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世界が認めた、ひとしずく 〜ジャパニーズウイスキーの現在地〜
世界が認めた、ひとしずく 〜ジャパニーズウイスキーの現在地〜

海を越え世界で愛される日本文化のリストに、近年は「ウイスキー」が加わっている。
今や本場の欧米をも魅了するジャパニーズウイスキーの原点、
サントリー「山崎」を生んだ土地、人、技術を、歌舞伎俳優の尾上松也さんが訪ねた。

サントリー山崎蒸溜所
サントリー山崎蒸溜所
電話番号:075-962-1423
(電話受付時間 10:00 - 17:00)
所在地:〒618-0001大阪府三島郡島本町山崎5-2-1
営業時間:10:00〜16:45(最終入場 16:30)
休業日:年末年始・工場休業日(臨時休業あり)

名水と豊かな自然に恵まれた
ジャパニーズウイスキー誕生の地

名水と豊かな自然に恵まれたジャパニーズウイスキー誕生の地

京都の南西、天王山のふもと。例年よりもゆっくりと秋色に染まり始めた山肌を背景に、サントリー山崎蒸溜所が静かにたたずむ。

今からおよそ100年前、日本のウイスキーはこの場所で産声を上げた。桂川、宇治川、木津川という三つの河川がもたらす湿潤な気候と、年間を通じた寒暖差はウイスキーの本場スコットランドを思わせる。加えて名水「離宮の水」の存在が、鳥井信治郎(サントリー創業者)にこの地を選ばせる決め手になったという。

「ウイスキーがどうやってできるのか、これまで見たことがないので楽しみです」

蒸溜所の正面に掲げられた「山崎」の文字を見上げ、松也さんが期待に満ちた声を上げる。サントリーの現チーフブレンダー福與伸二さんの案内で、まず足を運んだのはテイスティングラウンジだ。

テイスティングラウンジ 壁一面にずらりと並べられた原酒のボトル

壁一面にずらりと並べられた原酒のボトル。明るい琥珀色に染まる室内は、まるでウイスキーグラスの中に自分が立っているかのようだ。松也さんが思わず「きれいだ」とつぶやく。水と大麦麦芽と酵母という自然の原材料だけで、どうしてこれほど人を魅了する世界がつくれるのか。

歌舞伎とウイスキー、形は違えど人を「酔わせる」という点で両者は決して遠くない。ウイスキーづくりの秘密をのぞきたいという気持ちが、松也さんの中でますます膨らんでいく。福與さんがそこで教えてくれたキーワードは、「つくり込み」と「つくり分け」。その言葉が意味するものを追って、松也さんは蒸溜所のさらに奥へと進んでいく。


ブレンドの可能性を無限に広げる
「つくり込み」と「つくり分け」

ブレンドの可能性を無限に広げる「つくり込み」と「つくり分け」

粉砕した大麦麦芽を64度の温水と混ぜ合わせる巨大な仕込み槽と、酵母の活動を促す木の発酵槽。工程が進むにつれて、あたりに漂う甘い香りは重さと密度を増していく。ウイスキー原酒の品質を上げるための丁寧な「つくり込み」に、松也さんは声を殺して見入っている。

発酵が進んだ醪(もろみ)がアルコール分約7%になると、次の蒸溜工程へ。松也さんは、高さ5メートルを超える蒸溜釜16基が並んだ迫力の光景に驚きつつ、何かに気づいたように目を止める。

「どれひとつとして同じ形はないんですね。なぜこんなにいろんな種類があるんですか?」

よく見ると、真っ直ぐ伸びた釜もあれば金管楽器のように途中が大きく膨らんだものもある。工場長の有田哲也さんによると、それは「つくり分け」のためだという。丸みを帯びたバルジ型は分離するアルコールの純度を高め、ストレート型はアルコール以外の微量成分を残し、原酒の味わいをより複雑にする。

