朝日新聞社
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放置竹林の問題に取り組む
「かぐやプロジェクト」
民間団体・企業が協力

2025.12.16

現在、西日本を中心に「放置竹林」が問題となっていることを知っていますか? 適切な維持管理が行われていない放置竹林は、地域にさまざまな悪影響を与えるため、神戸市では民間団体・企業と協働して、その課題に取り組んでいます。神戸大学サステナブル都市研究会Sea.vicがリポートします。

神戸市が抱える、放置竹林の課題

これまでわが国の竹林は、タケノコの生産や竹材など、持続可能な形で活用されてきました。しかし現在、ライフスタイルの変化や海外からの安価な竹材・タケノコの輸入によって、適切な維持管理が行われていない「放置竹林」が増加し、地域にさまざまな悪影響を与えています。

竹は繁殖スピードが速いのが特徴です。竹の過度な増殖により荒廃状態になれば、生態系へ悪影響を与えます。また、電線・道路・鉄道などに倒れて被害を与えたり、地滑りや土砂災害などの災害につながったりすることもあります。

神戸市にも放置竹林が存在し、現在、複数の団体により対策が進められています。淡河地区では有志によって市内の竹を使ったメンマを開発。ある学生団体は竹ペレットを食器に加工する取り組みを進めています。神戸市としても、CSR活動や社内研修・子ども教育活動を兼ねて竹林整備体験会を実施したり、竹林整備を行う地域団体に対して補助金を交付したりしています。そして今回、官民連携で実施したのが「かぐやプロジェクト」です。この一連のプロジェクトを取材しました。

NPO法人による、竹林の伐採作業

春の忙しさが落ち着いた4月の終わりに、神戸電鉄有馬線に初めて乗って、竹の伐採地の見学に行きました。すでに伐採した部分は広い草むらになり、枯れた竹は黄色くなっていました。小川の反対側にはまだうっそうと竹が茂り、中は真っ暗。倒れている竹もあり、暗い印象を受けました。

うっそうとした放置竹林
うっそうとした放置竹林

高齢者・障がい者向けの福祉事業を提供する「認定NPO法人ぱれっと」の皆さんが、粉砕した竹を運んでいきます。まだ春だというのに、熱中症対策のためファンのついた作業着を着て、竹をいっぱいに詰めた袋を坂の上まで運ぶのを見ると、私まで汗が出てきました。

作業に込める思いについて、同団体の田中敬悟副理事長は「メンバーの小さな変化や成長を感じるのが嬉しい」と言います。対人コミュニケーションが苦手なメンバーが少なくない中、協力して作業し、目に見えて竹林がきれいになったのを皆で喜ぶ――。障がい者として「支えられる存在」として見られがちなメンバーが、実は神戸の町を支えていることを教えてくれました。この事実を私たちが認識しておくことが大切なのかな、という気持ちになりました。

伐採した竹を粉砕し、発酵させている。中は少し暖かい
伐採した竹を粉砕し、発酵させている。中は少し暖かい
粉砕した竹を袋に詰める「認定NPO法人ぱれっと」の皆さん
粉砕した竹を袋に詰める「認定NPO法人ぱれっと」の皆さん

竹を利用した、舗装材を開発

伐採されチップ化した竹は、資源として有効活用されます。

建設関連会社である日本乾溜工業株式会社は、竹チップや真砂土などを混ぜた舗装材「かぐやロード」を開発しています。同社が神戸の竹を使って舗装材を製造し、それを「企業版ふるさと納税」として神戸市に寄附、そしてその舗装材を神戸の施設で使用するという“地産地消”の試みが、今回の「かぐやプロジェクト」です。

同社が拠点を置く九州地方でも、放置竹林の増加は問題となっていました。中原悠貴・かぐやロード推進室長は「社員が学術機関に赴いたり、特許を取りに行ったり、10年以上の時間をかけて研究し、商品化へとつなげました」と言います。それを聞いて、「私も何かできることをしたい!」という気持ちになりました。

日本乾溜工業㈱へ開発経緯や苦労話などをインタビュー
日本乾溜工業㈱へ開発経緯や苦労話などをインタビュー

ちなみに、「かぐやロード」は自然素材のみを使用しているため、安全性が高く、動物園などにも安心して利用できるのだとか。また、竹を使うことで雑草抑制に効果があるそうです!

