朝日新聞

マレーシアの「隠れた秘境」 ルダン島でウミガメと泳ぐ旅

LIFE
2026.07.06

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マレーシアの隠れた秘境、ルダン島のビーチの風景

マレーシアの隠れた秘境、ルダン島のビーチの風景

  • 池上桃子
    池上桃子
    ライター、マレーシア在住会社員

    東京からクアラルンプールへ移住し、日系企業の現地採用として働く30代。子供時代を日本、シンガポール、アメリカで過ごし、大学卒業後は新聞記者やウェブ広告プランナーとして国内3都市で働きました。マレーシアの身近な日常、多民族国家で暮らすおもしろさ、東南アジアで働くリアルを綴ります。食べること、旅行すること、読むことが好き。

クアラルンプールから夜行バスで6時間

水面のすぐ下、手を伸ばせば届きそうな距離で、野生のウミガメがゆっくりと泳いでいく。そんな光景を体験できる島が、マレーシアにある。

日本人にとって東南アジアのビーチリゾートと言えば、まず思い浮かぶのはバリ島(インドネシア)やプーケット(タイ)だが、マレーシアにも美しい海を楽しめる離島がいくつもある。

アクセスが大変なのがネックだが、たどりつけばきっと後悔しない、まさに「隠れた秘境」だ。今回は、マレー半島の東海岸沖に位置するルダン島での、日常を忘れたひとときを紹介する。

私がルダン島を訪れたのは6月半ば。マレーシア人の友人ら3人と、クアラルンプールから旅に出た。この時期、島は波が穏やかなベストシーズンを迎え、毎日のように観光客を乗せたフェリーを迎え入れる。

島にたどりつくまでの道のりは、正直、ちょっと過酷だった。平日の夜、仕事を終えた後、クアラルンプールのバスターミナルに集合。午後10時発の夜行バスに乗り、6時間かけて東海岸のトレンガヌ州に向かう。

クアラルンプールのバスターミナル。トレンガヌ州だけでなく、様々な都市へのバスが出発する
クアラルンプールのバスターミナル。トレンガヌ州だけでなく、様々な都市へのバスが出発する

到着したのは朝の4時半。まだ薄暗いバス停のベンチで少し休んだあと、ムスリムの友人たちの朝のお祈りのために近隣のモスクへ向かった。

イスラム教徒でなくてもモスクに入ることはできるが、女性は髪の毛や肌を隠す必要がある。長袖のフード付きパーカを着てきてよかったと思いながらモスクの端っこで待っていると、同じようにお祈りに訪れた年配の女性が近づいてきて、バナナリーフに包んだ朝ごはんをくれた。マレーシアのモスクでは、見ず知らずの人から食べ物を受け取るのはよくある光景だという。

ありがたく受け取り、お祈りのあとは近くの食堂に移動して追加で何品か注文して、みんなで朝食をとった。

食堂で食べた朝食。トレンガヌ州の名物ナシダガン。もちもちとしたお米につけあわせの魚。カレーをかけていただく
食堂で食べた朝食。トレンガヌ州の名物ナシダガン。もちもちとしたお米につけあわせの魚。カレーをかけていただく

朝食の後は船着き場へ行き、いざ、フェリーでルダン島へ。

1時間半ほど進むと、コテージが並ぶ、美しいビーチが現れた!

クアラルンプールを発って約半日。フェリーでうとうとするほど疲れていたが、やっとたどり着いたルダン島の姿に自然と眠気が吹き飛んだ。鮮やかなターコイズブルーの海は穏やかな波を立て、その先に真っ白に輝く砂浜が待ち構える。

あたたかい砂の上に降り立った時には、もうお昼過ぎの時間だった。

海水の下まではっきりと見えるような、透き通った海のビーチサイド
海水の下まではっきりと見えるような、透き通った海のビーチサイド

繁華街のない“手つかずのリゾート”

面積約25平方キロメートルの小さな島には、高級ホテルやショッピングモール、繁華街はない。

滞在先のコテージを中心に、都会から離れた豊かな自然と静けさを楽しむ、「素朴で手つかずのリゾート」という感じだ。

滞在客は圧倒的にマレーシア人が多く、その他は中国からの観光客を見かける程度。滞在中、日本語や韓国語を聞くこともなく、欧米人の姿も見なかった。バリ島やプーケット、ランカウイ島といったメジャーなリゾートに比べると、とても静かな印象だ。

泊まったのは小さな集合住宅のようなコテージ。徒歩1分でビーチまで行ける
泊まったのは小さな集合住宅のようなコテージ。徒歩1分でビーチまで行ける

コテージで少し休憩して、夕方、いざビーチへ!

