契約の確認や手続き、災害時の迅速なフォロー、家族とのつながり—。 JA共済アプリは、共済の価値をスマホに凝縮した。2024年9月のリニューアルで画面設計や機能・操作性を大幅に見直し、グッドデザイン賞とRed Dot Design Awardをダブル受賞。さらに、利用者の声を反映した「デジタル防災訓練」や「かぞく共有」など、独自の機能も評価を集めている。 開発とリニューアルを主導したJA共済連 事務企画部 事務企画グループ 調査役の岸本 大さんに、刷新の背景と未来への展望を聞いた。

なぜ刷新?非対面でも“つながり”を保つために

新型コロナの拡大で、組合員・利用者とJAとの直接の接点は細り、今までどおりの意思疎通が難しい時期が続いた。そこでJA共済は、非対面でも確かなつながりを保つためにアプリの提供を開始した。ただ、初期は「リリース優先」で開発を進めたため、アプリの役割や位置づけが曖昧で、利用は伸び悩んだ。転機となったのが2024年9月の全面リニューアルだ。

岸本 「リニューアルでは、利用者目線で使いやすさを徹底し、共済の価値をデジタルでどう表現するかを考え抜きました。契約確認・各種手続き・お知らせまで、いざという時に頼れる機能を一つのアプリにまとめています。」

防災も手続きも、スマホで完結。世界が認めた「JA共済アプリ」が届ける”日常の安心”
JA共済アプリのファーストビュー。契約や保障の内容などがすぐにわかるデザイン

利用者の声をもとに生み出した、
直感的UIと平易な言葉

リニューアルの柱はファーストビューの再設計と専門用語の平易化だ。ホーム画面では、加入している共済と証書番号、手続き状況に応じたお知らせが一目でわかる。共済掛金の払込みや控除証明書の発行など、時期ごとの“やるべきこと”を取りこぼさない工夫だ。

さらに、専門用語を可能な限り排し、誰にとっても理解しやすい言葉遣いへ統一。リニューアルにあたって実施したユーザーインタビューで見つかった「わかりづらさ」を一つずつ潰していった。

岸本「複数の共済に加入している方でも、契約内容や保障総額を一つの画面で横断的に確認できます。多くのアプリでは、保障の種類ごとにしか情報を見られないケースが一般的です。この体験を提供できるのは業界でも珍しく、非常に画期的だと考えています。」

世界が評価。デザイン賞ダブル受賞が示す「使いやすさ」

防災も手続きも、スマホで完結。世界が認めた「JA共済アプリ」が届ける”日常の安心”
リニューアル後、グッドデザイン賞やRed Dot Design Awardを受賞

操作性の検証には、主要利用層の30〜60代に加え、Z世代にも参加してもらった。結果、直感的で迷わない操作感が評価され、グローバル・国内のデザイン賞を受賞した。リニューアル後は登録者数が130万人を突破し(2025年11月末時点)、アクティブユーザー数がリニューアル前の2倍に増加。高齢層からも「使いやすい」という声が広がり、アプリを通じて日常的に契約内容を確認する習慣も根付いてきた。

岸本「収入があった時やライフプランを考えるタイミングに、アプリで契約内容を確認される方が多いです。自動車事故などのいざという時に備えて、アプリからの連絡手順を事前に確認いただくケースも増えています。」

防災をもっと身近に「デジタル防災訓練」

2025年8月に追加された「デジタル防災訓練」は、災害発生時の避難行動から生活再建までをスマホで疑似体験できる機能だ。JA共済は長年にわたり、災害時に実際に現地に赴き被害確認・損害査定を行ってきた。その経験から、“適切な行動と備えを、もっと身近に”という想いが強い。

JA共済連が実施した防災意識調査(2025年8月)では、「3年以上防災訓練をしていない」と答えた人が全体の約7割に上る実態も判明した。後回しにされがちな防災を、手軽に・大切な人と一緒に取り組める仕組みを目指した。

防災も手続きも、スマホで完結。世界が認めた「JA共済アプリ」が届ける”日常の安心”

岸本「臨場感と“自分ごと化”が鍵でした。画面演出やストーリー形式で没入感を高め、LINEで家族やパートナー、友人に参加を促すこともできるようにしています。『大切な人が誘ってくれたからやってみよう』という心理が防災の第一歩になるはずです。」

「かぞく共有」——情報の分断をなくす

また、2025年4月に追加した「かぞく共有」は、自身の共済契約の情報を、アプリを通じて家族と共有できる機能だ。

災害時、避難行動などによって家族が離ればなれになるケースは少なくない。こうした時に、契約者本人だけでなくその家族が保障内容を知らないと、手続きが後手に回り、生活再建が遅れることもあり得る。そこで、直感的なUIで複雑な操作なく契約情報を共有し、家族でも確認できるようにした。

 岸本「生活再建に向けて利用者の方に一刻も早く共済金をお届けしたい。その想いから開発しました。かぞく共有で契約情報を受け取った方からは、『もしもの事態が発生する前に、契約情報を家族に共有できてよかった』という声をいただいています。」

“もしも”の瞬間を支えるアプリへ。成果とこれから

防災も手続きも、スマホで完結。世界が認めた「JA共済アプリ」が届ける”日常の安心”
JA共済アプリの安心ポイント

リニューアルと機能拡充の後、利用者からは「手続きがこんなに簡単だとは思わなかった」「事故連絡がスムーズにできた」という声が多数寄せられている。例えば入院・手術共済金の請求手続きは最短5分ほどで完了するなど利便性も向上し、利用者が窓口に赴かなくても済むケースも増えている。

2025年12月にはチャットボット機能も加わり、疑問をその場ですぐに解決できるように。今後は、事故連絡の手順をより具体的に体験できる機能など、要望の多かったアップデートを予定している。

岸本「JA共済アプリは、JA共済と組合員・利用者一人ひとりをつなぐハブのような存在になれればと思っています。『いざというときに役立つアプリ』として、共済とともに、組合員・利用者の皆さまの人生の重要な瞬間に寄り添っていきたいです。」

JA共済アプリは、単なる契約管理ツールではない。防災、家族とのつながり、災害時の行動支援まで、生活の安心を支えるプラットフォームへ進化し続けている。

 “助け合い”という共済の価値を、デジタルの力で確かな日常の安心につなげていく。常に組合員・利用者のそばで機能し、いざというときに迷わず頼れる存在として。

岸本 大(JA共済連 全国本部 事務企画部 調査役/ITストラテジスト)
早稲田大学卒業後、2014年にJA共済連(全国共済農業協同組合連合会)に入会。開発・経営企画部門を経た後に野村総合研究所に転職し保険業界向け新規事業を推進。2023年に再びJA共済連へ戻り、事務企画部でデジタルサービスの企画・開発を担当。JA共済アプリ刷新を主導し、Red Dot Design Awardなど国内外のデザイン賞を受賞した。利便性と業務効率を両立するIT施策の立案・推進に取り組んでいる。