「かぐやロード」のお披露目イベント

今から約270年前に建てられた茅葺き民家「内田家住宅」(神戸市北区)は、兵庫県重要有形文化財に指定され、神戸市が管理しています。このたび、この庭に「かぐやロード」が舗装され、例年開催されているお月見会に併せて、地域住民の方にお披露目されました。

当日は、多くの小学生を含む家族連れが参加。竹チップを使った体験会では、子どもたちが舗装の材料に実際に触れて遊ぶ様子が見られ、安全性の高い素材であることを住民に実感してもらう良い機会となりました。

「かぐやロード」で舗装された内田家住宅の庭
「かぐやロード」で舗装された内田家住宅の庭
「かぐやロード」のサンプルなどを展示
「かぐやロード」のサンプルなどを展示
竹チップを利用した、紙漉きワークショップも行われた
竹チップを利用した、紙漉きワークショップも行われた

今回のイベントの中心人物で、北区鈴蘭台を中心に活動するアート団体「神戸でみんなでアートしよう!!」代表の久木田啓さんはイベントを振り返り、このように話します。

「放置竹林の問題をどう伝えていくか。今日は子どもたちと一緒に竹チップを使った紙漉きワークショップを行いましたが、面白い体験は記憶に残るものなんですよね。ぐーっと押して水をとって、紙ができる。これ面白いな、竹チップが入った紙を作るのが面白かったな、って。直接的にこれが大事、あれが大事と伝えるのではなく、『体験』を渡すことができたら、きっと心の中に宿り続けるのではないかと思っています」

久木田さんに話を聞くSea.vicのメンバー
久木田さんに話を聞くSea.vicのメンバー

日本乾溜工業の担当者の方からの説明によると、竹チップ舗装は、施工の容易さや自然な色合い・質感が評価され、公園や学校など人が歩く空間で採用されることが増えているそうです。また、アスファルトに比べて路面温度が上昇しにくいという特徴もあるとのことでした。「かぐやロード」は江戸中期に建てられた内田家住宅の雰囲気にもよくなじんでいて、来場者からも好評でした。

女性活躍に関する取り組みも

日本乾溜工業は、女性が活躍できる環境の実現を通じて、誰もがいきいきと働ける職場づくりに力を入れています。神戸市では、子育てや女性のキャリア支援を実施し、共働きでも子育てしやすいまちづくりに力を入れています。そこで、日本乾溜工業の「女性活躍推進プロジェクト」女性社員が神戸市を訪問し、神戸市の子育て支援制度や、働きたい女性を応援する女性活躍推進の取り組みについて、意見交換を行いました。

神戸市の施策に関する説明を受けている様子
神戸市の施策に関する説明を受けている様子

両者が目指すのは、誰もがいきいきとワーク&ライフを実現できる環境です。神戸市の担当者は「双方の職場での取り組みを話す中で、生理休暇などは制度があっても利用しにくいなどの共通の課題も話題になり、各種制度を周知・普及させる大切さを改めて実感しました」と話します。女性に限らず、誰もがいきいきと働ける環境の実現に向けた課題は何かを考える有意義な時間になりました。

北村真弥

北村 真弥

今回の企画を通して、竹をテーマにたくさんの人と長期的に関わることの可能性と難しさを同時に感じました。日々の生活にちょっとプラスして、地域のことを考える時間を持ち、自分が行動することをどのように持続可能にしていくのか、これからも考えていきたいなと思います。

H.Y.

H.Y.

放置竹林問題において、竹チップ舗装のように小規模の実践を積み重ねる姿勢は重要だと感じました。そして今回の事例は竹資源の有効活用だけでなく、地域課題に対する住民の関心醸成、コミュニティ形成も促す好例だといえます。

岡島智宏

岡島 智宏

地面に根を張り続けた自然資源である竹が、舗装という形で再び地面に還るという素敵な物語の中に、竹林管理の課題、舗装というインフラ維持の課題という人間社会の課題を解決する仕組みが入っていることに、ただただ「すごいアイデア!」と唸ってしまいます!