が共に楽しめる機会を創出する活動を行う中で、両者が新しくかかわる機会が少ないこと、視覚障害当事者の職業・アルバイト選択の自由が限られていることを課題だと感じてきました。そこで、それらの課題の解決を目指すモデルケースとして、解決視覚障害のある人もイキイキと働くことのできるカフェ、見ても見なくても見えなくても楽しめるカフェを作るプロジェクトに取り組みます。

[登壇者のコメント]
「ファイナリストの皆さんのプレゼンテーションをワクワクしながら拝見しつつも、これから事業規模をどのように拡大していくかが自分たちのプランの最重要課題だということにあらためて気づかされました」(三浦さん)

ファイナリスト:CottonSketchPen 好きな形のわたを作り出す

[登壇者]岡空来さん、南田桂吾さん、中田裕紀さん、金澤政宜さん(4名とも、東京大学)

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左から、南田桂吾さん、金澤政宜さん、中田裕紀さん、岡空来さん

私たちが製作した「CottonSketchPen」は、身の回りにあるプラスチックをその場でリサイクルし、“わた”を生成するポータブルデバイスです。旅先に持っていけば、ペットボトルなどのプラスチックゴミからわたを作り、防寒着やクッションから梱包材まで、幅広いオブジェクトを作り出すことが可能です。それによって、旅行時に荷物がかさばるという不便を解消できるのと同時に、環境に配慮した物の循環も進められ、快適な旅行体験をサステイナブルに実現します。

[登壇者のコメント]
「プロダクトも作り、『勝てるぞ』と思っていたこともあって、賞を取れなかったのは悔しいです。皆さんのプランと比較し、自分たちのアイデアの欠点にも気づけたので、さらにブラッシュアップして、再チャレンジしたいですね」(南田さん)

「抽象的な面白いアイデアに対して、社会に受け入れられるまで噛み砕いていく作業がまだ足りないし、訓練していかないとと感じました。次の機会に向けてメラメラ燃えています」(中田さん)

ファイナリスト:Bio Shield-環境を守るスマート生物防除システム

[登壇者]河原永昌さん(慶應義塾大学)

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河原永昌さん

日本の農業では、少子高齢化による労働力不足、農薬に依存した害虫管理による環境負荷の増大といった問題が進行しています。そこで、持続可能で効率的なバイオロジカルコントロール(生物的防除)技術を適切に導入し、最新のテクノロジー(AI、IoT、ドローン等)と自然の生態系も活用しながら、環境にやさしい方法で迅速かつ効果的に害虫に対処できるシステムを構築することによって、労働効率の向上と環境保全の両立を目指します。

[登壇者のコメント]
「社会実装可能なレベルにまで落とし込まれているビジネスプランが多く、皆さんのレベルの高さを感じました。私自身はまだもがき続けているところですが、何か一つ形にできるように、今後も努力していきます」(河原さん)

社会は「信用」で動いている!
これからのキャリアで役立つ、お金の使い方を学ぶワークショップ

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プレゼンテーション終了後、審査員による最終審査の結果が出るのを待つ間、学生たちは、株式会社LRN(ラーン)代表の菊池紳氏がファシリテーターを務めるグループ・ワークショップに参加しました。できるだけ同じプロジェクトのメンバーが隣り合わないようにして、2つのテーブルに分かれて、席につきます。

ワークショップのテーマは「オカネの良い使い方」です。もし賞金が入ったら、お金を何に使うのか、何に使わないのか。それ以外に、やっておくべきこと、決めるべきことは何か。それらの問いについての答えをテーブルごとに出し合って、ディスカッションを行います。

議論を深める中で、菊池氏が伝えたかったのは、マネーリテラシーを身につけることの重要性です。プロジェクトの推進、事業化にはもちろん、これから社会人として活躍していく上でも必ず役に立つ知識の一端に触れられて、学生たちにとって貴重な時間となりました。

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大事なのは、プロジェクトを主導する人の熱量
言葉に乗せて周りを巻き込んでいって

表彰式の最後には、朝日新聞社メディア事業本部の堀内隆・プロダクト担当本部長補佐が、審査員を代表して総評を行いました。

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「プロジェクトを動かしていく上でまず大事なのは、主導する人のワクワク感、そして、熱量です。皆さんからは、それらを十分に感じ取ることができました。ただ、どんなプロジェクトでも、その規模が大きければ大きいほど、自分一人だけで動かしていくには限界があり、仲間や様々なステークホルダーを巻き込んでいく力が求められます。

その要素の一つとして、メディアの立場にある私が特に強調しておきたいのが『言葉』の力です。自分が思っていることが相手にきちんと伝わり、共感を得て、実際に行動を共にしてもらうためには、声に出したものであれ、書いたものであれ、言葉が重要な役割を果たします。その言葉は、見栄えのよいものである必要は全くありません。そうした視点も持ちながら、これからも頑張っていっていただきたいと思います」