朝日新聞社
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#地産地消
#耕作放棄地
#企業×行政

古代小麦のパン、
召し上がれ
耕作放棄地がよみがえる

2024.10.18

神戸市は、里山と都市が近接している特徴を生かし、地産地消の取り組みを行っています。その一環として、私たち武庫川女子大学の学生8人はこの春から、耕作放棄地を再生して栽培した古代小麦でパンを作り、みなさんに届ける取り組みに、プロモーション担当として参加しています。

現在、日本では高齢化などで農業者が減り、耕作放棄地が増えています。また、食料自給率の低迷といった課題もあります。これらの課題を知ってもらいながら、「パンの街」として有名な神戸市で古代小麦のパンのブランド化を目指し、循環型フードチェーンづくりを盛り上げていきたいと思います!

古代小麦のパンのお披露目イベントが開かれた弓削牧場=神戸市北区
古代小麦のパンのお披露目イベントが開かれた弓削牧場=神戸市北区

弓削牧場の朝 ドキドキ準備

9月1日午前9時半ごろ、私たちは神戸市北区の弓削牧場のレストランにいました。

古代小麦を使ったパンのお披露目イベントにスタッフとして参加するためです。

お客様は来てくれるのか、提供はうまくいくのか——。開店前、ドキドキしながら準備しました。

パンを袋詰めして、スタッフの役割や動き方を確認。店の前には、もう行列ができています。

カットしたパンを、一つひとつ丁寧に袋詰めしました
カットしたパンを、一つひとつ丁寧に袋詰めしました

学生考案のプレート 売り切れ

午前11時に開店。多くの方が、パンにチーズ2種をのせた「スペシャルプレート」を注文してくださいました。弓削牧場さんからアドバイスをいただきながら考えたメニューです。

お客様へプロジェクトについて説明するのは緊張しましたが、熱心に聞いてくださり「おいしかったよ」と声をかけてもらいました。

午後3時には、パンを全て配り切ることができました。用意したパンは135セット。とてもうれしかったです。

スペシャルプレート(右)と売店で配布したパン(左)
スペシャルプレート(右)と売店で配布したパン(左)

「素朴でおいしい」
「地産地消もっと」

古代小麦のパンは、売店でも配りました。

「耕作放棄地だった場所から、こんなパンができるの?」

「食べごたえがあり、かめばかむほど甘くておいしい」

お客様から、うれしい言葉をいただきました。いつか、この古代小麦のパンがブランド化され、多くの人に愛されるものになればいいなと思います。

この春から参加 
軽いきっかけから

たくさんの人に味わってもらえた古代小麦のパン。

このプロジェクトに、私たちが参加し始めたのは今年4月。SDGsに興味がある、パンが好き、マーケティングや新商品開発に興味がある、といった軽いきっかけからです。

ここからは、春からの活動を振り返ります。

5月に訪れた小麦畑=神戸市北区
5月に訪れた小麦畑=神戸市北区

耕作放棄地だった畑 
鳥のさえずり

5月17日、私たちは神戸市北区にある、耕作放棄地を再生した畑を見に行きました。

神戸電鉄・箕谷駅からバスに乗り継ぎ、降りたバス停から15分ほど歩くと、1カ所目の畑があります。鳥のさえずりがよく聞こえる、静かなところ。小麦は緑色で、ひざくらいの高さに育っていました。さらに歩くと、2カ所目の畑。そこの小麦は、腰くらいにまで育っていました。

古代小麦は、一般的な小麦よりも生命力が強く、化学肥料や農薬をあまり使わずに育てやすいとされています。それでも、去年まで「草ぼうぼう」だった場所で、こんなにも育っているんだと驚きました。

パンの製造体験=神戸市中央区
パンの製造体験=神戸市中央区

パン作り 愛情と苦労を知る

パンの店舗に併設された厨房も見学に行きました。

5月29日、三宮駅から徒歩1分のケルン三宮店。建物に入った瞬間から、いい香りが漂ってきます。

ケルンは1946(昭和21)年に創業した老舗ベーカリー。フードロス削減や社会的弱者の支援などに取り組んでいます。

この店舗では、パンの成形から焼くところまでを体験。パン一つひとつに対する、職人さんのこだわりや愛情、苦労を知りました。

お披露目イベントで配布した古代小麦のパンもケルンで焼かれました。

ケルンの代表取締役、壷井豪さんは「(パンが作られる)背景を考えることが大切で、それによってフードロスも減っていくのではないか」と話していました。

弓削牧場の牛。バイオガス生成に一役買っています
弓削牧場の牛。バイオガス生成に一役買っています

牛の糞尿 バイオガスに

6月21日は、弓削牧場の見学です。

弓削牧場では、牛の糞尿(ふんにょう)からバイオガスを生成。牧場内でエネルギーとして活用し、循環する仕組みを築いています。今回のプロジェクトでもそこから生まれたバイオガス液肥を古代小麦の肥料として活用しています。また、ハーブを栽培したりチーズを開発したりもしています。チーズは何種類もあって、ご飯や冷ややっこにのせるなど様々な食べ方を研究されていると聞きました。

