動画パネル討論会
パネル
討論会風化させず、いかす
災害時に求められる支援、備えとは
大切なのは被災地と支援チームの「協働」
コーディネーター 長野 智子 フリーアナウンサー
長野 初めに日本医師会災害医療チームJMATについて、改めて教えてください。
中川 日本医師会の災害医療支援は、地域の皆さまに身近な郡市区医師会から、都道府県医師会、日本医師会にいたるまで、全国の医師会の組織力とネットワークを生かして取り組むことが最大の特長です。
JMATはもともと被災地の外からチームを派遣するという計画でしたが、実際には被災地の医師会自らの活動が重要であることから、現在は被災地JMATと支援JMATの「協働」を重視しています。
長野 支援を受け入れる側にとって大切なことは何でしょう。
石井 東日本大震災では多くの救護チームが駆けつけてくださいましたが、被災地は大変混乱しているので、各チームをうまく取りまとめなければスムーズな支援につながりません。どうすれば全てのチームが機能するか、誰がどう取りまとめるのか。それを考えることが災害医療の重要なポイントです。
横田 あれほど広域に及ぶ災害で避難生活が長期にわたると、医薬品のほか燃料や食料などの物不足が深刻になります。物品の備蓄も含め、やはり事前の備えが大切であることを、私自身も支援活動の中で実感しました。
長野 被災地のニーズはこの10年で変わってきていますか。
石井 避難所という平時とは違う環境に長く身を置くと、心身へのストレスが深刻な問題を引き起こすことがあります。最近では「災害保健医療」という言葉が一般的になっているように、運動など避難所での過ごし方や衛生面の指導など、病気の治療以外の面でも医療スタッフには幅広い目配りが求められています。
情報の共有を進め避難所の環境改善を
長野 先ほど中川会長から、震災時にJMATは、被災地の医療体制が復旧するまで支援を続けたというお話がありました。そうした活動の継続が、やはり重要なのでしょうか。
中川 そうですね。被災地の医師会は自らも発災直後から被災地JMATとして活動しつつ、DMATや行政とも連携しながら支援JMATの受け入れ、地元医療機関への引き継ぎまで、全ての段階に責任を持って関わります。そのために大切なのが、関係者が普段から「顔の見える関係」を築いておくことです。
また、震災時には被災した方々の診療記録が散逸し、医療チームでの情報共有が困難だった反省から、現在は「J-SPEED」という診療日報のシステムの整備に協力するとともに、非常時に衛星回線を使用して情報共有を図るための訓練も続けています。
横田 2018年の西日本豪雨の際には、避難所で原因不明の皮膚疾患を訴える方が多くいました。個々の避難所では初めのうちその原因が不明でしたが、「J-SPEED」によって同じ症状が他の避難所にもあることが分かり、衛生のために散布した消毒剤が原因らしいと突き止めることができました。被災者の健康を守るために、情報共有がいかに大切かを示す好例です。
石井 近年は、個人や家族のプライベートスペースに配慮したり、生活不活発病の予防のために段ボールベッドを活用したり、避難所の厳しい環境を少しでも改善するための工夫も続けられています。
中川 高齢者や赤ちゃん、小児、女性など、避難所にはいろいろな方がおられますが、JMAT隊員は日頃そうした多様な方々と接している医師や看護師等が中心ですので、被災者のニーズにきめ細かく対応していただけていると思います。また、災害時には特に女性たちが弱い立場に置かれがちであることから、日本医師会の支援業務計画においても男女共同参画の視点を盛り込んでいます。
次の災害に備えて関係者の連携を強化
長野 これからの災害医療に対する日本医師会のビジョンをお聞かせください。
中川 地域包括ケアシステムという言葉をご存じでしょうか。高齢者などケアを必要とする方が、住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう、医療や介護などに関わる人たちが連携しながら支えていく体制のことです。日本医師会では、かかりつけ医こそがこのシステムの中心的役割を担うべきだと考えています。災害医療においても有用な、こうした多職種間のネットワークを、平時から築いておくことが大切であると考えています。
長野 現在は新型コロナウイルスの感染が広がっていますが、昨年以降の災害でも避難所で感染が広がったという話はないですね。
横田 東日本大震災の教訓として、避難所のプライベートスペースの確保や、トイレなどの衛生環境の整備がより重視されるようになっていますので、それが感染予防にも役立っている面はあると思います。
石井 多くの地域で、コロナの感染対策に災害医療コーディネーターが関わっていることも大きいでしょうね。コロナ対策の当事者でもある人たちが、災害医療にも関わっているということですから。
中川 疲労やストレス、健康状態の悪化は免疫力の低下にもつながるので、日頃からセルフチェックに努め、気になることは早めにかかりつけ医に相談して欲しいと思います。有事の際にも健康でいるためには、やはり普段から健康であることが大切です。
長野 最後に、この教訓を風化させず生かすために大切なことは何か、メッセージをお願いします。
中川 今後も必ず起こるはずの災害に対しては、平時からの備えが大切であることは、石井先生、横田先生もお話しになった通りです。東日本大震災から得た最大の教訓は、「連携」の大切さでした。日本医師会はあのつらい記憶を決して忘れず、次の災害に備え連携を強化していきたいと思います。