すればするほど、
残らない。
何かを伝えようと
すればするほど、
人の心には
残らない。
すればするほど、
残らない。


第1回WBCに参加していた日本代表の中で、メジャーを経験していた野手はイチローだけだった。選手たちにとってメジャーリーガーはまだ憧れの存在だった頃。そんな意識で対戦相手の選手たちを見ていたら、アメリカやドミニカ共和国に勝てるはずがない。イチローは危機感を覚えていた。
「本番で戦うことが決まっていたアメリカ代表には、デレク・ジーターやアレックス・ロドリゲスなど、日本の選手たちがテレビでしか見たことがないであろうメジャーリーガーがゴロゴロいました。実際、アメリカ戦の試合前、ほとんどの選手はアメリカ代表のバッティング練習を一ファンとして見ていましたからね。とてもこれからコイツらと戦うんだという雰囲気じゃなかった」
だからこそ、メジャーでプレーするイチローは、アメリカ戦の第1打席にすべてを賭けた。その背中を、仲間たちが見てくれていると信じて──そして、イチローがアメリカのエース、ジェイク・ピービーから放った先頭打者ホームランは、日本代表の選手たちを確かに勇気づけた。イチローはのちにこう話していた。
「個人的にも大きかったし、あのホームランでみんなの中に行ける、という気持ちが生まれたとしたら、言葉では表現できないほど大きな一本でした。僕にはそれなりに背負っているものがありましたから……」
言葉で教えるのではなく、背中を見せる。
その背中から何かを学んでくれたとしたら、それが結果的に教えになる。イチローはよく、「何かを伝えようとすればするほど、人の心には残らない」と言っていた。だから伝えるための言葉を発するのではなく、何かをすることで結果的にそれがメッセージとして伝わる、というところにこだわってきた。とりわけ選手としては、見ていればわかる、という立ち居振る舞いを大切にしてきた。


