粉砂糖のようにさらさらした白い砂浜を歩き、透き通ったブルーの海に入って驚いた。陽(ひ)が傾きかけても、水がとてもあたたかいのだ。肩までつかっても、正直「ぬるい」と感じるほど。温水プールのような快適な水温のなか、寄せては返す波を気が済むまで楽しむことができる。

ビーチは広々としていて、人がごった返すこともない。

家族連れや友人同士の集まりが、自由に泳いだり、砂浜で遊んだりしている風景が見られた。一緒に旅したマレーシア人の友人は、過去に東南アジアの様々な島を訪れたが、ルダン島が一番のお気に入りだという。「海の透明度が高くて、ビーチが静かなのが良い」のだという。

ビーチは広々として、決して混みあっている印象ではない
ビーチは広々として、決して混みあっている印象ではない
早朝には虹も見られた
早朝には虹も見られた

滞在2日目。シュノーケリング体験に出かけた。

20人ほどが乗れる船に乗って沖合に向かい、手つかずの海にざぶんと飛び込む。大小さまざま、色とりどりの魚の姿を間近に見られる。

ライフジャケットをつけて、近くにガイドもいてくれるので安心だ。ガイドに手招きされた場所で海水を覗(のぞ)き込むと、ディズニー映画「ファインディング・ニモ」に出てくるクラウンアネモネフィッシュも見ることができた。

ライフジャケットをつけて、船に乗り込みシュノーケリングに向かう
ライフジャケットをつけて、船に乗り込みシュノーケリングに向かう

体長1メートルほどのウミガメが横切る

ハイライトは、野生のウミガメと一緒に泳げる「タートルポイント」へ行くことだ。

「ウミガメと泳げる」と聞いても、最初はピンと来なかった。ウミガメって人を怖がらないの? 嚙(か)まれたりしない? さまざまな不安が湧いたが、友人たちは「なかなかできない体験だから絶対に行こう!」と乗り気だ。

波の穏やかな一角にボートが停(と)まった。

救命胴衣を調整しながら、覗き込んでみると水面のすぐ下に、体長1メートルほどもあるウミガメがスイーっと横切るのが見えた。

人を警戒しないウミガメが、ボートの隣をマイペースに泳いでいく
人を警戒しないウミガメが、ボートの隣をマイペースに泳いでいく

乗客が歓声をあげているうちに、すぐにもう1頭。見渡すと、ボートの周りに十頭ほどのウミガメが集まっていることがわかった。

「船からイカを落として、ウミガメを餌付けして集めているんだよ」と友人が教えてくれた。確かに、ウミガメたちは泳ぐ人々を警戒する様子もなく、自由気ままそのものだった。

野生動物が間近に泳ぐ海に飛び込むのは初めての経験で、戸惑いはあったが、これもなかなかない機会だと思い、シュノーケルをつけて海に飛び込んだ。

海面に顔をつけて覗き込むと、泳ぐ人々の間を縫うようにして、大小のウミガメの姿が見える。大きいものは体長1メートルにもなる。顔がはっきり見えるほど近くを通り、海面に顔を出して息継ぎをする様子も間近に見られた。

ウミガメに触ったり、撫(な)でたりすることは禁じられているが、時々硬い甲羅に足が当たってしまうこともあった。

触れられそうなほど近くをウミガメが泳いでいく
触れられそうなほど近くをウミガメが泳いでいく

「足がイカに見えたのでは?」

最初の戸惑いを乗り越え、すっかりウミガメの存在に慣れてきた頃、友人たちと海に浸(つ)かったまま浮輪につかまり休憩していると――ガブッッ!

左足の甲に強烈な痛みが走り、慌てて足を見ると、小さな嚙み痕が。

近くでその瞬間を見ていた人によると、小さなウミガメ(おそらく子どもだろうか?)が、突然泳いできて私の足を嚙んだのだという。「あなたの足が、餌付け用のイカに見えたのでは?」と笑っていた。

幸い、間違いに気づいたらしいウミガメはすぐに離してくれたのでケガにはならなかった。

クアラルンプールから長い道のりの、小さな島と美しい海。マイペースで少しおっちょこちょいなウミガメたち。ルダン島では、整備されたメジャーなリゾートとは一味違う、「自然の中にお邪魔する」という時間を味わえる。

東南アジアの海を探しているなら、ぜひマレーシアの離島を選択肢に入れてほしい。
その際は、自分の足が「美味(おい)しそうなイカ」に見えないよう、くれぐれもご注意を。 

早起きして見る朝焼けも最高の景色だった
早起きして見る朝焼けも最高の景色だった

「となりのマレーシア~30代、“現地採用”で暮らしてみたら」は今回が最終回です。

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