
神戸の未来へ
「民間の力を」
東京でガバメントピッチ
2024.12.25
秋風が吹く10月31日、東京ミッドタウン八重洲(東京都中央区)で神戸市が「ガバメントピッチ」を開催しました。産官学連携について考えた様子を、私たち神戸大学の竹内悠人、中野拓実、北野まどかがリポートします!
ガバメントピッチ 自治体が地域の課題やニーズを企業などに向けて投げかけ、解決策の提案を募り、共創の取り組みを進めるためのイベント。
東京で開催、
市長が語るSDGs戦略
東京での開催には、神戸の取り組みを広く発信する狙いがあります。
イベントの冒頭、久元喜造・神戸市長が語ったのが、自然との共生による成長戦略。神戸市は、海や山、里山と都市部を循環させるような取り組みを進めています。
久元市長は「企業・市民との協働の中で、行政がファシリテーターになることが求められる」と語り、実際、パネルディスカッションでは久元市長自らが進行役を務めました。
五つのプロジェクト
夢が膨らむ
ピッチでは、五つの取り組みが紹介されました。私たちも、神戸大学起業部「SkinNotes」として発表しました。
(カッコ内はプレゼンター。竹内以外は神戸市企画調整局SDGs推進課の方々です)
■耕作放棄地の再生と新たなフードチェーン構築(金田弘義さん)
神戸市は、耕作放棄地を再生し、古代小麦を栽培する取り組みを進めています。古代小麦は栽培しやすく、アレルギーが出にくい可能性があると言われています。この小麦を使って、市内の老舗ベーカリー「ケルン」がパンを作っています。
なんと、神戸市職員の方々も農作業に参加しているそうです。役所に入って草むしりや農業を行うなんて夢にも思わなかっただろうな(笑)。
古代小麦のパンを会場でいただきましたが、香ばしくておいしかったです。ワクワクが伝わるピッチでした!
■里山“DIY”拠点をつくるプロジェクト(岡田晃幸さん)
神戸市郊外にある駅近の里山に、子どもたちが里山に親しむ拠点をつくるプロジェクト。里山は地元の人々が草を刈り、木を切るなどして維持してきました。そのDIY(自分でやってみる)精神を受け継ごうと、まずは活動拠点となる小屋をつくります。循環型の給水システムやトイレを備え、木材チップで道をつくることも構想。木登りなど全身を使って遊べる場をつくることも目指しているそうです。
スライドには、神戸市内のイラストレーター・西山優音さんによる、かわいいイラスト。DIY精神にあふれたプレゼンでした。
■震災30年シタマチ活性化プロジェクト(長井伸晃さん)
神戸市の「シタマチ」長田区は、1995年の阪神・淡路大震災で大きな被害に遭ったエリア。長井さんは「復興」から「創造」へとシフトしていくべきだ、と語ります。
高齢者も障害者も子どもも「みんなが先生、みんなが生徒」――。シタマチの特長を最大限生かした街ぐるみの次世代育成を提案し、商店街の空き店舗や空き家の活用も考えています。2025年5月には、街の未来を考えるイベントを予定しているそうです! みなさん、ぜひ長田区へ行きましょう。
■海洋貢献都市神戸が挑む 海の未来づくり(宮川美咲さん)
海は神戸市の大切な資源ですが、課題もあります。それらを産官学で解決していく構想です。
例えば、神戸の海エリアを代表する須磨は、神戸の中心部から電車で20分。美しい海岸が広がり、多様な生物が生息する豊かな生態系があります。
こうした神戸の海を拠点に、新たな技術による藻場の創出、海洋プラスチックの削減、海洋エネルギーの活用、海中の希少金属の回収などの実証が検討されています。さらにプロジェクトを展開して、瀬戸内海をサステイナブル技術の先進地にしていく――。夢が膨らみます。
■アトピー性皮膚炎の小学生向け かゆみを抑える緑茶染めインナーシャツ開発事業(竹内悠人・神戸大学起業部「SkinNotes」)
アトピー性皮膚炎患者である、私たち3人の体験から始まったプロジェクト。
アトピー性皮膚炎の患者は10人に9人がかゆみに悩んでいるというアンケート結果から、かゆみの原因である黄色ブドウ球菌を緑茶染めインナーシャツで減らせないか、と考えました。プロトタイプを着用したところ、かゆみが軽減。しかし、臨床研究には膨大なお金や時間がかかります。そこで、クラウドファンディングを実施し、需要調査をしたいと考えています。
「アトピー性皮膚炎患者さんが明るく前向きに生きられる社会へ!」。私たちの願いに、たくさんの応援、共感の声をいただきました。
新たなチャレンジ
多様な人材から
続いて「さらに企業フレンドリーな神戸市に向けて」をテーマにディスカッションが行われました。パネリストとして老舗ベーカリー「ケルン」のCEO壷井豪さん、株式会社キャントウェイト代表取締役の平松葉月さんのほか、神戸市職員の鈴木智さんと薮崎ひかるさんが参加し、久元市長がモデレーターを務めました。
鈴木さんは元電機メーカーの営業職で、現在は神戸市の企業連携専門の職員。SDGsユニットと連携して「従来の枠組みにとらわれない手法や仕組みを、企業のみなさんと一緒に考えていきたい」と語りました。
薮崎さんも今年6月にIT企業から転職したばかり。「神戸市はDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に進めていて、市役所のイメージが変わりました」
民間から多様な人材を採用していることについて、久元市長は「新しいチャレンジをしていく上で、従来とは異なる発想ができる職員が必要」と説明します。
大きなシナジー
共感がパワーに
壷井さんは、神戸市の長井さんと出会ったことをきっかけに古代小麦プロジェクトに参画。久元市長の「点と点をつなげて線にする。次は線を円につなげる」という言葉の通り「大きなシナジーを生んだ」と実感しているそうです。
平松さんは「個人であっても組織であっても、課題に共感できることがパワーになります。いろいろなプレーヤーが集まって活動する場がつくれるといいなと思います」と、今後に思いをはせました。

約50の企業・団体が参加
共創に前向き
今回のガバメントピッチには約50の企業・団体が参加しました。
教育分野のスタートアップ、ライフイズテック株式会社の坪井祥太さんは「行政と民間が協力すれば、広くサービスを届けられる。それが官民連携のメリット」。「共創ITカンパニー」の実現を掲げるSCSK株式会社の遠藤敦子さんは「企業版ふるさと納税のほか、より中長期的に関われるような施策があればうれしい」と話し、共創に前向きでした。


竹内 悠人
行政と連携する際、相談先などが分かりにくいというのは、スタートアップや大学でも同じだと感じました。SkinNotesとしても、様々な企業の方と交流しながら、具体的な協力の提案をしていきたいです。
北野 まどか
「企業と自治体は、目指すゴールは一緒だけれど、達成していくプロセスが違う」という言葉が印象的でした。企業と自治体が手を取り合い、「社会課題解決」というゴールに向かっていければいいなと思いました。
中野 拓実
「点と点を線に、線と線を円に」という言葉に感銘を受けました。神戸市の先進的な官民連携が多様な課題に対して解決策を生み出していて、循環型地域社会の実現に向けた大きな一歩だと感じました。