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コラム「ワインの歳時記」

ワインとガラスの前衛的なお茶会

2007年12月04日

 ワインを軸にしたお洒落なストーリー。前回の“映画”編に続く第2弾は麹谷宏氏の“お茶会”にフォーカスしてみます。ワインの知識人でもあるグラフィックデザイナーの麹谷氏はワインのラベルデザインやシャンパーニュ用ガラス製ワインクーラーなどの制作も手がけています。なかでも麹谷氏が主催している「ワインとガラスのお茶会」は要チェックです!

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ワインボトルを再生して造った抹茶茶碗

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大茶碗で数名分の「薄茶」を点てる麹谷宏氏。抹茶は「金輪」、御水は富山「満寿泉」の仕込水

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花入はヴィンテージなしの貴重なシャトー・マルゴーのボトル、奥の風炉先は木箱の焼印を利用したもの

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立礼机の上のお道具たち 水指し替わりのシャンパーニュクーラーも

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渋谷康弘ソムリエもお抹茶をサービス。後半日本ワインの講師もつとめました。

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左から甲州シュール・リー2006 、シャルドネ2006、深雪花NV(赤)、志太ヤマソーヴィニヨン2004、桔梗ヶ原メルロ2004

●ワインボトルを再生させた抹茶茶碗

 快晴の11月末、駒沢公園にほど近い伊佐ホームズ駒沢住宅・ギャラリー櫟(KUNUJI)で立礼立茶会が開かれました。前衛的とも言えるこの会では亭主の麹谷宏氏が立ち姿でお手前を披露。お客様は椅子に座る方あり、立ったままの方ありで、「御薄(おうす)」をいただく趣向になっていました。ここで使われた抹茶茶碗は麹谷氏がロマネ・コンティやボージョレの空き瓶を再生して作ったきれいなガラスの器でした!

●茶の湯の“見立て”の精神を生かした新スタイル

 茶の湯の世界で最も大切な“見立て”。これは「この道具でなければならない!」というものではなく、「茶道具でないものを取り込んで組み立てること」を旨としています。麹谷氏は「ものをあるべき姿としてではなく、別のものとしてみる“見立て”こそデザイナーとしての仕事に通じるもの」と語っていました。

 氏にとって茶道の師匠となる裏千家の次男伊住宗晃氏、また、デザイナー仲間の田中一行氏の影響も大きかったようです。その昔、伊住氏、田中氏、麹谷氏の3人が、田中氏の別荘で楽しんだ、茶道具が何もない中での“お茶遊び”。これが麹谷式茶会のベースになっているそうなのですが、茶会自体、すでに故人となってしまわれたおふたりへのオマージュなのかも知れません。

●ユニークなお道具の数々

 麹谷氏の見立てです。せっかくの機会なので一部をご紹介しましょう。

◇掛軸は麻殖生素子氏の装丁による「ロマネコンティ1937」

◇花はシャンパーニュ&ブルゴーニュから1週間前に帰国した際、持ち帰ってきたぶどう樹

◇花入れはシャトー・マルゴーのヴィンテージ表示なしのスペシャルボトル

◇風炉先は木箱の焼印をデザインしたもの

◇茶杓の銘は「切掛」、シャンパーニュのぶどう樹を削って仕上げた作品

◇御茶の銘は「金輪」、お詰めは小山園

◇御水は富山「満寿泉」仕込水

●麹谷宏氏のこだわりにズームアップ

 今回、薄茶は実は冷水仕立てでした。良き味を体験するには、「熱いものは熱く、冷たいものは冷たく」が流儀。そこで冷水を使うにあたっては、富山県にある日本酒メーカー『増寿泉』の仕込水を使っていました。理由は抹茶の中でも「金輪」が一番水に溶けやすいこと、また軟水に合う、ということで日本酒の仕込水を用意したそうです。氏は「皆さん、今日の実験に立ち会ってください」と述べていましたが、水で点てるために、粉の配分や水加減を何度も繰り返し実験し、その結果、最終的にベストな配合を割り出したとか。表面には見えない苦労談もあってのこと、お疲れ様&お見事でした!

●山梨、島根、新潟、静岡、長野の素敵な日本ワインも登場して

「薄茶」の後、ギャラリーは懇親会の場に。参加者はスペインの三つ星“エルブジ”で修行をしてきた山田チカラ氏のフィンガーフード3種類と、麹谷氏がセレクトした日本ワイン5アイテムを満喫。会の冒頭、『ピエール・ガニェール・ア・東京』の渋谷康弘支配人が日本ワインの現状と供出されたワインについて解説していました。朝日新聞で日本ワインの連載をしていた渋谷ソムリエだけに、わかりやすさは秀逸で、参加者からの受けも大変良かったと思います。

 以下、5アイテムの簡単な説明です。

◇ルバイヤート・甲州シュール・リー……明治23年創業、勝沼でも老舗のワイナリー。「甲州種」は日本でしか栽培されていないぶどう品種。さっぱりとして透明感のある白ワイン。

◇奥出雲ワイン・シャルドネ……自然との共生を目指すワイナリー。シャルドネは欧州系品種。2007年国産ワインコンクール銅賞受賞ワイン。

◇岩の原・深雪花(赤)……新潟県にある歴史あるワイナリー。湿度の高い日本の土壌に合わせて造られた交配種(ベーリー×マスカット・ハンブルグ)がマスカット・ベリーA

◇伊豆ワイナリー・志太ヤマソーヴィニヨン……伊豆修善寺近くに位置し、本格的なレストランやテイスティングルームを完備したワイナリー。湿度に強いヤマぶどうと欧州系ぶどうカベルネ・ソーヴィニヨンとを交配して生まれたぶどう品種がヤマソーヴィニヨン。

◇五一ワイン 桔梗ヶ原メルロ……長野県のメルロは国内トップクラスの品質。土壌改良、ぶどう樹の仕立て方などの研究にも熱心。桔梗ヶ原は世界に向けて発信できる評価の高い赤ワイン。

 供出された日本ワインはすべて単独で飲んでも美味でした。特に今回初めていただいたヤマソーヴィニヨンの質とバランスの良さには思わずニッコリ! 麹谷ワインセレクションの5アイテムは超お薦めできます。 

【お薦めの日本ワイン】

  • ルバイヤート甲州シュール・リー 丸藤葡萄酒工業
  • 奥出雲ワイン シャルドネ (有)奥出雲葡萄園

  • 深雪花 赤 (株)岩の原葡萄園

  • 五一ワイン 桔梗ヶ原メルロ(株)林農園

  • 志太ヤマソーヴィニヨン 伊豆ワイナリー シャトーT.S

プロフィール

青木 冨美子(あおき・ふみこ)
慶応義塾大学卒業。(社)日本ソムリエ協会機関誌編集長http://www.sommelier.jp。NHK、大手洋酒メーカーを経て、現在、フリーランス・ワインジャーナリスト。1990年(社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー資格取得。著書に『おいしい映画でワイン・レッスン(講談社刊)』協力執筆『ワインの事典(柴田書店)』監修『今日にぴったりのワイン(ナツメ社)』など。女性誌への執筆、各種企業向けワイン講師のほか、現在、昭和女子大学オープンカレッジの講師として活躍中。個人のBlogは『青木冨美子の公式Blog』

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