こうして得られたニューポッド(できたての原酒)は、初めからそれぞれ違う個性を持って生まれてくるという。

高さ5メートルを超える16基の蒸溜釜

「ここはまた一気に世界が変わりますね」

続いて貯蔵庫に足を踏み入れると、松也さんの声が一段と高くなった。心地よい静けさと暗さの中、周囲を埋め尽くす無数の木樽。蒸溜所全体に漂う甘い香りが、この場所ではひときわ濃厚だ。

よく見ると樽の大きさや形も決して一様ではない。材質は、スペイン産のオークやアメリカ産のホワイトオークなど5種類。なかでも東アジア原産のミズナラの樽が醸し出す繊細で多層的な芳香は、ジャパニーズウイスキーを特徴づけるものとして海外での高い人気の一因となっている。

同じ日に製造された原酒を同じ材質の樽に詰めたとしても、年月を経たのちに生まれる味わいはそれぞれに違った表情を見せるという。「つくり込み」と「つくり分け」がどちらも大事だという意味がわかってきた。松也さんは深くうなずいた。


国際的な蒸溜酒コンペで
史上初3年連続最高賞の快挙

国際的な蒸溜酒コンペで史上初3年連続最高賞の快挙

英ロンドンで毎年開催される「ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)」は、ウイスキーをはじめジンやウォッカ、ラム、ブランデー、焼酎など多様なスピリッツ(蒸溜酒)がエントリーする国際的なコンペティション。今年、この舞台でサントリーの「山崎18年」が最高賞のシュプリーム チャンピオン スピリットに輝いた。

数千種の全エントリーの中でたったひとつの最高賞に選ばれるだけでも大きな栄誉だが、これは2023年の「山崎25年」、2024年の「山崎12年」に続く受賞であり、同一ブランドが3年連続で最高賞というのは、ISCの歴史の中でも初の快挙だ。

「3年連続はさすがにないかと思っていたので驚きました。これまでは一部の愛好家やプロからの評価でしたが、現在は海外の一般ファンにも人気が広がってきたようでうれしく思っています」

現地でトロフィーを手にした福與さんにとっても、今回の受賞は望外の喜びだったようだ。

同い年のブレンダー・高木秀道さんと出会った松也さん

その後、福與さんの案内でブレンダー室に足を運んだ松也さん。「山崎」のようなシングルモルトウイスキーは、ひとつの蒸溜所でつくられた原酒だけをブレンドして製品に仕上げる。しかし先ほどから見てきたように、樽のなかで長い熟成を経た原酒は味わいも香りもひとつとして同じものはないといっていい。そうした個性あふれる原酒を丹念にテイスティングし、「山崎」などの名にふさわしいブレンドを行うのがブレンダーの仕事だ。

同い年のブレンダー・高木秀道さんと出会った松也さんは、「いつからこの仕事を?」「ブレンダーの難しさは?」と興味深げに質問攻めにしていく。

「ブレンダーの難しさは正解がないことです。こうブレンドすれば必ずうまくいくというものがないので、いつも仲間とディスカッションしながら考え続ける毎日です」

高木さんのその言葉に福與さんが補足する。たとえば機械で「山崎12年」の成分を細かく測定し、その通りにブレンドしようとしても、成分と成分の間に測定できない何かが残る。機械は細部を分析することは得意だが、全体を捉えることは人間にしかできないのだと。そういわれて見まわすと、確かにこのブレンダー室には計測機器の類がひとつもない。

「すごいな、なんて大変な仕事なんだろう。でも面白い」

松也さんが心から感心したように声を上げた。


今だけでなく未来のために
妥協なく続く「ものづくり」

今だけでなく未来のために妥協なく続く「ものづくり」

最後に訪れたのは「パイロットディスティラリー」。ここまで見てきた仕込み〜発酵〜蒸溜という工程を小規模で行う研究施設だ。「山崎」をより突き詰め、さらに新しい味わいを生み出すための取り組みが、ここでは日々続けられている。しかし、これまでにないアプローチで原酒を生み出したとして、それが熟成後にどう育つか、答えが出るのはずっと先のことだ。

