闘いつづける力 ─今、君たちに伝えたいこと─
デューク大学脳神経外科教授 福島孝徳さん
生涯学び続けて 医療のために尽くす
父は「自分の道は自分で切り開きなさい」という非常に厳格な人でした。ただ、私は幼い頃から内科医である叔父にかわいがられて育ったので、小学校1〜2年の時には医者になろうと決めていました。あまり勉強はしなかったですね。それでも昔はいい学校に入れましたが、現在はかなり勉強しないと入れません。アメリカでも今は弁護士になるよりメディカルスクールに入る方が難しくなっています。
アメリカに行ったのは40歳を過ぎてからです。当時は日本の病院で年間1000人ほど手術していました。そして45歳のときに「世界へ出よう」と決心してアメリカに渡りました。最初に行ったのは、招待を受けていたUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)です。そこで実績を残していくと、隣の南カリフォルニア大学から倍の年俸でリクルートされた。アメリカでは若くても実績を残せば必ずリクルートされます。イチロー選手や松井秀喜選手もそうですよね。
1998年に東海岸の名門デューク大学の主任教授に「私は10年、あなたを観察していた。あなたは世界一、脳外科の手術がうまく成績も抜群なので、デューク大学に来て、うちの大学を高めてください」と誘いを受けたのです。全米で上位の大学が、日本人である私をそこまで評価してくれたことにとても感激しました。それから今まで20年間デューク大学で教授をしています。
学生時代はあまり勉強をしなかったですが、医師になってから50年、ほぼ毎日、朝から晩まで、土日も祝日も休まず医療のために尽くしています。「少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず」という言葉もあります。医療の技術は日進月歩で進化し、医師はそれについていかないといけません。そのためには生涯学び続けることが大切です。現在は、毎日手術するだけではなく、世界中で次世代の脳外科医育成にも心血を注いでいます。

日本の高校生たちは自主独立の精神を
学び続けるための七つの心得があります。まず「力戦奮闘」です。とにかく猛烈に勉強しなければトップにはなれません。勉強すれば必ず医学部にも入れるはずです。さらに「目的・進路」をしっかり持つこと。“ターゲットモチベーション”といいますが、自分の進路と人生の目標をつくらないといけません。
「根性」も必要です。仕事も人生も全てやる気と根性がないとできません。根性が一番重要なのです。それから「能力」を自己評価すること。数学や英語ができなければ医学部にはいけません。自分にどんな能力があるかを知ることも大切です。
そして「人格・品格」です。“Smile”“Sincerity”“Statement”“Service”の“医療の4S”というものがあります。笑顔で、親切、誠実で、説明をよくして、奉仕の精神を持っていなければ医師にはなれないのです。さらに「礼節・行儀・道徳心」もないといけません。最後は「体力・気力」です。医師は非常に忙しいので、体力がないと務まりません。医学部を目指している人は、ぜひこの七つを覚えておいてください。
それと日本の高校生は、もっと自分で進路を決めて、自分で勉強するような自主独立の精神を持ってほしいと思います。アメリカではカレッジに入ったらもう自主独立です。自分で銀行のローンを組んで親の世話にならずに勉強している学生がたくさんいます。
そして我が家もそうでしたが、両親は子どもをあまり縛らない方がいいと思います。自分の道は自分で決めさせる。それを母親が優しくサポートする。父親はあまり口を出さずに、仕事と人間としての人格を自然に見せてあげるといいと思います。

ふくしま・たかのり/1968年に東京大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院脳神経外科臨床・研究医員に。ベルリン自由大学、米国メイヨー・クリニックを経て、78年から東京大学医学部附属病院脳神経外科助手、80年から三井記念病院脳神経外科部長を務め、頭蓋底の鍵穴手術法を確立。98年、カロライナ頭蓋底手術センター所長およびデューク大学脳神経外科教授に。現在、カロライナ脳神経研究所、デューク大学教授とヨーロッパ10カ国で客員教授を務め、生涯27,000例を超える手術を行い、今なお手術中心の生活を続けている。






