座談会・インタビュー記事

女性の更年期症状の悩みは「女性ヘルスケア専門医」に相談しよう
症状あっても受診していない女性が8割

女性の更年期について語る、第40回日本女性医学学会学術集会、寺内公一会長

すべての女性が心身ともに健やかにいきいきと輝き続けるためには、思春期から老年期に至るあらゆるライフステージで女性に起こり得る健康上の課題に関心を持ち、適切な治療や生活上のアドバイスを受けることが大切です。なかでも更年期を健康寿命のための「ゲートウェイ」と位置づけているのが、一般社団法人日本女性医学学会です。11月1~2日、東京都内で開催された学術集会の寺内公一会長(東京科学大学大学院教授)に、更年期を巡る女性の現状、治療法、「女性ヘルスケア専門医」などについて聞きました。

ライフステージに応じた「女性医学」で健康を維持する時代へ

女性特有の悩みに対応し、予防も重視

「女性医学」は、思春期から老年期に至るまで女性のあらゆるライフステージの健康上の課題に取り組む医学です。もともとは、「女性医学」の根本にある「産婦人科学」が、妊娠や出産といった「周産期」、子宮がんや卵巣がんなどの「婦人科腫瘍」、不妊治療の「生殖医療」の診療や研究をしてきました。

しかし、それだけでは女性のライフステージ特有の課題に十分に対応することができませんでした。そのため、1990年代から更年期を中心とした「女性医学」、さらに2010年代からは更年期以外のライフステージにも対象を拡大しました。

若い世代から、女性特有の健康上の課題や悩みに対応し、将来の健康にもつなげていく予防医学の視点を重視していることが大きな特徴の一つです。

加齢に伴うホルモンの変化

更年期の健康は老年期に大きく影響

人生100年時代といわれる今、日本人女性の平均寿命(24年)は87.13歳で世界一の長寿です(厚生労働省「令和6年簡易生命表」)。

一方、健康上の問題で日常生活に制限なく生活できる期間である健康寿命(22年)は75.45歳(厚生労働省「厚生科学研究」で算出)とそれほど長くなく、日本人女性の幸福度やQOL(生活の質)も決して高くないことが報告されています。

「女性医学」は、少子高齢社会において女性の健康寿命の延伸に貢献すべく、老年期の健康に大きな影響を与える更年期を「ゲートウェイ」として位置づけ、この時期に健康状態を今一度見直し、人生の後半戦に備えることを非常に重視しています。

女性ホルモンの変化が健康に影響を与えることへの理解

更年期症状で日常生活に支障がある女性は40代で33.9%、50代で27.2%

症状を自覚しても医療機関の受診に至らず

更年期は、女性がさまざまな不調に悩まされることが多い時期です。22年に厚生労働省が公表した「更年期症状・障害に関する意識調査」によると、更年期症状があり日常生活に影響があると回答した女性は、40代で33.9%、50代で27.2%でした。

一方、更年期症状を自覚し始めても「医療機関を受診していない」と回答した女性は、40代で81.7%、50代で78.9%に上っています。

更年期症状の自覚に関する意識調査

日常生活に支障がある更年期症状の患者は推定400万人

開発が進む治療薬

すべての女性に知っていただきたいのは、更年期症状や障害は治療できるということです。日常生活に支障があるレベルの更年期症状の患者は、全国に400万人いると推定されます。しかし、前出の厚労省の調査でも明らかなように、そのうち医療機関を受診しているのは20万~30万人しかいない可能性が高いと推察できます。大半の女性は、ひたすら我慢しているか、市販薬もしくはサプリメントなどでやり過ごしていることが考えられます。

治療の基本は、生活習慣の改善とセルフメディケーションから始まり、それでも改善しない場合には薬物療法が行われます。薬物療法には、ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬、向精神薬(抗うつ薬、抗不安薬)の3本柱があり、この治療の選択肢は20年来変わっていません。

治療薬の開発も進んでいます。この間、HRTで使用されるホルモン製剤については、副作用のリスクの低い薬剤が開発されるなどの進歩がみられます。

更年期障害の治療

更年期症状の治療に詳しい「女性ヘルスケア専門医」

つらい症状があるときは、まずは医療機関でご相談ください。当学会では更年期の治療に詳しい「女性ヘルスケア専門医」を育成・認定しており、現時点で1382人(2025年8月時点)います。当学会ホームページ(https://www.jmwh.jp/)では、各地の「女性ヘルスケア専門医」を検索できます。一人でつらい症状を抱え込まず、あなたの健康を見守る「かかりつけの婦人科医」をぜひ見つけてください。

HRTは分泌が減ってしまった女性ホルモンを人工的に補う治療法で、少量のエストロゲンを補充することで症状を緩和することができます。ただ、更年期症状がある女性のうち、婦人科を受診している女性の割合が少ないのは、HRTに対する誤解や抵抗感を持つ人がいるためです。

学会作成の一般向けのガイドブックで正しい治療法の理解を

私は、HRTに抵抗感がある患者さんにはまず1カ月間試してみることを推奨しています。短期間治療して、メリットを感じられたらHRTを継続することを検討されてはいかがでしょうか。合わないと思えばいつでもやめることができるのもHRTのメリットです。

当学会のホームページでは「ホルモン補充療法ガイドライン」に基づいて作成した一般向けのわかりやすい「HRTガイドブック」(https://www.jmwh.jp/n-hrt_book.html)を公開しています。

更年期に骨の状態を確認し、早期から予防に取り組もう

HRTには閉経以降の動脈硬化の進展や骨密度の低下を防ぐ効果も期待できます。閉経後に骨粗しょう症が進行し、老年期になってから大腿骨(だいたいこつ)を骨折し、手術をするよりも、更年期に骨の状態を確認し、早期から予防するほうが女性の幸福度やQOLを高めることにつながります。

経済損失額は約1兆9千億円

更年期症状は個人の課題とともに社会課題と考えよう

24年には経済産業省が「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」として更年期症状による経済損失額を試算しています。それによると損失額は約1兆9千億円としており、これは女性特有の症状・疾患の中で最も多い額でした。

更年期症状は、個人だけでなく社会課題となっています。

女性特有の健康課題による社会全体の経済損失

出典:経済産業省ヘルスケア産業課「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/jyosei_keizaisonshitsu.pdf)から引用、改変
寺内公一(てらうち・まさかず)
東京科学大学大学院医歯学総合研究科 茨城県地域産科婦人科学講座教授。1994年、東京医科歯科大学医学部卒業。医学博士。2024年10月より現職。更年期障害や骨粗しょう症の診療・研究に従事し、数々の賞を受けている。日本専門医機構認定産婦人科専門医・指導医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医・指導医。
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