「その頃には私はもう定年退職しているでしょうけれど(笑)。ここは、サントリーウイスキーの未来をつくる場所といえます」

ブレンダー室長・明星嘉夫さんの言葉にうなずく松也さん。今ではなく未来のために、ひたむきに目の前の仕事に向き合う。その姿勢は、歌舞伎という伝統芸能を未来へつなぐ活動を続ける松也さんの思いとも重なる。

日本人ならではの丁寧な仕事と挑戦する心がジャパニーズウイスキーの高い評価につながっていることがよくわかった。同じ「ものづくり」の世界に身を置く者として、見習いたいことがたくさんある。そう感想を述べ、この日いちばんの笑顔を浮かべた松也さん。1日をかけてウイスキーづくりのすべてを見て歩いたのちに、最後につぶやいたのはこんな言葉だった。

「帰ってウイスキーが飲みたくなりました(笑)」

尾上松也さん

GALLERY

鳥井信治郎が再建に尽力した椎尾神社は今も蒸溜所とつながりが深い
鳥井信治郎が再建に尽力した椎尾神社は今も蒸溜所とつながりが深い
「山崎」には全国名水百選「離宮の水」と同じ水脈の水を使用
「山崎」には全国名水百選「離宮の水」と同じ水脈の水を使用
仕込みを終えた麦汁に酵母を加え木製の発酵槽に
仕込みを終えた麦汁に酵母を加え木製の発酵槽に
発酵が進んだ醪(もろみ)。アルコール度数は約7%に
発酵が進んだ醪(もろみ)。アルコール度数は約7%に
ラベルを貼った原酒が壁一面に並ぶテイスティングラウンジ
ラベルを貼った原酒が壁一面に並ぶテイスティングラウンジ
まるで時が止まったような静けさが漂う貯蔵庫
まるで時が止まったような静けさが漂う貯蔵庫
五感を研ぎ澄ましてテイスティングを行う福與伸二さん
五感を研ぎ澄ましてテイスティングを行う福與伸二さん
「ものづくり」の真摯な姿勢は創業時から変わらない
「ものづくり」の真摯な姿勢は創業時から変わらない
サントリー創業者・鳥井信治郎(右)と二代目マスターブレンダー・佐治敬三(左)
サントリー創業者・鳥井信治郎(右)と二代目マスターブレンダー・佐治敬三(左)
12年よりさらに年代を経た原酒も使用される「山崎12年」
12年よりさらに年代を経た原酒も使用される「山崎12年」

歌舞伎俳優 尾上松也

歌舞伎俳優
尾上松也

おのえ・まつや/1985年東京生まれ。父は六代目尾上松助。90年「伽羅先代萩」で初舞台、近年は立役として「魚屋宗五郎」の魚屋宗五郎、「東海道四谷怪談」の民谷伊右衛門などの大役を担う。歌舞伎のほかドラマ、映画、ミュージカル等でも活躍している。現在はミュージカル「エリザベート」にルイジ・ルキーニ役として出演中。


本稿は、BS朝日で10月26日に放送の番組を再構成しました。

シングルモルトウイスキー 山崎

シングルモルトウイスキー 山崎

日本最古のモルト蒸溜所、山崎蒸溜所で生まれるモルト原酒のみを使用したシングルモルトウイスキー。日本の四季の中で育まれた原酒の力強くも繊細な味わいと、重厚かつ甘やかな香りが特長です。


BS Asahi 尾上松也が訪れる世界を魅了するジャパニーズウイスキー 見逃し配信中 2025年11月25日(火)22:00まで
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お問い合わせ:サントリー株式会社 https://www.suntory.co.jp/whisky/yamazaki/
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お酒はなによりも適量です。のんだあとはリサイクル。