2022年11月14日
企画制作:朝日新聞社メディアビジネス局
PR:バイエル薬品株式会社
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がんの原因となる遺伝子の変異に基づき、診断・治療を行うがんゲノム医療。標準治療が終了した後の治療選択肢を増やす可能性があり、注目されている。「がん遺伝子パネル検査の現状と課題」をテーマにしたプレスセミナーが、9月28日にオンラインで開催された。ゲノム医療で重要な役割を担う名古屋大学医学部附属病院の安藤雄一教授の講演と、がん遺伝子パネル検査を受けた患者やその家族の声をグラフィックレコーディングで可視化したワークショップの模様を紹介する。
【講師】
名古屋大学医学部附属病院 化学療法部
教授/ゲノム医療センター長
安藤 雄一先生
安藤教授は、まず、がん遺伝子パネル検査の特徴について説明。がんに関連する遺伝子を、一度に数十から数百種類調べ、抗がん剤の選択に役立てる検査で、2019年に保険適用された。このパネル検査を受けられるのは、手術や放射線療法、薬物療法を含む標準治療が終了した固形がんの患者(終了見込みの人を含む)や標準治療がない患者で、検査の後に薬物療法の適応となる可能性が高いと主治医が判断した場合となっている。
講演する安藤雄一先生
現在、保険診療として実施されているがん遺伝子パネル検査は3種類。うち2種類は腫瘍の組織検体が必要で、残りの1種類は血液で調べられるが腫瘍検体で調べる検査と比べて検出率が低いとされる。
がん遺伝子パネル検査は、どこの医療機関でも受けられるわけではない。全国にある12カ所のがんゲノム医療中核拠点病院、33カ所のがんゲノム医療拠点病院、188カ所のがんゲノム医療連携病院で検査ができる(22年5月1日時点)。
エキスパートパネルという専門家会議では、がん遺伝子パネル検査で見つかった遺伝子変異から使える薬を探す。医学的なエビデンスはあるか、その患者に適した治療かというように検討を行い、その結果が担当医に返ってくる。「エキスパートパネルを設置しているのは、中核拠点病院と拠点病院のみで、連携病院の場合は中核拠点病院などとつながり、そこのエキスパートパネルで検討してもらいます。検査結果が患者さんに分かるまで約2カ月かかります」と安藤教授は話す。
がん遺伝子パネル検査の件数についても話題を展開。保険診療で実施されている3種類のパネル検査の実施件数は全国で月1400件程度で今後も増加が予想されるとし、「当院では、私が所属する化学療法部や消化器外科など、がんに関わるすべての診療科からパネル検査を出しています」。ここで問題になるのは、標準治療の解釈が専門医によって分かれることだと指摘する。「標準治療の捉え方が異なると、より早い治療時期に『標準治療は終わりました』と判断する方がパネル検査の機会が広がり、パネル検査の実施件数も増えます。がんゲノム医療中核拠点病院の実績を、パネル検査の実施件数だけで評価すると、標準治療の判断の違いが実績を左右するという矛盾が生じます」。
では、がん遺伝子パネル検査で治療薬が見つかる割合はどれくらいなのだろうか。安藤教授によると、検査を行った患者の約50%に遺伝子変異が見つかり、約40%は遺伝子変異が見つかるが薬が見つからず、残りの約10%で検査結果に基づいた治療(治験・先進医療、患者申出療養)が提案される。
21年3月のデータによると、がん遺伝子パネル検査の結果、エキスパートパネルで提示された治療薬を投与した患者の割合は8.1%(第4回がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議)。22年7月発表の最新情報では7%(第4回がんゲノム医療中核拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ)になっている。
治療薬に到達した7%の内訳は半分以上が保険診療であるが、企業治験や患者申出療養など研究的な治療も有力な治療の選択肢になっている。「名古屋大病院でもがん遺伝子パネル検査後に提案された治療を行った割合は7.3%(19年6月~21年7月の症例)。何人かの患者さんに企業治験を提案しましたが、ほとんど登録できませんでした。遠方で通院できないという理由もありました。企業治験が治療の選択肢となっている現実を考えると、企業治験が首都圏に集中することによって、医療の均てん化がむしろ遠のいている印象があります」と、パネル検査の現状と課題にも言及した。
ワークショップファシリテーター
株式会社グラグリッド・和田あずみさん
がん遺伝子パネル検査体験者:
健斗くん、月形さん、蒼ちゃんパパ
名古屋大学医学部附属病院 化学療法部
教授/ゲノム医療センター長
安藤 雄一先生
がん遺伝子パネル検査を受けた患者やその家族の声を「グラフィックレコーディング」でわかりやすく可視化したワークショップも開催された。ファシリテーターの和田さんが、がんの診断時や治療を行っていた時の気持ちを聞くと、健斗くん(16年に肺がん)は「再発時に大きなショックを受け、20年には肺がんが進行した状態になり『次の薬が効かなければ、半年くらいしか生きられない』と言われ絶望感を感じました」と話した。月形さん(21年に胆管がん)は食欲不振がなぜ続くか分からず、がんと診断されショックはあったが、原因が分かり安堵したという。蒼ちゃんパパ(19年6月に生まれた息子が同年9月に横紋筋肉腫と診断)は「息子の右肩のコブががんと分かり、将来に悲観して夫婦で号泣。転移する前に右肩を切除するか、化学療法と放射線療法を行うかを選択する必要があり、当たり前の生活ができないのがつらかった」と当時を振り返った。
続いて、和田さんはがん遺伝子パネル検査に出会った経緯を質問。健斗くんは通院していた病院で一つずつの遺伝子を調べる検査を2種類したが陰性で、分子標的治療を受けられなかった。パネル検査のことは患者会で初めて知り、がん専門病院に転院して実施したという。月形さんは内科医から「治療の選択肢が増えるかもしれない」と勧められて検査を受けた。蒼ちゃんパパは、化学療法と放射線療法を行ったが効果はなく、息子の右肩切除を現実的に考えなければいけないかもしれないという時に、治療していた病院でゲノム外来が新設され「パネル検査を受けてみませんか」と言われて実施した。
「グラフィックレコーディング」で、がん患者の情報整理のほか、感情までも豊かに伝える
3人とも、がん遺伝子パネル検査の結果から治療薬が見つかった。この時の心境について、健斗くんは「新たな治療の選択肢が増え安心しました。より多くの人にこの検査を受けてもらいたい」と話した。月形さんは「薬が効かなくなった時に、他にも治療の選択肢があることがうれしかった」と振り返り、蒼ちゃんパパは「運よく良い結果が得られました。患者がパネル検査を選択できる社会になることを望みます」と語った。
3人のケースを視聴した安藤教授は「この方たちは非常に良かったと思います。ただ、がん遺伝子パネル検査を受けた全員に治療選択肢が増えるわけではないし、見つかった分子標的治療薬や新薬だけで治癒することは、私が知る限り残念ながらありません。薬に到達することがゴールではないので、患者さんも医療者も冷静に考える必要はあります。とはいえ、パネル検査が実施されるようになって患者さんの選択の幅は広がったわけですし、その点は喜ばしいと思います」と締めくくった。
最後に視聴者からは「検査結果が分かるまで、なぜ約2カ月かかるのか」といった質問があり、安藤教授は「検査に時間がかかるほか、エキスパートパネルの準備にも時間がかかります。最後の標準治療が始まった段階でがん遺伝子パネル検査を出している人は、治療しながら結果を待つことも多いです」と回答した。
CF No.PP-VIT-JP-0699-31-10