自分では気がついていなかったけれど、
友人いわく、私の家にはマグカップがたくさんあるらしい。
たしかに食器棚のほかにキッチンの引き出しのひとつが
マグカップ専用のスペースになっているし、
言われてみれば、毎日違うマグカップでお茶を飲んでいる、かも。
どうしてこんなにたくさんのマグカップが集まってしまったのだろう。
改めて考えてみると、それはきっと、日々の生活のなかで、
お茶の時間がとても大切だからなんだと思う。


たとえば夏の盛りがすぎて、朝にふと涼しい空気を感じたとき。
昨日までのグラスではなくて、あたたかみのある赤の、
それもたっぷりとコーヒーを入れられるマグカップを手に取る。
何度も読み返している好きな本のページを出鱈目(でたらめ)にめくって、
目についたページからゆっくりと読む。
ひさしぶりに訪れた、さわやかな朝の時間。
マグカップが季節の変わり目を教えてくれる。
しばらく会っていなかった友人が、
「仕事で近くに来たから」と部屋に寄ってくれた日。
少し繊細なデザインが施されたティーカップに、
旅先で買ったハーブティを入れて出す。
ひとりのときとは違った、よそゆきのティータイムも好き。


仕事やプライベートでいろいろあって、
気持ちを落ち着かせて、
明日からのことを考えたいときには、
日本茶や中国茶がいい。
まずは急須を湯であたためておいて、
茶筒から茶葉をすくって湯を入れ、茶葉が開くまで待つ。
ていねいに、ていねいに。
その時間が、そわそわしていた気持ちを静かに収めてくれる。
お気に入りの茶葉を入れた茶筒には、真鍮(しんちゅう)の茶匙(さじ)が入っていて、
「都」と、立派な刻印が入っている。
以前京都を訪れたとき、一生ものの茶匙が欲しくて作ったもの。
自分の名前をまじまじと見ることなんてあまりないけれど、
この文字を見るたびに、「自分は自分でいい」と思えてくる。
東京で暮らして、仕事をして、恋をしたり、遊んだり。
それはとても恵まれていて、幸せなことだけれど、
欲張りになればなるほど、疲れてしまうこともある。
そんなときは、お茶で一服。
今、自分は何がしたいのか。どんなふうに過ごしていきたいのか。
ほんの数十分立ち止まって、心を整理してみるといい。
もちろん、それはお風呂の時間でもベッドの中でもいいけれど、
おいしいお茶とおやつがあれば、なおさらいいじゃない。

今日のうつわ
青木良太さんのカップ
数あるカップのなかで、一番たくさん持っているのが陶芸家・青木良太さんのもの。岐阜県で制作を行う青木さんは、金や銀、プラチナなど、さまざまな素材や釉薬(ゆうやく)を使って、これまでに見たことのない器を作る気鋭の作家さん。カップの表情もさまざまで、工房や個展に足を運ぶたび新しいものを持ち帰ってしまいます。毎日、何げなく手に取って使うカップですが、じつはそこにときどきの気持ちが反映されていて、なんだか「カップ占い」みたいですね(笑)。
(写真 相馬ミナ 構成 小林百合子)