牧場長の弓削忠生さんが「食卓での会話が少しでも増えたらいいな」とおっしゃっていました。

たわわに実った小麦の収穫
たわわに実った小麦の収穫

炎天下の収穫 生産者に感謝

7月7日、いよいよ小麦の収穫です。

小麦は緑から茶色に変化し、腰までの高さだったものが頭を越えるくらいにまで成長していました。鎌を使って上手に刈れるようになるまでに時間がかかり、大変でした。

晴天で暑かったのですが、自動販売機が近くになく、のどが渇いてもすぐに飲み物を飲めませんでした。最寄りのコンビニまで歩いて15分。この畑に通い、小麦を育ててくださっている方々に、心から感謝しました。

試作品を作って提供方法を考えました
試作品を作って提供方法を考えました

消費者にどう届ける? 
マーケティングも

古代小麦のパンを、どう消費者に届けるかも話し合いました。

SNS班、チラシ班、提供方法検討班の3グループに分かれて活動。ケルンさんや弓削牧場さんと話し合いを重ね、何度も案を練り直しました。

プロジェクトの最初の活動から半年。軽い気持ちで参加しましたが、気づくと、神戸市内で循環型の仕組みをつくることの意義を、真剣に考えるようになっていました。

トークセッションで話す(左から)弓削牧場の弓削忠生さん、ケルンの壷井豪さん、神戸市の長井伸晃さん
トークセッションで話す(左から)弓削牧場の弓削忠生さん、ケルンの壷井豪さん、神戸市の長井伸晃さん

神戸をよりよい街に 
だからこそ

パンのお披露目イベントでは、神戸市、ケルン、弓削牧場のみなさんによるトークセッションも開かれました。この中で、心に残った言葉を記したいと思います。

弓削さんは「神戸市はパンの消費量が日本一。でも、そのパンの粉がどこで作られているか、みなさん考えたことはないのでは?」とおっしゃっていました。確かに、私たちは普段食べているモノの原料がどこで作られているのか、考えないことが多いです。今回のプロジェクトで、地産地消の大切さを知ることができました。

ケルンの壷井さんは「小麦粉を触っているときに、たくさんの人の努力と思いと時間が詰まっていることを感じて、泣きそうになった」と言いました。私たちも、たくさんの方々の力を借りて今回の活動が成り立っているのだと、改めて知りました。

神戸市企画調整局SDGs推進課課長(プロジェクト推進担当)の長井伸晃さんは「苦難を乗り越えて、元気な小麦ができた。もっと大きなプロジェクトにしていきたい」と語りました。このプロジェクトは1回限りで終わるものではなく、これから先も続けていくことが大切なのだと感じました。

地産地消 輪を広げる第一歩

今回私たちが担当したのは、このプロジェクトの第1期として初めて古代小麦を栽培し、初めて製造したパンをお披露目する部分でした。

この秋、第2期となる古代小麦の種まきが行われます。地域で耕作する人を増やしたり、コーヒーかすを使った土の改良などを通じてプロジェクトに関わる企業もさらに増やしたりして、地産地消のフードチェーンの定着を目指していくそうです。

私たちも、将来神戸の古代小麦が有名になって、第1期の栽培に関わったことを自慢できる日が来ることを楽しみに、このプロジェクトを応援していきたいと思います。

みんなで集合写真
みんなで集合写真

このプロジェクトは株式会社アイ工務店からのご寄附(企業版ふるさと納税)を活用して運営しています。

飯塚 彩加

レストランで子ども連れのご夫婦が「地産地消の取り組みを、暮らしやすさや子育てのしやすさとともに、次の世代に引き継いでいきたい」と話していました。神戸の街は、こうした思いの積み重ねで形作られています。未来につながる取り組みに参加できて、うれしく思います。

東良 若菜

「耕作放棄地から立派な小麦ができるか半信半疑だった」。プロジェクトに関わった多くの方がおっしゃっていた言葉です。私たち自身も、お客様のもとに古代小麦のパンを届けられるか不安でした。だからこそ、思いがつながり一つのモノができる喜びを知ることができました。